冒険者ギルド
第三章 ノブレス・オブリージュ
貴族の義務編スタート!
更新はまちまちですが、完結できないという事態にはなりませんので、ご安心ください。
僅か一週間前。
闇ギルド『フェデス』が殲滅されたというビックニュースが世界中を駆け巡った。
正体不明の権力と強力な武力という名の信仰心を併せ持つ、闇ギルド最高峰の厄介さで撲滅不可能と言われていたフェデスをヴァータス王国の騎士団が倒した。
これにヴァータス王国の国民は歓喜した。
フェデスは神への反逆と見做すと、無関係な人間であっても容赦無く殺しにくる。その被害は頻度こそ少ないが、一度で甚大な被害が出る。
対策を施しても、尻尾も捕まえられない。
大きな権力が動いていることは前々から分かっていたが、まさか教会そのものが腐っていようとは誰も考えなかった。
そう、権力の正体は"宗教教会"。
宗教を隠れ蓑に使い、私利私欲のために利用していた幹部は一掃され、ギルドマスターであったヴァータス王国の貴族------ロバート・フォン・カトリック伯爵は斬首刑に処された。
カトリック伯爵家の不正の数々も露見、家ごとお取り潰しとなった。
今回のことで自ら騎士団を指揮し、更に前線にまで赴いたヴァータス王国王女------エリザベス・フォン・ヴァータス王女殿下の人気は天井知らずだ。右肩上がり。
エリザベス王女殿下が国王陛下に進言し、物的証拠を集め、半年以上前から進めていたフェデス撲滅計画は、歴史的大成功で終わった。
それに一役も二役も三役も立ったのは、Bランク冒険者【喪腕のロスト】。
この作戦の為だけに身分を偽り冒険者となり、名前を偽り、闇ギルドの幹部欺き、フェデスの主力戦闘部隊を一人で殲滅した。はっきり言って"化け物"。
だが"そんなこと"は闇ギルドを潰した事実に覆い隠されて誰も気にしない。
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ヴァータス王国の首都ヴァイスにある冒険者ギルド本部。いつもの如く喧騒に包まれている内部。
密集した荒くれ者達を避け、受付カウンターに声をかけた一人の十代半ばの少年。
長い黒髪を緩く編み、緑色の紐で纏めている。その人形如き端正な容貌の少年に、しかしギルド内の誰も気に留めない。
「冒険者登録の破棄をお願いします」
「---------------冒険者登録の破棄、ですか?」
「はい」
冒険者登録の破棄。それは冒険者の持つライセンスを返上するということ。今まで積み上げてきた実績や地位を捨てると同意義だ。
破棄という制度はあっても、それを実行する者はなかなかいない。
受付嬢も初めてだったのだろう。瞬きを繰り返している。
「冒険者登録の破棄、できますよね?」
急かすように少年は言った。真紅の瞳が受け嬢を射抜く。
「は、はい!勿論です!」
ライセンスをローブ下の胸ポケットから取り出した少年。
「お預かりし---------!」
少年のライセンスを見、固まった受付嬢。
「そっ喪腕の、ロスト••••••••ッ!」
彼女の声は決して大きくはなかったが、【喪腕のロスト】の一言で騒がしかったギルド本部がシーンと静かになった。
「それがどうかしましたか?」
「い、いえ!失礼しましたッ!•••••••••あの••••••••ライセンスを破棄した場合、今まで冒険者として積み上げてきた全てを失うことになります。それでも------」
本当によろしいですか?と問おうとした受付嬢の続く言葉は、
「私にはもう、不要な物です」
【喪腕のロスト】------ルイーナ・フォン・リガーレの平坦な声に遮られた。
「私が冒険者となったのは、"我が主人のご命令"があったからです。それが達成された今、これからは冒険者という立場が邪魔になるでしょう。その為の破棄です。
------------ご理解、頂けましたか?」
ルイーナはニッコリと笑い言った。
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平民及び下級貴族からの多大な支持を得たエリザベスに次に必要なのは"高位貴族の後ろ盾"だ。
貴族とのコネを作るには、ルイーナのリガーレ伯爵子息という立場がとても重要になってくる。
その時、ルイーナが冒険者ライセンスを持ったままだと、依頼だと嘯いて横槍を入れられかねない。それではエリザベス王女を護る盾が居なくなってしまう。エリザベスがいくら魔眼を持っていようとそれは嘘を見抜く目でしかない。
フェデスと同じようにルイーナという戦力が失われれば、今のエリザベスではいとも簡単に崩壊する。
人手が、足りない。
フェデス撲滅作戦時も、余裕なんてどこにもなかった。第三騎士団の騎士達がエリザベス王女殿下の味方だったから良かったようなものだ。
"運"で切り抜けた。そうとも言える作戦大成功だった。
人手不足の悩みが解消されるのは、以外にもこの直ぐ後。
彼女達が人手不足を解消し、更にエリザベスに次期王位を捧げることとなる。
"一石三鳥"の幸運がルイーナとエリザベスも元に舞い込む。
ここまで読んでくださった方々に感謝します。
これからもよろしくお願い致します。




