25.再会
本日2話目の投稿です。この前に「幕間 王の庶子」があります。ご注意ください。
――〈古代人の遺物〉。
この世界には、遠い昔に滅んだ国の錬金術師たちが生み出したとされる数々の稀少品や人造生物が数多く存在する。
石の巨人の頭上に作られたこの庭園も、間違いなくその一つだ。
(問題は、このゴーレムがいつ眠りについて、転移門から安全に出られるのかってことだけど……)
〈線〉のスキルで、城壁の上にぐるりと円を描く。
その中央に小さな同心円。
小さい円は遊歩道に囲まれた転移門だ。
外側の円を時計に見立て、十二時の方角に飛竜の岩棚があるとすると、水盤は二時、ツリーハウスと自販機は大体三時の場所にあった。
「四時から八時のエリアにポリーやピアラの木があって、と。……ん?」
自分が描いたおおまかな地図と庭園を見比べていた私は、果樹の木立の真ん中に、崩れかけた石造りの四阿があるのに気がついた。かろうじて残った石組の間に、細い木の棒が何本も差し渡され、艶々と輝く大粒の葡萄がたわわに実っている。
「碧玉葡萄だ!」
前世のシャインマスカットによく似た、だがそれよりずっと大粒の甘くて美味しい葡萄である。
――「僕」が、アリッサのために作った葡萄棚。
あそこなら、消えた「僕」に繋がる手がかりが何か掴めるかもしれない。
断じて、碧玉葡萄のお口になったからではない。ないったらない。
描きかけの地図はそのままに、私は城壁を下りると、いそいそと葡萄棚のある方に向かった。
◆◆◆
目当ての場所に近づくにつれ、あたりには芳醇な甘い香りがふんわりと漂い始めた。
と同時に――。
『〈防衛線〉が発動します』
「っ!」
「ギャッ!」
頭上から襲ってきた灰白色の子ザル――ウィングエイプが、空中に忽然と現れた紅い線に両断されて落下する。
見れば、差し交す果樹の枝のあちこちに、灰白色の子ザルの姿があった。
落ち着きなく枝から枝へと飛び移ったり、さかんに身体を揺すったり、かと思えば私に向かって威嚇するように歯を剥き出したりしている。
が、仲間が殺されたのを目の当たりにしたせいか、それ以上襲ってくることはなく、樹上で遠巻きにしている感じだ。
――どうする?
進むか、それとも退くか。
葡萄棚はすぐそこだ。
ここからでも、ぷりっぷりに実った美味しそうな碧色の房が、誘うように輝いているのが見える。
ジャリッ。
用心深く一歩踏み出すと、子ザルの群れは一斉に尻込みするように後退した。
一歩。また一歩。
私が一足進むごとに、子ザルたちは後ろへ後ろへと下がっていく。
葡萄棚に着くころには、彼らの姿は果樹の葉陰に消えていた。
後には、棚が重みで撓むほどぎっしり実った葡萄たち。
たわわになった房から一粒もいで口に入れれば、爽やかな香りとともに、甘い果汁が口中を満たす。
「んんんんんーっ!……最っっっ高!」
「えるるるーっ! えるっえるっ!」
……ん?
今、やけに聞き覚えのある声がしたような。
見れば、私の足許で、頭に金色のトサカみたいな毛を生やした黒褐色の子ザルが、大きな葡萄の房を両手いっぱいに抱え込み、もっしゃもっしゃと口を動かしていた。




