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第五話 新たな生存者

森を抜けた先に広がっていたのは、崩れた街だった。


高くそびえる建物。

ひび割れた道路。

転がったままの車両。


風が吹くたび、どこかで金属が軋む音が響く。


かつて多くの人で賑わっていたであろうストリート街は、今は閑散としていた。


「……人の気配、マジで全然ないね」


「だろうな」


ショッピットは周囲を見渡したまま答えた。


「こういう、人が多かった場所ほど、その分ゾンビがうじゃうじゃいる」


その言葉に、少しだけ背筋が伸びる。


「いいか、基本三つを守ればなんとかなる」


ショッピットが三本指を立てる。


「音を立てるな。死角に入るな。欲張るな」


「……覚えた」


「よし」


私たちはゆっくりと進み出した。


***


最初に入ったのは、低い建物だった。


入口のガラスは割れ、床には破片が散らばっている。


棚のようなものが並び、様々な物が落ちていた。


「……ここ、何か売ってた場所?」


「だろうな。食いもんとか日用品とか」


ショッピットは足元を確認しながら進む。


「何も踏むなよ。音が出る」


その言葉に従い、慎重に歩く。


視線を巡らせると、袋や容器が散乱している。


「……あ」


奥の棚の影に、まだ封が開いていないものがあった。


「これ……いけるかも」


拾い上げる。


中身は乾いた食料。

見た目は怪しいが、まだ食べられそうだ。


「当たりだな」


ショッピットが袋を覗き込む。

中には、ほんの少しの食料しか入っていなかった。


もっても2〜3日程度だろう。


「こういうのが俺たちの命綱になるんだ。慎重に探すぞ」


さらに奥へ進む。

ゾンビに急襲されないよう、索敵を怠らない。


「あっ」


食料が保管されていそうな倉庫を見つけた。

ゾンビの気配はない。おそらく大丈夫だろう。


そう思って足を早めた、そのとき——


足に妙な感触が伝わる。


視線を落とすと、人の頭蓋骨だった。


踏んだ衝撃で音が鳴りそうになり、慌てて押さえる。


「……危な」


「だから言ったろ」


「ハハ……」


思わず苦笑する。

だが、人の頭蓋骨があるという事実に、不安がよぎる。


そのとき——


「……止まれ」


ショッピットの声が低くなる。


動きを止める。


耳を澄ます。


——カツ……カツ……


遠くで、何かがぶつかる音。


「……いるな」


「……うん」


「ちっ、ここを漁れないのは痛いが……仕方ねぇな」


私たちは音を立てず、建物の外へ出た。


***


その後も、いくつかの建物を回った。


・ゲットしたもの一覧

缶詰め20個。

古いナイフ。

埃を被った防寒具。

靴。


かなり時間をかけたが、成果はあまり多くなかった。

それでもショッピット曰く、これは上出来らしい。


途中で数匹のゾンビと戦闘になったが、すべてナイフで制圧した。


銃が使えればもっと楽なのに——


「銃はぜーったい使うなよ」


「……分かってる」


心を読まれたかのように、ショッピットが釘を刺してくる。


物色も終盤。最後の建物から出ようとした——


そのときだった。


——ジジッ


ノイズ。


二人同時に顔を上げる。


「……なんだ?」


次の瞬間——


——ガァァァァァァッ!!


爆音が街中に響き渡る。


「なっ……!?」


見上げる。


建物の壁に取り付けられたスピーカー。

そこから、けたたましい音が鳴り響いている。


「ちっ、野郎!!」


「誰かが鳴らしてるの!?」


「……」


ショッピットは無言になり、顔を険しくする。


「奴らを誘ってやがる」


その直後。


——ぐ……ぁ゛……


一つ、聞こえる。


そして——


二つ、三つ、十。


あらゆる方向から、声が返ってくる。


「……来るぞ!!」


影が現れる。


路地、窓、車の陰。

次々と。


「数が多すぎる……!」


今までで一番のピンチかもしれない。

逃走経路が見つからない。


「逃げるぞ!!」


「どこに!?」


「いいから着いてこい!」


目の前ののろそうなゾンビたちの間をギリギリで潜り抜け、ショッピットの後ろを走る。


背後から迫る足音。


ドタドタドタドタ!!


「速いのもいる!!」


振り返ると、走る個体が混じっている。


「チッ……!」


「どこ行くの!?」


「中だ!!」


目の前の建物に飛び込む。


「上に行くぞ!!」


階段を駆け上がる。


一段飛ばし。

呼吸が荒れる。


それでも、なんとか最上階にたどり着いた。


「チッ……ここしかねぇ」


大きな金庫。


ここなら凌げるかもしれない。


私たちは急いで中に入り、鍵を閉める。


外から——


ドンッ!! ドンッ!!


扉を叩く強烈な音。


そして——


ドゴァン!!!


扉が破られる。


「ヤバ……」


「やるしかねぇ」


「っ撃て!希望!」


銃を構える。


——パァン!


しかし、数が多すぎる。


キリがない。


「クソ……!」


背後から気配。


振り返る。


ゾンビが迫る。


腕を伸ばし、口を開ける。


「……っ!」


間に合わない——


パァン!!


「背後にも気をつけろ!」


ショッピットがギリギリで撃ち抜いた。


だが——


倒しても倒しても、終わらない。


距離が詰まる。


(無理……!)


その瞬間——


——ザンッ!!


視界の端で何かが閃いた。


次の瞬間、ゾンビの体が斜めに崩れる。


「おいおい、派手にやってんな」


明るい声。


振り向く。


そこにいたのは——


二本の刀を持った、陽気な男。


軽く振るだけで、ゾンビを次々と切り裂いていく。


「助けに来てやったぞ」


「誰だ!?」


「今はそんなんどうでもいいだろ」


さらに——


「無駄話すんなっての!」


女が飛び出す。


手にした工具のようなもので、ゾンビの頭を叩き潰す…怪力女だ…


「後で説明すっから!」


「左、三体」


そして冷静な声。


——ダンッ! ダンッ! ダンッ!


すべて命中。


「みなさん、今は集中を」


眼鏡の青年が正確無比な射撃を続ける。


そして最後。


無言の少女。


飛びかかるゾンビ。


——ドンッ!!


拳一発で吹き飛ばす。


壁に叩きつけられ、動かなくなる。


「……え」


思わず声が漏れる。


しかし少女は何も言わない。


ただ、次へ。


速い。重い。


「……邪魔」


小さく呟く。


戦闘は一方的だった。


斬る。

撃つ。

叩く。

殴る。


すべてが異常な精度。


やがて——


静寂が訪れた。


「……終わりか」


ショッピットが息を吐く。


「ギリだったなー」


怪力女が笑う。


「運いいぞ、お前ら」


陽気な男が刀を払う。


「……助かった」


ショッピットが礼を兼ねて言う。


「気にすんな」


男は軽く笑う。


「生きてるやつは助ける。それだけだ」


私は少しだけ、目を見開いた。

こんな人もいるんだな…


「で?」


怪力女が腕を組む。


「どうする?この後 一緒に来るか?」


ショッピットがこちらを見る。


私は小さく頷いた。


「……一緒に行く」


彼らは強い。

共に行動すれば、生存率は上がる。


「決まりだな!」


陽気男が笑う。


崩れたビルの外。


まだ遠くから、うめき声が響いている。


「さっさとずらかるぞ!」


その声に従い、私たちはその場を後にした。


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