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仮想 少年✖️少女  作者: libero protocol
大地✖︎少女の夏祭り編

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第0話 美空と大地

――現実世界で傷つき、絶望した少女は、醒めない夢を見ていた。


それは、大好きな大地との、あたたかくて優しい思い出の数々。


この閉じた世界にいる彼女は、後にお化け屋敷や江戸の町でダイチを振り回すことになる、あの生意気で自由奔放な「吊り目の少女」ではなかった。


親がいない施設育ちであることを酷くいじめられ、いつも自分の殻に閉じこもっていた、引っ込み思案ではにかむ表情が染みついた、優しい目の少女――それが、美空みそらの本当の姿だった。


大好きな思い出の箱庭に閉じこもり、このまま静かに消え去ろうとしていた、まさにその時。


「――おい!! 美空!!」


彼女の作った都合の良い夢を乱暴に踏み越えて、一人の少年が息を切らせて走ってきた。


ボロボロの私服を着た、本物の、大地だった。


(あ、え……? なんで大地がここにいるの……?)


最初は、自分が寂しさのあまりに作り出した、都合の良い幻影だと思った。

だけど、目の前の大地は、彼女の思い通りには動かなかった。


大地は美空の前に立つと、顔を真っ赤にして、見たこともないほど激しい剣幕で怒鳴りつけてきたのだ。


「お前、何やってんだよ!! あんな薬(良い夢を見る薬)を大量に飲んで、このままじゃ死んじまうぞ!! 早く目を覚ませッ!!」


「だ、大地……? 本物、なの……? なんでここにいるのよ……」


美空が呆然と声を漏らすと、大地は頭をガリガリと掻きむしりながら、ぶっきらぼうに、だけどこれ以上ないほど必死な声で告げた。


「俺もあいつ(同じ薬)を大量に飲んだんだよ。それで、お前の精神世界ここに無理やりダイブしてやったんだ」


「な……っ!? あんたバカじゃないの!?」


美空は驚愕し、血の気が引いた。

どこまでも向こう見ずで、命の危険なんて一ミリも考えていない大地の行動。


けれど、地獄のような現実世界から一人で逃げ出した自分を、死ぬかもしれないリスクを背負ってまで追いかけてきてくれた――その圧倒的な事実に、美空の胸の奥から、狂おしいほどの喜びと、彼にそんな危険なことをさせてしまった凄まじい罪悪感が、同時に溢れ出してぐちゃぐちゃになった。


「ほら、分かったらさっさと戻るぞ、美空。現実に帰ろう」


大地が差し出してきた熱い手のひら。

だけど、現実のいじめの恐怖が、美空の心を凍りつかせる。


美空はその手を強く振り払って、泣き叫んだ。


「嫌よ!! 帰りたくない!! あんな、誰も助けてくれない、いじめに満ちた世界になんて、絶対に帰りたくない!!」


「美空、お前……っ!」


「来ないでって言ってるでしょ!!」


激しい押し問答。大地は絶対に引かない男だ。


このままでは、大地は美空を力ずくで連れて帰ろうとするだろう。

だけど、それでは大地まで現実世界で薬の毒に侵され、二人とも死んでしまうかもしれない。


(ダメ……。大地を巻き込んで死ぬわけにはいかない。でも、私はもう現実には帰れないの……)


追い詰められた美空の脳裏に、悲痛な、だけど完璧な計画が浮かび上がる。

ここは私の夢、大地の精神を操作することだってできるはず。


(大地の記憶を、全部消そう。……私が誰かも、ここへ来た理由も、全部)


記憶をなくした大地を、自分の作った理想のデート(生への未練)に付き合わせる。


そして、小さい頃から共に過ごしてきた大地から、本当は言って欲しかった真っ直ぐな言葉を引き出す。


すべての未練を解消して大地に見送ってもらおう、それなら私は怖くない。

大地はその時に開放するね。もう少しつきあってね。


「……ごめんね、大地」


美空の瞳から、大粒の涙がハラリと頬を伝って落ちていく。


美空は泣きながら、大好きな大地に二度と本当の本心を悟らせないよう、自分の顔に、生意気で、自由奔放で、圧倒的にマイペースな「吊り目の仮面」をがっちりと被せた………。

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