幕間 ペルゾイス
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時は少し遡り、ジゼルが飛び去る数刻前。
黒豹の頭部に鶏の体、二本の蛇の尾を持つ巨大な合成獣が、地響きを立てて倒れ伏した。
「レッサーコカトリスを倒したぞ!」
「信じられん。ランクCのモンスターを単独で倒してしまうとは」
騎士たちの間から、賞賛と驚きの声が上がる。
思わず緩みそうになる口許を引き締め、彼は部下たちに声をかけた。
「すぐに転移門が開く。六層の祠に出次第、対象人物またはその死体を確保。朝を待ってカーマイン領に帰投する」
「はっ」
「はっ」
やがて階層主の部屋の両端に転移門が二つ出現する。
一方はダンジョン入口に直通するショートカット。
もう一方は第六層の入口だ。
彼は自らの隊の先頭に立ち、次階層に続く転移門を無造作に潜り抜けた。
◆◆◆
簡単な任務のはずだった。
元伯爵令嬢を誘拐した冒険者くずれのパーティを追跡して討伐し、その最中、不運にもシャドウパンサーに喰い殺された令嬢の一部を持ち帰る。
だが、どういうわけか、雇われのごろつきとシャドウパンサーの死体だけが見つかり、令嬢は忽然と姿を消した。
(まさか下層に逃げ込むとは)
彼はひそかに歯噛みする。
てっきりダンジョンを脱出したものと思い込み、領内の捜索に一週間もかけてしまった。
(だが、まぁいい)
所詮は十歳になったばかりの小娘だ。
下層階に逃げたところで、転移門の結界から出ることもできず、途方に暮れているに違いない。
食べ物も水もなく、着けていたアクセサリーの類も、ごろつきどもに奪われていた。
一週間が経った今、おそらく餓死しているだろうが、たとえまだ息があったとしても――……。
「ペルゾイス様!」
祠に出るやいなや、散開した部下たちの一人が声を上げた。
「ご覧ください」
そこには、明らかに人の手で寄せ集められた苔の堆積があった。
そばの石畳には、文字とも記号ともつかないものが、赤い線で描かれている。
正 T
「娘は」
「結界内には見当たりません」
彼――ペルゾイスは軽く舌打ちした。
(結界を出たか)
おそらくは、水と食料を求めて。
(愚かな)
だが、声に出してはこう言うに留めた。
「仕方ない。今夜はここで野営し、朝を待って痕跡を追う」
予定より一日延びてしまったが、問題ない。
明日には、そう遠くないあたりで、娘の死体が見つかるだろう。
ペルゾイスにとって、これは依然として容易い任務だ。
そのはずだった。
翌朝、娘の足跡を辿り、この階層ではついぞ出たことのないB級モンスター――女王相のウォーアントに出くわすまでは。
感謝の気持ちを込めて、本日もお昼ごろにもう一話投稿いたします。




