第三章《もう一度、魔法を》
今日は暑かった。
まだ、桜が満開に咲いているのに暑かった。
「おはよー、今日は暑いね。」
心菜が話しかけてきた。
「うっ、うん、暑いね……。」
友達になったのに……うまく話せない。
「もう春どっか行ったのかな?」
「確かにね……。」
そして一時間が始まった。
そのあと二〜四時間目も過ぎて。
昼休み。
「ねぇ、お弁当一緒に食べていい?」
「あっ、うん。」
「俺も混ぜてくれ。」
「男子はダメ〜。」
「え〜、ケチ〜。」
「もう、仕方ないなー、ほら食べよ。」
「おう、サンキュー!」
お弁当を食べ終わり、私は散歩をしていた。
ふと外を見ると、枯れかけた花が咲いていた。
――あの日も、こんな花があった。
草木蘇生――枯れかけた植物を回復させる魔法。
あの時の私は、ただ花を助けたかっただけだった。
魔法で花を助けた直後、家は『浄化機関』に囲まれていた。連れて行かれる母の笑顔。「時雨、元気でね。」
その言葉だけが、今も胸に刺さっている。
苦しくて、苦しくて……。
息ができなくなることもある。
でも、今は友達がいる。
私には心菜と琉夏がいる。
そして五時間目。
事件は起きる。
五時間目は体育の授業だった。
体育の授業が始まってしばらくすると、心菜の動きが少しずつ鈍くなっていった。
「心菜、大丈夫?」
「へ、平気……。」
次の瞬間、心菜はその場に倒れ込んだ。
熱中症だ。
早く水を飲ませなければ危ない状態だった。
だが、誰も水を持っていなかった。
そんな中私は小さな容器を見つけた。
魔法を使えば助かる。
でも……また、あの日のように。
「誰か水を!」
「救急車呼んで!」
「あれっ?さっきまで水筒あったような?」
辺りは騒然となった。
「……しーちゃん……。」
心菜の微かな声。
考えるよりも体が先に動いた。
聖水――不純物のない清らかな水を作る魔法。
(しまった……使ってしまった。)
これで……心菜は助かる。
安心したのも束の間。
観察者は見ていた。
そして、手を動かした。
監視対象 No.百三十二
通称:白水
氏名:夜桜 時雨
魔法使用:アリ
出動要請:承認
こうして、時雨の平和な日常は幕を閉じた。
私はあとになって知ることになる。
この事件は、最初から仕組まれていたのだと。




