第二十八章《脱出》
「どうするの?」
「みんなは結界を壊すだけでいい。」
「えっ?」
「そのあとは私がやる。」
「大丈夫なのか?」
「うん。きっと……いや、絶対助ける。」
「わかった。みんな行くぞ!」
「うん。」
氷槍雨
炎球攻撃
風刃
――神楽舞。
「時雨、今だ!」
「うん。」
植物治癒・改――百花繚乱
「何?これ?花畑?」
「うん。」
「でも、これでどうするの?」
「私は自分で生み出したものなら自由に操れるの。」
「ほうほう。」
「そして、その植物で装置を壊す。爆発しないように慎重に。」
「なるほど、水だと感電したりするかもしれないからな。」
「そう。そして、最後に片割れ?さんを運び出す。」
「いけ……!」
ギギギギ……。
「少しずつ壊れてる!」
「でも、まだだ……!」
「急いで、ヴェールの人たちが来る前に!」
「おぉ!」
「じゃあ、脱出するよ!」
「うん。」
バタン。
「時雨!大丈夫?」
「ご、ごめん……今の魔法はたくさん魔力を……使うから。」
「もう、話さなくていい。」
「おい、伊藤!お前は片割れっていう人を頼んだ!」
「あ、はい!わかりました!」
「時雨……無理するなって。」
「……うん。」
「よし、出口はこっちだ!」
お兄ちゃんが先頭を走る。
私たちもその後を追いかける。
「待て!」
後ろから、ヴェールの人たちの声が聞こえてきた。
「追ってきてる!」
「急げ!」
「でも、時雨が……。」
「私は大丈夫。」
「いや、全然大丈夫そうに見えないけど。」
「……。」
私は少しふらつきながらも走った。
「あと少しだ!」
その時――
「琉夏。」
「……!」
後ろから声が聞こえた。
琉夏が立ち止まる。
「母さん……。」
そこには、琉夏の母親が立っていた。
「行きなさい。」
「えっ?」
「今なら、まだ間に合う。」
「母さんは……?」
「私はここに残る。」
「どうして……。」
「琉夏。」
母親は少しだけ笑った。
「あなたは、自分の信じた道を進みなさい。」
「……。」
「昔の私がそうだったように。」
「母さん……!」
「琉夏!」
悠生さんが呼ぶ。
「時間がない!」
「……うん。」
琉夏は拳を握った。
「また……会えるよな。」
「……えぇ。」
琉夏は振り返り、走り出した。
「行こう。」
「うん。」
私たちは出口へ向かって走った。
そして――
「出口だ!」
「やった!」
扉を開ける。
外には夜の街が広がっていた。
「急いで離れるぞ!」
「うん!」
私たちは浄化機関から離れ、しばらく走った。
「はぁ……はぁ……。」
「みんな、大丈夫?」
「俺は大丈夫。」
「私も。」
「時雨は?」
「……ちょっと疲れた。」
「だから無理するなって言っただろ。」
「ごめん。」
その時、伊藤さんが抱えていた人物が小さく動いた。
「……ん。」
「えっ?」
「今、動いた?」
「はい。」
伊藤さんがゆっくりとその人物を見る。
「目が……。」
ゆっくりと目が開いた。
「ここは……?」
「えーと……。」
「そなたは……誰じゃ?」
「えっと……。」
伊藤さんが困ったようにこちらを見る。
すると、始まりの魔法使いさんが一歩前へ出た。
「……久しぶり。」
「……。」
片割れは始まりの魔法使いさんを見つめる。
そして――
「おぬし……。」
「うん。」
「まだ……生きていたんですね。」
「……。」
その言葉に、私たちは顔を見合わせた。
「どういうこと?」
「分からない。」
「でも……。」
私は片割れを見る。
「この人たちには、まだ何か秘密がある。」
「そうだな。」
琉夏も頷いた。
「それに……母さんのことも。」
私は空を見上げた。
夜空には、たくさんの星が輝いていた。
――私たちは無事に脱出した。
でも、本当の戦いはこれからだった。




