第二十五章《始まりの魔法使い》
「あぁ、私は……。」
私は始まりの魔法使い。
名前は無かった。
家族や友達などはいなかった。
そして、常に狐の仮面を被っていた。
私はいつ生まれたのかわからなかった。
最初の記憶はお寺の境内で倒れていた。
なぜ倒れていたのかもわからない。
「君の名前は?」
「無い。」
「家は?」
「わからない。」
「家族は?」
「わからない。」
「じゃあ、うちにおいでよ。」
お寺の住職に保護してもらった。
住職の名は斎雪。
私の親のような人だった。
私の中には記憶の断片のようなものがあった。
その断片に始まりの魔法使いというものが見えた。
そして、魔法の使い方も見えた。
「あ、あの!私、魔法が使えるんです!」
それは寺で二年ほど過ごした頃だった。
私は斎雪に魔法使いだ、ということを話した。
「へー、そうかい。それは、すごいねぇ。」
斎雪は最後まで耳を傾けてくれた。
そして話終えると、
「そのことは誰にも言ってはいけないよ。もしかしたらその力を利用する人が現れるかもしれないからね。」
と助言した。
「はい。わかりました。」
それから何年か経ったある日。
聖域機関を名乗る人たちがやってきた。
「ここに魔法使いがいると伺ってやってきた。」
「魔法使い?そんなものは迷信でしょう。お茶でもいかがですか?」
「とぼけるな!」
ガシャーン!
聖域機関を名乗る人は斎雪が出したお茶を床に落とした。
「おい、そこの狐の仮面の奴!お前怪しいな。ついてこい!」
「や、やめてください。」
「うちの子に何をするんだ!」
斎雪の抵抗は無駄だった。
私は聖域機関連れ去られた。
「ここは?」
「ここは聖域機関。魔法使い撲滅の為に動いている組織だ。」
「えっ?」
「これからいろいろと調べるから覚悟しておけ!」
その日から、私の地獄の生活は始まった。
いろいろと実験させられたがあまり覚えていない。
それから何年か経ち組織の名前はコロコロと変わっていった。
しかし、トップの存在は変わることがなかった。
「おい、この狐の仮面の奴、使い物にならないぞ。」
「そうですねー、では、廃棄処分にしましょう。」
「えっ?」
「イャー!」
「黙れ、大人しくしろ!」
「あっ!」
その時、腕を引っ張られた衝撃で仮面が取れて……。
「ここは?」
気がついたら周りの景色は変わっていた。
建物の瓦礫。
人々の悲鳴。
たくさんの死体……。
「えっ?どうして?」
「お主の力よ。」
「あ、あなたは?」
声の方に振り返ると、黒い狐の仮面をつけた、どこか私に似ている少女が立っていた。
「わしは……お主の片割れとでも言っておこう。」
「片割れ?」
「あぁ、じゃが、気にするな。」
「はぁ?」
「お主のその仮面は魔力を抑え込む者じゃ。それが外れたから暴走たまでよ。」
「えっ?」
「話は終わりじゃ、さらばじゃ。元気でのー。」
「あの、あなたの名前は?」
「わしに名前などないわ。」
そして、黒い狐の仮面をつけた少女は姿を消した。
「……どうしたらいいの?」
周りには瓦礫と死体がある。
「……もう、私には何もできない。」
私はすべてを終わらせようとした。
その瞬間――
目の前が光に包まれた。
「死んだのかな?」
「まだじゃ、お主にはやらんといけないことが残っとる!」
「あの時の人!」
「お主は死ぬとタイムスリップする。」
「えっ?」
「いつの時代かはわからん。」
「私はこれからどうしたらいいの?」
「導け!人々を幸せにするんじゃ!」
「……幸せ?」
「あぁ、そうじゃ。そろそろ時間じゃ、またな。」
「また会えるよね?」
「あぁ。」
そして、時代を超えて……二〇二六年に。
「ここはどこ?」
街並みはタワーマンションやビルがたくさん並んでいる。
「結構飛んできたのかな?」
私はこの時代を調べた。
わかったことは、二〇二六年であること。
魔法使いは浄化機関に見つからないように生きている。
ということだけだった。
『導け!人々を幸せにするんじゃ!』
きっと、幸せにしてみせる。
魔法使いも魔法使いじゃない人も。




