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どれくらいこうしていただろうか。脚を崩し手座る俺の腕の中で、彼女はずっと鼻を啜っていた。ずっと彼女は俺の手を握り続けた。ずっと泣いていた。話すことはない。それでも彼女はこのままでいさせてくれと言った。優しい言葉なんかいらない。もう知っている。だからずっとこのままでいさせてくれ、と。
「もう行かなきゃ」
彼女は顔を上げた。「一生分、恋した。この思い出だけで永遠に生きていける」
そう言って俺の元から離れると、落ちていた仮面と外套を手にしていた。仮面を顔の前に持って行きかけて、振り返った。
「またね」
完全には付いていない仮面の隙間から、横顔を少し覗かせていた。サラサラの髪は、重力に任せて靡いた。哀愁に満ち満ちた顔だった。この顔は、きっと何かを悟った顔だ。何かを決断した顔だ。何かを受け入れた顔だ。
もう会うことはない。生きていく人生の刹那に酔いしれて、彼女は俺を犠牲にした。でも、俺は犠牲だとは思っていない。そういうことなんだ。そういうことなんだろう? 俺の妄想に過ぎない、比留間さんの夢見る世界は。
彼女は仮面をつけた。




