↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/21

10話:攻撃手段

視点の切り替わりと新キャラが多いです;


11/12 追記:サブタイトル修正しました。

無様に血を流す男を見て、彼女はうんざりしていたと同時に満足でもあった。

やはり、完璧な男というのはあの人しかいないという再確認が出来たからである。

彼女に生き方を教えてくれた彼。力の使い方を教えてくれた彼。

彼から見れは自分なんかは末端の一つとしか思っていないかもしれない。しかし、自分はそれでは満足しない。必ず、必ず隣に立ってみせると考えている。

だからこそ階位を上げる必要があった。しかし、女の自分では限界があった。

なので、こう考えた。別の方法で活躍すればいい。

命令に従うことで繋がりを保てばいい。

そのためであれば、何をしてもいい。現実世界を捨ててもいいし、人間的倫理を無視してもいい。

そう考えるとあら不思議。すぐにためらいなど消えてしまっていた。


だから、殺すことにためらいを感じられなかった。


「屑以下のお二人さん。私たち、いや。私は急いでいるから、すぐにでも死んでもらうわ」

見えない柄を握り直し、倒れる男とそのそばで寄り添っているゴスロリ女目がけて手を振う。

完璧に首を捉えたはずだった。しかし、手ごたえは感じられなかった。

空を切っていた。彼女らはそこにはもう存在しておらず、少し離れた別の場所に移動していた。

「なんなの? 早く死んでほしんだけど。 でも、これで分かった。 空間を移動する能力ってあんたのものだったのね。それで、屑の方はただ飛ばしてもらっていただけ、と」

再び柄を握り直し、彼女らを狩るにはどうしたらいいかと思考を張り巡らせる。

刀を振るっただけでは、彼女らには当たらない。逃げられてしまう。

かといって、次の出現位置を予測できるわけでもない。自分一人の力で、これを攻略するにはどうしたらいいか。

「……るさない」

「なんなの?」

思考を途切れさせるにも十分な彼女の小さな声。かなりの怒気が含まれていることが分かった。

「許さない。……許さない、許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないっ」

壊れたテープレコーダーのように何度も何度も同じ言葉を吐き続けるメタスタシスを見て、アイナは鼻で笑う。

「なんなの? その無能に変な執着があるようだけど、そこまでの価値があるものなの?」

「兄様をっ……愚弄するなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

バッ、とどこからか妙に装飾を施されたナイフを持ち出したメタスタシスは、一瞬のうちに消える。

次の瞬間には目の前に現れていて、醜く歪んだ形相でナイフを振りかぶっていた。

しかしこれは、ものすごく単調な直線移動と何ら変わりがなかった。

まっすぐ、こちらに向かって突進してきた。そう捉えて問題はなかった。

だからアイナはすぐに行動することが出来た。横に転がってナイフを避け、一閃。

当たらない。

メタスタシスは空間移動によって次の行動に移っていた。

上空からアイナを串刺しにするようにナイフを下に向け、降りてきていた。

咄嗟にそれを確認したアイナは持っていた武器を捨て、避けることに尽力した。

からん、と地面に転がった見えない何かは風景と一体化してしまい、このままでは探し出すことが不可能な状況になっていた。

「兄様、兄様、……私が必ずこの低俗女を殺して差し上げますわ……」

だらん、と両腕を垂れ下げながらメタスタシスはブツブツとつぶやいている。

「なんなの? 低俗なのはそこで地面に転がっている屑のことでしょ?」

「あああああああああああああああああああああああっ!」

能力さえも使わなくなった単調な直進。

アイナはすでにメタスタシスを殺す気だった。腰に差している残った武器で、一突きするだけで絶命することは知っていた。

だけれども。


「メタスタシス。何をやっているのかしら」


女の人の声がした。

メタスタシスの後ろの数メートル向こう。そこに黒のドレスを着た細身の女性が立っていた。

「お母……様っ……」

これも瞬きをするよりも早く、その女性の隣へと出現するメタスタシス。

アイナはただそれを眺めているだけだった。

「お母様っ! 兄様が、兄様があの女にっ!」

「落ち着きなさいメタスタシス。今はビスレィの手当てが先でしょう? あなたの愛も分かりますが、優先順位を考えなさい」

母のように優しく言葉で教え諭すその女性からは、アイナは嫌な雰囲気を感じ取っていた。

それが横に居るイルにも伝わったのか、彼は顔をしかめていた。

メタスタシスが兄と呼ぶ男───────ビスレィを抱えて母の元へと戻った時、ようやくその女性はこちらに視線を移した。

「どうも、私たちは愛心家族(ファミリー)と申します。 私は『母』であるフォイアー・インハイトと申します。うちの『子』達と遊んでくださったのですね」

まるで、現実世界にあり得るような挨拶。

何気ない日々の中に埋もれていそうな挨拶。

そんなものを今ここで持ち出すほどのイカレ具合はアイナにもイルにも完全に伝わっていた。

「なんなの? 遊んでた、っていうより殺し合いをしてたつもりなんだけど?」

「ええ、ですから遊んでおられたのでしょう?」

「はぁ? 何この人、話しが全く通じない系の人?」

「あなた方の愛をもって、『妹』のメタスタシスと『兄』のビスレィはさらに強くなることでしょう」

深々と頭を下げるフォイアー。アイナはその態度と振る舞いが気に食わなかった。

どう考えても下に見られている。そんなことぐらいは感じられた。

「強くなる? なんなの、あんたらは今ここで死ぬの!」

ブゥン! と手に握っていたそれで一閃。彼女たちとの距離は20メートル程度あったが、ゆうに届く。

チッ、と刃先がフォイアーの髪の先端をかする。彼女は顔色を一切変えずに手を伸ばした。

次の瞬間、目の前の砂が爆音とともに天空に昇った。

爆発したのだ、と気が付くのに数秒必要とし、次の迎撃までの行動には数十秒も要した。

横薙ぎにもう一閃振うが、手ごたえは全く感じられなかった。

視界が鮮明になり、前方を見やると忌々しい家族たちは消えていた。

逃げではなく撤退。そう思わせるほどの実力が今の少しの戦闘でアイナには刻みこまれていた。

「なんなの? あんな集団、前には無かったのに……」

誰に言うでもなく、呟く。

そんなとき、不意にイルが言葉をかけてきた。

「アイナ、行動は早急に中止だ」

「黙れ。あんたに指図される覚えはない」

苛立っていた。

悔しく。これでは思い人の期待に応えられていないのではないかと。

首の一つでも持ち帰られたなら、また一つ印象に残せるのではないかと。

そう思っていたのにうまく行かなかったから苛立っていた。

「アイナ」

「私の名前を気安く呼ぶなっ、切り殺すわよ」

「……トモ様から、だ。 命令、今すぐ赫逢騎士領団城跡に戻って来いとのことだ」

そんなイルの言葉に、何故だか素直には喜べなかった。




赫逢騎士領団城跡に戻ると、すでに他の面子は集合していた。どうやらアイナとイルが最後だったらしい。

全員が集合し終えたところで、トモが声を上げる。

10人に満たない赫逢騎士領団の面子。そんことは誰も気にせずにトモに注目する。

「先ほど、愛心家族なる集団のメンバーと相対した。 新たに結成されたのか、開かれた世界の先に居たのかは知らないが、かなりの難敵だった」

「と、トモ様。私たちも……その、戦闘になって」

「アイナか。大丈夫だったのか」

「はっ、はい。 相手が退散していったおかげ……なんですけど」

「いや、無事ならそれでいい」

「は、い……」

かあああっとアイナの顔が赤くなっていく。

無事なら、それでいい。たったそれだけの言葉はアイナにとってはとても破壊力のある言葉だったのだ。

その様子を見て、デリィはにやりと笑う。

「ハッハ、女が何を。 どうせイルに助けてもらったんだろぅ?」

対してアイナは反応しない。

イルは少し顔をしかめて後ろの方で黙っていた。

デリィはちょっとした問題児だということはこの赫逢騎士領団のメンバーは誰もが認知していた。

必要以上に関わらないということが重要だった。ただ、アイナの場合はそれ以外の理由も付随しているのだが。

「ハッハ、シカトか。 まぁそれもいい、お前のような雑魚には俺も興味ないからなぁ」

「私も、あんたみたいな雑魚には興味ないわよ」

「あ?」

ガキン、とデリィが背にしている大剣に手をそえる。辺りがざわつく。

エキは小さく笑ってその場から少し離れて、イルはコウに制され動けなかった。

「なんなの? ワケ分からないわ。私に構う理由は何?」

「ハッハ、その高圧的な態度。すぐにぶっ壊してやるぜぇ。お前が、俺に、階位をかけて戦いを挑んできたってことでいいんだよなぁ?」

「それでいいわ。雑魚にはこの場は相応しくないわ。死んで」

「お前がなぁっ!」

デリィは一瞬のうちに大剣を振り抜き、その衝撃波をアイナに向かって飛ばす。

具現化した衝撃はものすごい速さでアイナに迫る。しかし、何かの力によって少しずつ横に反れていき、アイナはその場から動かずに攻撃を回避した。いや、攻撃が当たらなかった。

「その程度? 階位三とは言っても虚しいものね」

「舐めてるとしか思えねぇなぁ。この程度で終わるわけがねぇだろうが!」

ゴキン、と大剣を地面に突き刺す。その大剣を中心として波紋が等間隔に広がり、嫌な気配を増大させる。

全体へ向けた広範囲の攻撃。そんな事は誰もが理解していた。

リムは楽しそうに笑い、地面から数センチ浮き上がってその様子を眺めていた。

「いい機会だ、ここに居る俺より階位の低い奴は全員殺してやる。 その方が統括も楽だろう!」

「止めろ、デリィ。 むやみにメンバーを減らすな」

デリィを制止しようと声を上げたのは最高階位(ランクゼロ)だった。

珍しくその低い声を荒げさせて言葉を放ったのだった。

「ハッハ、ただの老いぼれが俺に命令だと? お前も階位一に助けられた分際で。 一緒にまとめて殺してやるよ!」

キィィィィィン、と耳鳴りがし、その場に居たほぼ全員が耳をふさぐ。

しかし、それでも両手を貫いて聞こえてくる甲高い音はもはや呪われた泣き声のように聞こえる。

「おい」

その中で、ピシリとデリィの頬に新たな傷が作られた。

ほんの小さな傷だった。刀の先で少しなぞった程度の決して深くはない傷。

「なんなの? 余所見? あんたの相手は私のはずでしょ。それにこの程度が避けられないなんて……ほんっとうに雑魚、ね」

デリィに傷を付けたのはアイナだった。

致命傷には絶対になることのないただの小さな傷。それでも、デリィに対しては大きな効果があった。

怒り。

ソレを増幅されるには十分すぎた。

「く、そ、がっ………。殺してやる。全員殺してやるよ!」

円状に広がっていた波紋は赤の色を帯び、ついには耳鳴りが消えて殺気と破壊力が大幅に膨れ上がる。

地面から剣を抜き、振り上げる。

「死ね!」


パンッ、と音が死んだ。

次に、景色が死んだ。

だけど、生き物は何一つ死んではいなかった。


「おい、なんだよ。これ」

再び世界が構築されると、誰もがその場に存在していることにデリィは不思議に思っていた。

階位一はともかく。誰も死んでいないというのはどういうことなのか。

少なくとも自分より下に位置する階位の奴らは殲滅したはずだった。

「デリィ。お前は本当に危険なことをしてくれる。 今のは本当に全員死ぬところだったぞ」

そう言って見せるトモ。では何故か。何故誰も死んでいないのか。

「いいから落ち着いてくれ。今は俺が話している愛心家族についてだろう」

納得がいかなかった。散々馬鹿にされて結果がこれだと。

階位一の話しは頭に入らない。怒りで頭が真っ白になってそれどころではなかった。

とりあえず。誰かにこれをぶつけないと気がすまない。

殺さないと。気がすまない。

「デリィ」

声をかけてきたのはエキだった。

「……なんだ」

「イライラしてるのは分かる。だけど今は移動しろ」

「移動、だと。どこへだ」

「話しを聞いていなかったのか? 今回の『第二の鍵』に関する場所、『神殿』へだ」

「………」

「本当に話しを聞いていなかったようだ。 階位一が移動用魔方陣を展開させているから早く入れよ」

「………」

「おい、聞いているのか? 殺そうか?」

バチュン! とエキの顔が跡形もなく吹き飛んだ。

残った身体は後ろ向きに倒れていき、誰かが息を飲んだ音が聞こえた。

「いやいや、何してくれんだ。 俺だって痛いんだ」

スッ、と柱の陰から死んだはずのエキが出現する。

死体は目の前に存在している。まぎれもなくエキの能力だった。

「いいから行け。 後がつかえている」

他のメンバーはエキの存在に目を見張りながらも魔方陣に飛び込んでいっていた。

やはり、デリィの面持ちは変わらなかった。




到達したのは、いかにも古代の遺跡といった雰囲気を感じさせる『神殿』だった。

半分地面に埋まってはいるものの、かなりの大きさだということがうかがえた。

所々風化し、破壊されている個所もあったが。原形はとどめている。

いくつもの入口が闇を発し、容易には近づきがたかった。

辺りには数えるのも嫌になるくらいの円柱の飾りが立ち並んでいた。自分たちの数倍はある高さだ。

「ここが今回探している『鍵』に関する『神殿』だ。詳しくは、リム」

それまで黙っていたリムが口を開いた。

「懐かしいねぇ……。キリカはいるのかしら? ま、ここからじゃあ分かんないけどねぇ。それより本題かね。 とりあえず、今は見てもらうだけだ。『鍵』がどんなものか分からない以上、ヒントとなるのはこの『神殿』だけだからねぇ。しっかりと記憶に刻んでおいて役立てるんだね」

それだけを言うとリムはトモの斜め後ろの定位置に戻ってしまう。

「鼠が二匹ほどいるようだが……どちらも大したことない使い手だな。まぁ今は出てくる気もないだろうし、いいか」

トモは小さくそんな事を呟いてから、やがてメンバーを解散させた。




そう、いくつもの柱の一つ。その後ろには確かに玲夜と怜那が隠れていたのだから。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。