第三十章《新たな脅威》
翌日。
私たちは駄菓子屋に集まっていた。
「うーん……。」
「どうしたの?時雨。」
「次の作戦を考えてるんだけど……。」
「中枢装置は壊した。」
「でも、浄化機関はまだ残ってる。」
「うん。」
「だから、次はどうするのかなって。」
「そうだね……。」
みんなで考える。
「もう一度、浄化機関に侵入する?」
「さすがに危険じゃない?」
「でも、あのまま放っておくわけにもいかないよね。」
「うーん……。」
「焦る必要はないぞ。」
狐黒さんが言った。
「え?」
「先日、中枢装置を壊したばかりじゃ。」
「じゃあ、少し休んでもいいってこと?」
「そうじゃ。」
「でも、浄化機関が何をしてくるか分からないよ?」
「だからこそ、今は情報を集めるべきじゃ。」
「情報……。」
狐黒さんが口を開く。
「おぬしたちは浄化機関について、ほとんど何も知らぬ。」
「確かに。」
「ならば、まず敵を知ることじゃ。」
「どうやって?」
「昔のことを調べるのも一つの手じゃな。」
「昔?」
狐黒さんが続ける。
「浄化機関は、昔から存在している。」
「どのくらい?」
「数万年じゃ。」
「……数万年。」
私たちは顔を見合わせた。
「そんなに昔から?」
「うむ。」
「じゃあ、魔法使いへの迫害も数万年前から?」
「それは違う。」
「え?」
「浄化機関が最初から今のような組織だったわけではない。」
「じゃあ、昔は何だったの?」
「……。」
狐黒さんが黙る。
「狐黒?」
「それは――。」
「……。」
「まだ話す時ではない。」
「えー!」
心菜が声を上げる。
「そこまで言ったなら教えてよー!」
「すまぬの。」
「気になるー!」
「わしも昔のことはあまり話したくないんじゃ。」
「そうなの?」
「うむ。」
狐黒さんが静かに言った。
「過去には、忘れたいこともあるからの。」
「……。」
私はそれ以上聞かなかった。
すると、心菜が口を開いた。
「じゃあ、今は情報を集めるとして……。」
「うん。」
「具体的にはどうする?」
「まずは浄化機関の資料を探してみよう。」
「資料?」
「昔の記録とか。」
「でも、そんなもの簡単に見つかるかな?」
「やってみないと分からないよ。」
「じゃあ、決まり!」
心菜が立ち上がった。
「次の作戦は――」
「情報収集!」
「おー!」
みんなで手を上げる。
「……なんか、戦うより地味だね。」
「まあ、そういう時もあるよ。」
私は少し笑った。
まだ、私たちは何も知らない。
浄化機関が何のために存在するのか。
数万年前に何があったのか。
そして――。
狐白さんと狐黒さんが、なぜ一人の人間から二人になったのか。
分からないことだらけだ。
でも。
「絶対に、家族を助けよう。」
「うん!」
「そうだね。」
私たちは、次の一歩を踏み出すことにした。
まだ知らない真実へ向かって。
そのときだった。
「……!」
突然、狐黒さんが立ち上がった。
「どうしたの?」
「静かに。」
「え?」
「何かおる。」
私たちは一斉に周囲を見回した。
「誰もいないよ?」
「いや。」
狐黒さんは店の外を見つめる。
「いる。」
「どこ?」
「……屋根の上じゃ。」
「屋根?」
私は外へ出た。
そして、空を見上げる。
「……誰もいない。」
「もう行ったようじゃな。」
「えっ?」
「でも、間違いない。」
狐黒さんの表情が少し険しくなった。
「誰かがわしらを見ていた。」
「浄化機関?」
「おそらくな。」
「じゃあ、もう私たちの場所がバレたの?」
「そう考えた方がいい。」
「……。」
みんなが黙り込む。
そのとき。
「ピピッ……。」
どこからか、小さな電子音が聞こえた。
「何?」
奏多が周囲を探す。
「……これだ。」
奏多が地面から小さな機械を拾った。
「盗聴器?」
「いや、違う。」
奏多は機械を調べる。
「これは……追跡装置だ。」
「追跡装置!?」
「うん。」
「じゃあ、浄化機関がここを――」
「違う。」
奏多が遮った。
「これ、浄化機関の一般的な機械じゃない。」
「え?」
「見たことのない構造だ。」
「じゃあ、誰が作ったの?」
「分からない。」
奏多は機械を見つめる。
「でも、一つだけ分かる。」
「何?」
「僕たちは昨日から、監視されていた。」
「……。」
嫌な予感がした。
その頃。
浄化機関。
「報告します。」
「どうした?」
「例の場所を発見しました。」
「そうか。」
「ですが、妙なことが。」
「何だ?」
「監視していたところ、別の反応が確認されました。」
「別の反応?」
「はい。」
リゲルが振り返る。
「どんな反応ですか?」
「解析不能です。」
「……解析不能?」
ベテルギウスが窓の外を見る。
「もしかすると……。」
「何か知っているのか?」
「いや。」
ベテルギウスは静かに笑った。
「ただ、少し懐かしい気がしただけです。」
リゲルも空を見上げる。
「……まさか。」
二人の視線の先。
そこには、昼間でも薄く見える星が一つ輝いていた。
そして――。
「始まりの魔法使い。」
「片割れ。」
二人が同時に呟いた。
「まだ、生きていたんですね。」




