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接触

活動報告の方でも書かせていただいたのですが、少しでも戦闘描写を分かりやすくしようと思い、夜射の応用に関して名前を付けることにしました。ただ、これは、使い手の能力者が付けた名前、という訳ではありません。エフェクトやオノマトペみたいなものだと思ってください。

「こんにちは。こんな所でどうかしましたか?」


男の内、片方が黒羽に柔らかい口調、柔和な表情を貼り付けながら近寄ってくる。

恐らく、黒羽が気配を消していることから一般人だと勘違いしているのだろう。


このまま、一般人と偽り、この場を切り抜けることも出来そうだ。

黒羽はいざ目の前にナイトメア能力者が現れたことで僅かではあるが、警戒心と恐怖心を抱いてしまう。心霊スポットに行って本当に幽霊が出たときに近いだろうか?


しかし、黒羽は自分の中にある恐怖心を押し殺す、虎穴に入らずんば虎子を得ず、だ。

勇気を出して、自分がナイトメア能力者であると打ち明けることで得られる情報があると信じ、黒羽は片手を男たちの目の前に出す。


「どうかしましたか?」


先程黒羽に話しかけてきた方が、不思議そうに首を傾げる。

黒羽は男の疑問を無視し、男たちの目の前に出した手のひらで夜射を行う。


その瞬間、今まであった友好的な態度が嘘のように男たちは懐に隠していた武器を構える。

武器は話しかけてきた方が自動型拳銃、もう一人の男がリボルバーであった。

形としては自動拳銃がコルト M1911、リボルバーはコルトパイソンに近い見た目をしている。


男たちはそれを何時でも引ける態勢で黒羽に向ける。


「お前、ここで何をしている?

どこの所属だ。何の目的だ。ここがモノリスナイトの活動地域と分かって接触してきたのか?」

「あ~っと、もっとゆっくり、一つずつ話して欲しいんだけど、そうだな、取り敢えず、所属は無所属、目的は人探し、それで最後は?」

「ここがモノリスナイトの活動地域と分かっているのか、だ」

「なるほど、その答えはNOだ。ただ勘違いして欲しくないんだが、別にここで暴れるつもりはない。

さっきも行ったけど、目的は人探しだからな。

そうだ、情報屋とかの伝手はあるか?

もしあるんだったら、教えて欲しいんだが…………。」

「そうだな。野良の情報屋に心当たりはない、が。

うちの幹部には情報収集に秀でた人がいる。

その人なら何か知っているかもな」

「そうか、なら、その人に合わせて貰えないか?」


黒羽がそう言うと、男たちは顔を見合わせる。

どことなく困惑しているように見えた。


「本気で言っているのか?お前にうちの幹部を紹介しろと」

「え、ええ、まあ。教えてくれるくらい良くないか?別に機密情報とかを知りたい訳じゃない。知らないなら知らないで言い。」

「……お前、図々しいな」


自動拳銃を持った男はそう言うと、銃を発砲する。

黒羽は咄嗟に避ける。

しかし、その瞬間、弾が着弾した床から人間を刺し殺して余りある二メートルを超える棘が生える。

道路と同じ材質をしたアスファルトの棘だ。


黒羽はその棘を咄嗟に鎌を召喚し、刃の腹で受ける。

その一連の流れを見ていた、男の片割れ、リボルバーを持っている男は焦る。


「お、おい、ニードル。流石に攻撃を仕掛けるのは不味くねぇか。もしかしたらさ、結構やべぇ奴かもしれぇだろ?」

「もし、そうならモノリスナイトと聞いて知らないと答えるものか。ならば、相手は野良か、知っているうえでこちらを軽んじているということだ」

「で、でもよぉ」

「……お前もモノリスナイトの一員ならもう少し、プライドを持てスレッドブロック」


その男たちのやり取りを注意深く観察しながらも、黒羽は鎌に夜射を纏わせ、臨戦態勢を整える。

黒羽の見立てでは、リボルバーの方が比較的穏健派で自動拳銃の方が、好戦的なようだが…………。

(今更、そんなことを考えても仕方がないか………)


黒羽は男たちの観察を打ち切る。

その代わりに直接疑問を投げかける。


「急に攻撃を仕掛けて来たけど、幹部の下に案内してくれないのか?」

「いや、一応生け捕りにしておいてやる。安心しろ回復の遺産はたんまりある。体が穴だらけになろうが、問題なく治る」

「……それは勘弁だな」


黒色飛鎌(こくしきひっせん)


黒羽は男の言葉に返答しながら鎌を振るい飛ぶ斬撃を放つ。

それに対し、リボルバーを持った男が引き金を引き、対応する。

リボルバーから打ち出された弾は斬撃の目前で白い雲のようになり、斬撃を受け止めたのだ。


恐らくあれが、男たちの固有能力なのだろう。

黒羽はそう分析をしながら、男たちの攻略法を考える。

勿論、黒羽としても彼らを倒すのは得策ではないと思うが、向こうから敵対してきた以上、倒して話を聞いた方が早いという考えだ。


(それに、男たちを倒すのはそう難しくない。)


黒羽は心の中でそのように男たちを評価していた。

というのも、トールの能力が無限の弾丸なのだとすれば彼らの弾には上限が存在し、リロードも必要になるのだろう。

その最中に倒してしまえばいい。

黒羽は弾を使わせるために敢えて彼らから距離を取る。

案の定男たち、ニードルとスレッドブロックは距離をとる黒羽を追い詰めるように銃を撃つ。


ニードルの弾は弾が着弾した部分から棘を出し、スレッドブロックの弾は途中で白い雲のような形状を取る。


黒羽は銃口から大体の位置を予測する。勿論、完璧な予測などは、少し特殊な能力を持つだけの一介の高校生に出来るわけもないので大袈裟なくらい大きな動作でもって避ける。

それにより隙が生じてしまい、そこをスレッドブロックが狙ってくる。

黒羽はそれを鎌で受ける。

しかし、そこで黒羽はこの白い雲の真の能力に気づく。


「ッ‼ 抜けない!」


鎌で白い雲を受け止めた黒羽だが、その白い雲が鎌から離れなくなる。

しかも、雲自体が相当な重量を持っているのか上手く動かせない。

黒羽の飛ぶ斬撃、『黒色飛鎌(こくしきひっせん)』を受け止めたのだから当然と言えば当然かもしれないが…………。


重くなった鎌に戸惑っているとニードルが動きの鈍る黒羽に追い打ちをかける。


パン、パン


二発の銃弾は敢えて、黒羽を避けるように着弾する。

そして、そこから、生えた棘が黒羽に突き刺さる。


「ッ」

「人間っていうのは不思議なものでな、危ないと分かっていても分かりやすい脅威以外への警戒心が薄いんだ。ほら……生活習慣病や感染症、ああいうのに対して自分はかからない、そんな漠然とした自信、いや、安心感を持ったことはないか?」


ニードルは左わき腹と右腕に棘が刺さっている黒羽に近づきながら、朗々と歌う様に問いかける。


いや、もしかしたら別に話しかけているわけではないのかもしれない。

ただ、黒羽が反応できなかった理由を淡々と解説しているだけのような気もする。


勿論、黒羽からすればだからどうしたという話だ。

解説などされなくても、次以降は同じ手には引っかからない。

それと、今はこの身動きが取りづらい状況を何とかすべきだ。


黒羽はそのために、まず黒鎌を消す。

それにより、鎌にくっついていた白い雲のようなものは床にゆっくりと落ちていく。

その様子を眺めながら、もしかしたら鎌が重くなったのではなく、空気の抵抗を異常なほど受けていたのではないかと黒羽は考えを改める。


確かに、今考えてみれば動かしづらくはなったが、肝心の重さというのは一切感じていなかった。

戦闘という非常時で頭が上手く動いていない証拠だ。だから、動かしづらいから、重くなったという安易な発想になってしまう。

黒羽は深呼吸を一つし、戦況を改めて見直す。

相手は銃という飛び道具を使い、遠距離から攻めて来る。

更に、弾にはそれぞれ、打ちこんだ場所に棘を生やす能力、弾自体が雲のような見た目の素材に変わり、捕縛機能に長けた能力を持つ。

この二つの要素は現在いる道路のど真ん中のように避けるスペースが少ない場所の方が、威力を発揮するだろう。

反対に広い場所であればやり過ごすのは不可能ではない。


深呼吸の間にこれらの考えをまとめ、左わき腹と右腕に刺さった棘を左腕で思い切り砕く。

ナイトメア能力者の腕力は伊達ではない。


ただ、それは相手も分かっていたのか、追撃をかけてくる。

スレッドブロックは分からないが、ニードルが使う武器はリボルバーであるため、残弾数というのが傍目からでも予測できる。


弾数は銃を打った際の回転から恐らく六発、不意打ちで一発、その後、交戦中に四発。

つまり、次で弾切れだ。


ニードルもそれが分かっているのか、急に攻撃を止める。

攻撃の手がスレッドブロックだけになり、多少余裕が出来た黒羽は二人から距離を取り、二人を気にしながらも背を向けて走り出す。


「ッ! ニードル、あいつ逃げる気だ。どうする?追うか?仲間に連絡を入れても良いと思うが……。」

「馬鹿いえ、ボスの役に立つのは俺達だ。他の奴に手柄をやる必要なんてない。」

「で、でもよぉ。」

「……なあ、ニードル、勝てる戦いをみすみす逃すのがお前の主義か」


黒羽が背を向けながら逃げる中、ニードルたちは追いかけながらも相談をしていた。

仲間を呼ぶかどうかの相談だ。

ニードルは自分達こそがボスの役に立つという思いを胸に秘めているため、仲間を呼び安全に狩ろうとするスレッドブロックをそそのかす。

スレッドブロックはニードルの話に耳を傾け吟味する。

吟味した結果、確かに、このまま逃げるよりも戦った方が甘い汁を啜れるのではないか、その考えが頭をよぎる。

危ない橋も一度は渡れという言葉もある。

何よりもこのまま独断で追い詰めたとしても大したリスクは背負わない。

何故なら、相手は一人。

仮に仲間のいる場所に誘導されていたとしても、その際に連絡を入れればいい。


そのことについて責められたとしても、相手がかなりの手数を用意している可能性もあり、無暗に連絡を入れれば他の地区の守りが薄くなり、そこを突かれる可能性があると判断した、と言えばいい。


スレッドブロックはある程度自分の中で上手くいった場合と上手くいかなった場合の筋道を立てほくそ笑む。




後ろを振り返りながらも距離があるため、二人の会話まで聞き取れていない黒羽は、懸命にある場所に向かう。


二人の武器とは相性の悪い場所だ。


そこは現在地からそれ程時間のかかる場所じゃない。

そして、この空間の内側にある場所だ。


黒羽は目的の場所に辿り着くと、思いっきりバリケードを蹴り破り、中に入る。

そこは一面が土で出来ており、幾つか、クレーン車などの重機が置かれている。


「はぁ、後で工事現場の人間に何て言い訳する気だ?頭を下げただけじゃ許されないんじゃないか?」

「……大丈夫だ。なんせ、ここは偽りの空間。そうだろう?」

「お、おい、ばれてるぞ⁉やっぱり仲間呼んだ方が良かったんじゃないか!」

「落ち着け、別にばれた所で問題ないだろ」


黒羽は二人のやり取りに、にやりと笑う。

やはり、男は空間生成の遺産を持っている。

あの『ゾワリ』と背筋が凍るような感覚は以前、インサイトと戦った時と同じ、世界そのものが変わったような感覚と酷似していた。


そして、ニードルが当たり前のように地形を変え攻撃をしてくることや朝には工事現場の人間が来る場所で平気で刃傷沙汰を起こそうとしていることが黒羽の考えをより強固なものにした。


「ここなら、勝てるぞ」


鎌を再度召喚し、男たちに構える。

黒羽の見立てではニードルの能力は、周囲の物質と同質の棘を生やすというものだ。

ならば、地面が土で出来ていれば問題はない。

スレッドブロックの攻撃に意識の大部分を割きながら、ニードルに迫る。

スレッドブロックはニードルと比べ戦いに向いた性格をしていないように見えたため、先にニードルを倒し、戦意を折る狙いだ。


凡そ、三歩程度でニードルに近づき、鎌を振るう。

斬撃武器としては使えないため、出来るだけ思いっきり、頭は危ないので胴辺りを狙う。

その際に、苦し紛れなのかニードルは自分の足元目掛けて、最後の弾丸を撃つ。


「えっ」


黒羽は腹を見る。

そこには棘が刺さっていた。

土の棘ではない。鉄の棘だ。



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