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身勝手な願いの結末は、幸せか不幸か  作者: 氷雫月
第三章 ノブレス・オブリージュ

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魑魅魍魎蔓延る絢爛豪華な夜会

お待たせ致しました。


拝啓 親愛なるお兄様。お元気ですか?

お兄様が唯一神タイタス様の庇護の元、健やかに過ごせるよう、わたくしは毎夜地上から祈っております。


実はわたくし、今とても退屈しておりますの。暇というわけではありません。むしろとても多忙ですわ。

『闇ギルド殲滅作戦』の後からわたくしにも王族としての仕事が舞い込みはじめまして、とても嬉しい限りです。

着々と王位に近づいてはいますが、やはり一筋縄ではいきませんね。

わたくしが王位を得るには高位貴族の後ろ盾が必要不可欠。それは理解しています。理解はしていますが•••••••••それはそれとしましょう。

誰ですか?クズ共に権力を持たせたのはどこのどなたですか?その方の生きた時代にタイムリープして歴史を改変してやりたいですわ。

早々にルイーナに冒険者登録の破棄をさせていたことは正解でした。

貴族ブタ共ときたら、『王都近況の魔物退治』やら『盗賊殲滅』やら、わたくしからルイーナという護衛を少しでも遠くに離そうとちょっかいを出してきやがるんですもの。鬱陶しくて堪りませんわ。

勿論、それら全て正論付きで叩き返してやりました。あの時の貴族《穀潰し》のツラをお兄様にも是非お見せしたいですわ。苦虫を百匹嚙み潰したツラ()に無理矢理笑顔を貼り付けておりましたの。見ものでしたわ。

思い出して笑いが、ふふふ。


昨日は王都の外れにある孤児院へ視察に行ってまいりましたわ。

お兄様だから正直に申しますけど、わたくし、子供は苦手なのです。

意味不明な行動をするでしょう?何されるか判ったものではありません。

ルイーナが上手く立ち回ってくれたおかげでどうにか、どうにか違和感なく子供達とも戯れることができたと思いますが。

更に視察中、四時間近くも微笑みを貼り付けっぱなしでした。もお顔の筋肉が凝り固まってしまい、視察が終わった後も笑いっぱなしでしたの。他の方見たら不気味かとも思ったんですけど、これが逆で。

護衛だった騎士達からは、

『孤児院で子供達と遊ばれている時もとても楽しそうにしていらっしゃいました。その余韻を楽しんでおられるのでしょう』

と、好意的な見解を。

王宮の使用人からは、

『あの優しい微笑みは••••••あの小汚い孤児院の子供達と戯れた筈なのに•••••••••なんと慈悲深いお方なのかしら••••••••』

と、驚愕と賞賛の感情を。

ルイーナからは、

『社交界では一日中微笑みっぱなしが当たり前なのです。たった四時間で根を上げては、これから魑魅魍魎蔓延る貴族界で生き残れませんよ?』

と、小言を。

ルイーナ以外からはプラスでしたわ。

実はルイーナの言葉には続きがありますの。ルイーナときたら、

『社交界や貴族同士の食事会は正に戦場(・・)です。

食事でしたら、そうですね。相手の嫌いな物でテーブルを埋めることは常識です。それを微塵も感じさせず、尚且つ、料理全種類をある程度の量は食べなければなりません。半分以上残した暁には『民の血税で賄われている貴重な食材を無駄にした』などという悪評が出回りますよ。

食事中の所作一つ一つで相手の価値が決まりますし、ソーサーの音をたてるなど論外の所業です。それから-----』

これ以上は割合しますわ。全て話していては三十分は要してしまいますもの。

ルイーナは前世執事なだけあって、所作やマナーに厳しいのです。

敵にも最低限の敬意は払って然るべし。

などと作戦前も言っていましたわ。わたくし(元不良)には理解できないものでしたけど。


それでですね。ここまで楽しそうに話していて何が退屈かと申しますと。

夏真っ只中の今は、夜会のシーズンなのですわ。

絢爛豪華な調度品。

無駄に着飾り、悪臭を振り撒く貴婦人。

見栄を張る貴族達に、とっっっっっても、退屈していますの。

煌びやかな社交界の裏では数多くの陰謀が渦巻く。ルイーナから話だけは聞いていましたが、それを今正に体験しております。

わたくしも人の事を言えた義理ではありませんが•••••••••ですが、だからこそ退屈なのかもしれません。

最近の貴族は廃れすぎですわ。

頭のある方は素晴らしいと賞賛を送りたくなる程の腹黒さですのに。

わたくしに擦り寄ってくる野郎どもは顔に出過ぎです。

何が『エリザベス王女殿下。本日もご機嫌麗しゅう』ですのよ。

『畜生。何故私がこんな薄汚い娼婦に頭を下げなくてはならんのだッ』って、あちらの汚らわしい心の声が顔に出てましたわ!分かり易すぎですわ。

これでしたらまだ、物理的な弱肉強食の世界にいた方が刺激があって楽しかったですわ。冒険者とか。

ですがこの身分があるからこそ、わたくしはお兄様に出会え、かけがえのないひと時を過ごすことができたのですわ。

ありがとうございます、お兄様。

愛しています、お兄様。

必ず、必ず王になってみせます。

わたくしはお兄様の夢を叶えたのです。

お兄様も天国からわたくしの事を見守っていてくださいませ。

敬 具

お兄様の愛しの妹エリザベスより



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