13.区切り
本日、2話投稿しています。この話の前に「12.進化個体」があるのでご注意ください。
〈区切り〉Lv.1 任意の範囲を区切る
これまで使ってきた線系のスキルと違い、これは明らかに範囲――すなわち面系のスキルだ。
これを使えば、頭上に屋根的なものを作れるかもしれない。
てか、作れなきゃ詰みだ。
酸のシャワーが止んだタイミングを狙って、さっと顔を上げる。
十字に張られた〈境界線〉越しに、腹を丸めて次の発射体勢に入った進化個体が見える。
私は防壁の上全体を囲う線をイメージした。
〈区切り〉!
一瞬、紅い線が防壁の縁をなぞるように浮き上がる。
そして――。
頭上の〈境界線〉が、断ち切られたようにかき消えた。
――え!?
直後、上空から酸が降り注ぐ。
慌ててスカートを被り直したけれど、手や頰に飛んだ水滴が、瞬く間に肌に真っ赤な火ぶくれを作った。
嘘嘘嘘。やばいやばいやばいやばい!!!!
ここへ来て唯一の防衛手段を消しちゃうなんて、〈区切り〉! アンタ何してくれてんの!
ひゅ、と風を切る音に、反射的に地面に身を投げる。
ドスッ。
すぐそばの地面に、音を立てて鎌が食い込んだ。
ぽっかりと空いた天井から、進化個体が飛び込んできたのだ。
「カ、〈紅線〉っ!」
闇雲に撃った熱線が、あさっての方向に飛んでいく。
その間に進化個体は鎌を抜き、再び上空に舞い上がった。
「〜〜〜〜っ!」
絶好のチャンスを逃してしまった。一瞬動きが止まった上に、至近距離だったのに!
上空の進化個体が腹を丸める。
また酸の雨を降らすつもりだ。
ふいに、ぞわりと怖気が立った。
もしも、酸と同時に鎌が来たら?
両腕を重ねて顔を庇い、その隙間から進化個体を仰ぎ見る。
当たりだった。
酸を噴射するやいなや、進化個体が突っ込んできたのだ。
『後天スキル〈虫の知らせ〉を獲得しました』
うん、悪い予感ほどよく当たるよね!
前腕を酸で灼かれながら、ごろごろと転がって斬撃を避ける。
また鎌が地面に刺さってくれれば、今度こそ〈紅線〉で仕留めてやろうと思ったのに、そこは敵も学習したらしい。
鎌は地面すれすれを擦過しただけで、進化個体は上空に戻っていった。
それでも、千切れた草が宙を舞い、地面に直線の跡がつく。
息つく間もなく、同じコンボが二度、三度と降りそそぎ、あたりの地面はあっという間にカッターでめちゃくちゃに切りつけたようになった。
顔を庇い続けたワンピースの前腕部分は酸でぼろぼろになり、露出した肌は真っ赤に爛れている。
何度めかに鎌を避けた時だった。
鎌の風圧で、不規則な形に切り取られた土の塊が舞い上がり、ころころと地面を転がった。
――切り取られて丸まった新聞記事が、ころころと転がって――
「!」
理解った。
〈区切り〉は面のスキルじゃない。線で囲って区切るスキルだ!
私は立ち上がり、ぼろぼろになった腕の隙間から上空の進化個体を睨みつけた。
勝ち筋は見えた。
「――いつまでも、やられっぱなしと思うなよ!」




