表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/26

敗走

黒羽は腹を見る。

そこには棘が刺さっていた。

土の棘ではない。鉄の棘だ。


「何か、勘違いしているようだから教えてやるが、俺の能力は着弾した部分の物質を解析し、その物質に含まれる成分を用いた棘の創造、だ。


土の中には鉄分と二酸化炭素が含まれているそうだが、これらを分析し炭素鋼を創造

することも勿論可能だ。」


初めからこうなるように誘導していたのか、ニードルは鎌が届く距離まで近づかれているのに冷静に解説を始める。

ただ、鋼鉄の棘が腹に刺さっている黒羽は、その痛みからニードルの話を聞いていなかった。


「コード1 ブレッド」


そのことに気づいたニードルは夜射を使い弾を生成しながら、心底つまらなそうにリボルバーのリロードを行う。

一つ、一つ、丁寧に弾を込めるニードル。

ただ、ここは戦場で敵は目の前だ。

油断をして、弾を込めるニードルに黒羽は、鎌を振るう。


「うぉぉぉぉ!」

「コード2 ブレード」


しかし、黒羽が振り下ろした鎌はニードルが生成した夜射で出来た剣で防がれる。


「……夜射?この精度、この速度で?」

「ん、お前、もしかして種に気づいてないのか?」


黒羽は何を言っているのか初めの内は分からなかった。分からなかったが、鍔迫り合いの最中に剣を持っている男の指に二つの指輪が嵌っていることに気づく。


相手は認識阻害の遺産を使っているため、顔や服装は分からない。

そんな中ではっきりと認識できるもの。

いや、出来るようになったもの。


「夜射の精度を上げる遺産?」

「正解だ。随分気づくのが遅かったな。気配は完璧に消せていたが、気配感知はお粗末……。実はルーキーだったりするのか?」


ニードルは鍔迫り合いをしながらも、随分と余裕があった。

それに対し、黒羽は腹に穴が開いており、痛みのせいで力が出ない。

いや、もしかしたら、そうでなくても力比べでは負けていたかもしれない。


黒羽は分が悪いと感じ、バックステップで距離を取る。

それにより、黒羽に刺さっていた棘も抜け、腹から血が流れだす。

更に追撃をかけるように、スレッドブロックが引き金を引く。

黒羽はそれを鎌で受ける。その際に白い雲のようなものが鎌に張り付くが、一度消して再度召喚することで白い雲のようなものをはがす。


しかし、その攻防の間にもニードルは途中まで行っていた自分の銃のリロードを行う。


黒羽は、余裕綽々とリロードを続けるニードルに向かって再度突貫を試みる。

勿論、その間にもスレッドブロックは攻撃を仕掛けてくる。


パン、パン、


2発の弾丸はそれぞれ、黒羽の進路と黒羽自身に向けられた。

それを跳ぶことによって黒羽は避ける。ただし、スレッドブロックもそれを狙っていたのか、宙で身動きの取れなくなった所に一発打ち込み、捕縛を試みる。


しかし、それを黒羽は鎌で受け、更に、スレッドブロックの白い雲のような物体の異常な程の空気抵抗と粘着性を活かし、空で滞空する鎌を足場にそのまま、ニードル目掛け急降下し、鎌を再召喚しながら斬りかかる。


「ちっ、コード2 ブレード」


ニードルも急降下する黒羽を脅威と感じたのか、再度剣を生み出し応戦する。

先程の鍔迫り合いではニードルが優勢であったが今回は降下した際の運動エネルギーも合わさり、黒羽がニードルを押し返す。


「ッ死に損ないが、ナイトメア能力者はなんでこうも異常な生命力を見せるんだ」


更に後ろに引いたニードル相手に黒羽は追撃をかけていく。

一合、二合、三合。

小回りは向こうの獲物の方が効くが、リーチと力で押し、相手のバランスを崩すことにより、黒羽が優勢に立つ。

それに焦ったのかニードルはスレッドブロックに助けを求める。


「おいッ、スレッドブロック、早く援護しろッ‼ なんのためのツーマンセルだ」

「わ、悪い、丁度弾切れだ。」


どうやら、運は黒羽に向いていたようで、スレッドブロックは現在弾切れに陥っているようだった。


スレッドブロックはマガジンキャッチを押し、弾倉を取り出す。

そして、一つ、一つ丁寧に弾を込める。


どうやら、弾倉はあれ一つしかないのか即座に再利用を始める。


その間にも当然、黒羽とニードルの戦いは続いている。


「ちっ」


ニードルはまだ装填途中のリボルバーを使い、攻撃を仕掛けてくる。

それに対し、黒羽も鎌に夜射を纏う。


パン、パン、パン。


ニードルは惜しげもなく、弾丸を使い、攻撃を仕掛ける。

それに対し、黒羽も『黒色飛鎌(こくしきひっせん)』で応戦をするも、夜射で剣を生成され防がれる。


そして、相手の棘から避けていると背後に止められていたショベルカーに当たってしまう。

ニードルはそれを見逃さず、装填されている最後の弾丸を放つ。


その弾丸は黒羽の横を通り抜ける。

黒羽は直ぐに背後から棘が飛んでくると察し、その場から離れようとする。

しかし、


「無駄だ」


ニードルがそう告げると同時に三メートルを超える棘が生え、貫く。

黒羽ではなく、背後にあったショベルカーを。

ガソリンで動いていた時代と違い、現在では新型電池によって全て電気で動くようになったショベルカーは依然よりも更に安全性は増したが、それでも絶対に安全なんてことはない。

ショベルカーという重機を動かす程のエネルギーを有しているのだから当然だ。


そして、思い切り、バッテリー部分を貫かれたショベルカーは映画でしか見たことがない大爆発を起こす。

その場から離れようとしていた黒羽もその爆発に巻き込まれ、背中が焼ける。


「グァッ」


しかも、爆風により、ニードルの下まで飛ばされる。

ニードルは爆風により転げまわる黒羽を見下ろしながら剣を構え、黒羽に向ける。


「終わりだな。多少は楽しめたよ。名前も知らない誰かさん」


黒羽に向けて剣を振りかぶるニードル。

しかし、黒羽もまだ諦めた訳ではない。

鎌でニードルの一撃を防ぐ。

そして、転がるようにその場から離れ、立ち上がる。


「おいおい、そろそろ諦めろよ。というか、スレッドブロックッ‼お前まだ弾込めてんのかよ」

「ちょ、もうちょっとで終わる!」


二人のやり取りを横目で見ながらも黒羽は逆転の一手となりえるあるものに目を付ける。

そして、二人でぎゃあぎゃあと言いあっている内に移動を開始する。

勿論、相手もこちらを注意していない訳がなく、すぐにばれてしまう。


「おい、どこに行く気だ。」

「丁度、弾も込め終えた。もう一回付き合え」


しかも、スレッドブロックに至っては弾を込め終え、「カチャン」マガジンをセットする。

それと同時に黒羽は走る。

スレッドブロックも黒羽が何かしようとしているのを察し、銃のスライドを引くと黒羽を阻止しようと足目掛けて引き金を引く。

黒羽がそれを右に避けると、弾は白い雲のようになり、黒羽の足にへばりつく。

しかし、黒羽は靴を脱ぎ捨てることで対処する。

更にバランスがとりづらいのでもう片方の靴も脱ぐ。

スレッドブロックは黒羽の迷いのない動きに更に警戒レベルを上げたのか四発の弾を一斉に放つ。


黒羽は飛んでくる四つの銃弾を、一つは『黒色飛鎌(こくしきひっせん)』で防ぎ、二発目は跳んで避け、三発目は鎌で受け、四発目は車の下に潜り込む。

しかも、只の車じゃないダイナモ車だ。

ダイナモ車とは重機が全て電気で動くようになってから生まれた発電車だ。

黒羽はその発電車の下に潜り込んだ。

そして、鎌に夜射を纏わせ、飛ばすのではなく、刃部分を伸ばし、しっかりと斬れるように夜射の刃を形成する。

形成した刃で初めにダイナム車にへばりつく白い雲のようなものをダイナモ車の一部ごと切り落とす。

次に、下から車体を蹴り上げ、ダイナモ車が浮いたところで大鎌で思い切り貫く。

貫いたダイナモ車を黒羽はその腕力で持ち上げ、自分自身がコマのように回り回転を加えて投げ飛ばす。


先程も行ったが、どれだけ安全になろうと、この手のものは重大な破損をすれば少なからず、何らかの不具合が起こる。

今回もその例に漏れず、ダイナモ車は怪しい煙を出す。

それを見ていたニードルとスレッドブロックはお互いに視線でアイコンタクトを送る。


パン、パン、パン。

スレッドブロックはダイナモ車目掛けて三発の弾丸を打ち込み、白い雲のようなもので、ダイナモ車を受け止める。


それでもダイナモ車の爆発の余波はこちらまで届くだろう。

だからこそ、ニードルもスピードローダーを使い、瞬時に弾を込めると、地面に四発打ち込み、

三十メートルを超える巨大であり極太の四本の棘を創る。

材質は二酸化炭素。

詰まる所、ドライアイスだ。


それにより、爆発による熱と炎を防ぐ算段だ。


その目論見は上手くいき、ダイナモ車の爆発による熱と炎を完全に防ぎきる。

更に、爆風に関してもドライアイスの棘にスレッドブロックの白い雲のようなものを張り付かせることで防ぐ。


ただ、ドライアイスの煙と爆風で上がった土煙のせいで視界が非常に悪い。

その隙を突かれないためにもニードルとスレッドブロックはお互い背中を合わせ、奇襲に備える。

しかし、一向にくる気配がない。


「お、おい、ニードルどう思う。」


その問いに、ニードルは答えなかった。

ただ、じっと視界が良くなるのを待つ。

そして、視界が良くなるのと同時、二人は武器を降ろす。


「逃げられたか」

「ど、どうする。報告するか?」

「ああ」


二人はその場で上にこのことを報告する。

かなりの苦言を呈され、軽くない処分を受けることになったが、ニードルは暗い表情はしていなかった。

何故なら、自分の手でこの街にやってきた危険分子の実力を把握することができ、それを上に報告出来たからだ。それに…………。


(どうせ、遠くまでは逃げられない。)


危険分子に十分な手傷を与え、正しい情報が伝達された。これにより、モノリスナイトの被害が減るのなら安いものだ。


何故なら、モノリスナイトの役に立ち、いずれボスに認知してもらうことがニードルの夢なのだから。


因みにスレッドブロックは顔を真っ青にし、ニードルに掴みかかっていた。


☆☆☆

爆風により、空を飛ぶ。ただ、自らの背には羽などなく、まもなく地に落ちる。

それが分かっているからこそ、体制を整え着地を試みる。

しかし、両足が地面についた途端その衝撃に耐えられず崩れる。咄嗟に手を突こうとはしたが、どうやら手も炭化していたのかあっさりと崩れてしまった。


「っ」


黒羽は自らの手と足により、多少は衝撃を殺しながらも盛大に倒れる。

全身に大火傷を、いや、所々炭化した自分の体を抱えながら。


爆風に乗り、あの場を逃げ出すことは出来たが、黒羽は既に戦える状況に無かった。

いや、生きているのすら不思議なくらいだ。


(流石に相手も無傷ではないだろうが…………。)


黒羽は本能に惹かれるがままに瞼を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ