第三十一章《リゲルとベテルギウス》
「僕たちが生まれたのはずーと前。」
「まだ、人間はいなかった。」
僕たちはいつ生まれたのかははっきりしていなかった。
気がついたときには、そこにいた。
何もない大地。
空には、たくさんの星。
そして、僕たち。
「ねぇ、ベテルギウス。」
「なに?」
「僕たちって、何者なんだろうね?」
「さあ?」
僕たちにも分からなかった。
人間ではない。
ただ、星の光から生まれた。
それだけは、なぜか分かっていた。
「リゲル。」
「ん?」
「星がきれいだね。」
「うん。」
僕たちはずっと星を眺めていた。
まだ、人間という存在すら知らなかった。
やがて、長い年月が流れた。
森ができた。
海ができた。
そして、生き物が増えていった。
その中に――。
人間がいた。
「人間っていうんだって。」
「へぇ。」
最初は、遠くから見ているだけだった。
小さな体。
二本の足。
僕たちと少し似ていた。
でも、どこか不思議な存在だった。
「火を使ってる。」
「すごいね。」
「僕たちも何かできるかな?」
リゲルが手をかざす。
すると、手のひらに小さな光が生まれた。
「わぁ……。」
ベテルギウスが目を輝かせる。
「きれい。」
「これ、何だろう?」
「魔法……なのかな?」
僕たちは知らなかった。
この力が、後に「魔法」と呼ばれることになるなんて。
そして――。
人間と魔法使いの歴史が始まることになるなんて。
それから、さらに長い年月が過ぎた。
人間は増えた。
村ができた。
国ができた。
そして、魔法を使える人間も現れ始めた。
「魔法使いが増えてきたね。」
「うん。」
「楽しそう。」
僕たちは、人間と魔法使いを遠くから見守っていた。
けれど――。
ある日。
「……どうして?」
僕たちは目の前の光景を見て、言葉を失った。
「魔法使いが……。」
ベテルギウスも黙り込む。
人間たちは、魔法を使える者たちを恐れていた。
「怖い。」
「近づくな。」
「魔法なんてなくしてしまえ。」
少しずつ。
少しずつ。
人間と魔法使いの間に、溝ができていった。
「どうしてこんなことになったんだろう。」
「分からない。」
僕たちは何もできなかった。
ただ、見ていることしかできなかった。
そして――。
その頃。
僕たちは黎華と呼ばれている一人の少女に出会った。
「……あの人。」
「知ってるの?」
「ううん。」
「でも、どこか懐かしい。」
僕たちはまだ知らなかった。
あの人が、この世界の魔法にとってどれほど大きな存在なのかを。
そして――その少女が、後に始まりの魔法使いと片割れに分かれることも。




