第4話 大地と冷凍パイナップル
子供に戻って夏祭り行きたいなー
「待てって、おい……!」
群衆をすり抜け、山道の暗がりに差し掛かったところで、ようやく少女の背中に追いついた。
ダイチは完全にエネルギー切れを起こし、這うような足取りで膝に手を突く。激しく肩を上下させるダイチの前で、歩いていた少女が、不意に足を止めて振り返った。
「はい、これ。面白いもの見せてくれたご褒美」
差し出されたのは、割り箸に刺さった、見るからにキンキンに凍りついている冷凍パイナップルだった。
「お前……っ!」
ダイチはさらに苛立ちを募らせ、額に青筋を浮かべた。
さっきまでかき氷で脳を破壊されかけていた人間に、追い打ちで冷凍フルーツ。
どこまで俺を凍え死にさせれば気が済むんだ。ダイチが怒りで拳を握りしめた、その瞬間。
「なーんてね。はい」
少女はいたずらっぽく笑うと、背中に隠していたもう片方の手を、ダイチの目の前に突き出した。そこにあったのは、プラスチックのパックに入った、湯気を立てるあつあつの焼きそばだった。青のりと紅生姜の香ばしい匂いが、夜の山道にふわりと広がる。
「……え!」
ダイチの目が、現金なほど一瞬でらんらんと輝いた。
パックから伝わる温もりに「あったかい……」と頬を緩ませたのも束の間、ダイチは我慢できずにパックをひったくるように受け取ると、割り箸を割ってガツガツと焼きそばを口に放り込んだ。
「――っ、んぐ、うっま……!!」
頬袋をリスのようにパンパンに膨らませて、口の周りにソースをいっぱいつけながら、ダイチは猛烈な勢いで頬張り続ける。
さらに、少女の手にある冷凍パイナップルを見つけると、「それも!」と言わんばかりに奪い取り、ガジリと大きな音を立てて汁を飛ばしながらかじりついた。
濃厚なソースの後にやってくる、キンと冷えた果汁の暴力的な甘さ。食べ終わったダイチは少女の視線を感じ姿勢を正して。
「……。……うん、まぁまぁ、うまかったな」
口の周りを浴衣の袖でゴシゴシと拭きながら、ダイチは少しだけ気まずそうに、だけどお腹がいっぱいになって完全に満足しきった子供のような顔でぶっきらぼうに呟いた。
少女はそんなダイチをどこか眩しそうに見つめながら、吊り目を三日月のように細めてクスクスと笑った。
「でしょ? ゲンキンなんだから。よし、元気が出たなら行くわよ」
焼きそば美味そうやなー食べたくなった。




