半端者に最高の嘲笑を 中編中
「------------汚れきった人間に、天罰を」
後ろに控えている若い騎士が溢した言葉に、素晴らしい信仰心だな、とエリザベスは内心嘲笑った。
崩れた教会から逃げ出してきた聖職者を保護する騎士達。その中でこの中央教会の裏の顔------闇ギルドのことを知る者はいないだろう。
秘密を知る者は、今頃------------
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突如天井が崩れ生き埋めとなったロバート達、フェデスの幹部ら。
彼らは崩落に巻き込まれ、最早地下の隠し部屋にいた者で息をしている者はいなかった。
最高権力者であるロバートとその奴隷であるクープを除いて。
"そのこと"を教会の一部だった瓦礫の影に隠れ、生命探査魔法と死角視認魔法で確認したルイーナは"ギルドマスター及び奴隷の誘導"に移った。
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ロバート・フォン・カトリック最高司祭は自分に従順な意思なき奴隷クープに抱えられ、教会裏手の森を駆けていた。
轟音と共に落ちてきた天井。
クープが緊急マニュアルに従い、ロバートを抱え、間一髪のところで教会裏の森に転移。
そのままフェデスを武力で護る者たちと合流するために森を駆けていた。
不健康そうな青白い肌、長いが細く枝のような四肢からは想像できない速度でクープは木々の間を力強く走っている。
これもクープの胸元に埋め込まれた"契約の魔石"の効力である。
魔石を埋め込まれた者は主人を名乗る者に絶対服従。更に意思を奪われ、その代わり超人的な魔力と身体能力を得る。
魔力は主人の力量や魔石の魔力保有量に左右するが身体能力は変わらずそうあり続ける。
「クッソ••••••ッ」
どうしてこうなったッ!?と内心悪態をつきまくるロバートは"森に仕掛けられた罠"に気づかない。
高貴な生まれ。約束された地位。絶対的な才能。完璧な容姿。完璧な自分という偶像に酔い、現実を見なかったロバート。
そのツケが今一気に迫っていた。
「ご主人様、緊急避難場所まで後------」
僅かですと続くはずだったクープの言葉は、ロバートがクープに放った一撃に遮られた。
右頬に拳を喰らったクープは無表情のままバランスを崩し、地面に転倒した。同時に地面に投げ出されたロバート。ろくな受け身も取れなかったのだろう。体を起こすこともできず地面に転がっている。
一方、クープは転倒と同時に頭を打ったのか、地面に倒れたままピクリとも動かない。
(•••••••••••避難、だと••••••ッ?この僕が!襲撃された挙句"逃げた"と言ったのか!?奴隷風情がッ!!?)
ズキズキと痛む頭で被害妄想を展開するロバートの顔は、土に塗れ、今まで見下してきた底辺の輩と同じだった。
「•••••••••••••••ぼく、は••••••ッ」
苦しげに、
「•••••••••最高、司祭だぞ••••••ッ!」
必死に、
「•••••••••••フェデス、のッ!ギルドマスターだぞ!僕はッ!!」
発せられた言葉は、
「------------------言いたいことは、それだけですか?」
氷のように冷たい声色、響いた言葉、"周りからの視線"に凍結した。
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"ギルドマスター及び奴隷の誘導"。
ルイーナはロバートとクープが逃げた先、正確には"逃げるルート"にあらかじめ設置型魔法陣を設置していた。
このギルドマスターは甘いことに、緊急避難場所の地図や奴隷に命じてある緊急マニュアルの詳細などの資料を執務室に隠していたのだ。そんな物、頭で暗記するのが基本だろうに。
更にルイーナがそれらの資料を盗んだことにも気づかないときた。
最重要秘密が書かれた資料を本棚の本な中に隠したり、最低限、定期的に場所を変えることもしない。
こんな輩が最高司祭とは、笑いを通り越して、心配してしまう。
話を戻すと、あらかじめ入手していた資料を元に、逃走ルートに設置型魔法陣誘導魔法------空間に作用し、全く別の場所へと誘導する魔法。応用が利く魔法で、他にも、この説明はまた今度にしよう------を仕込み、緊急避難場所に向かっているように見せかけて。
実際は、自らエリザベス王女殿下と近衛騎士団がいる教会正面に向かっていた、というわけだ。
この事を知らない者からすれば。
ロバートはいきなり瓦礫を越え現れ、地面に転がったまま自分が闇ギルドのギルドマスターであると叫んだ------自白した------犯罪者に見える。
「ッ!?」
今まで森にいたはずだ。
しかし今、目の前にいるのは---------
「お久し振りですね、ロバート最高司祭」
口元には笑みを。
「いえ、闇ギルド『フェデス』のギルドマスター------ロバート・フォン・カトリック伯爵、ですか」
目には嘲りを。
背後に大勢の騎士達を従えた。
ヴァータス王国第一王女にして王位継承権第一位エリザベス・フォン・ヴァータス王女殿下、その人であった。




