第五章 21 トータル・リカバー
泥蟹との死闘を終え、凍死寸前の先遣隊が列を作る。湊(inダグラス)は、事前に設営させておいた「三つのテント」を指差し、兵士たちをその巨大な熱気の渦へと放り込んだ。
【第一テント:蒸気洗浄】
まずは「泥」と「汚れ」の徹底除去だ。
(ダグラス、まずはここで泥を浮かせて洗い流すんだ。汚れが残ったままで温めても、感染症のリスクが残るからね!)
密閉されたテント内。熱した岩に薬草水をかけ、猛烈な蒸気を発生させる。兵士たちは裸になり、浮き上がった泥を熱い湯で一気に流す。
「おおっ……泥が……絶望が剥がされ落ちていく……」
ここでは「清潔さ」を取り戻すことがさ優先される。
【第二テント:摂氏80度の極限サウナ】
汚れを落とした次は、体内の「冷気」から体温を上げるプロセスだ。
「みんな、怯まないで!次の天幕へ駈け込むんだっ!」
第一テントから濡れた身体のまま移動した兵士を待つのは、乾燥した摂氏80度の超高熱空間。湊(inダグラス)は、巨大な木の葉を扇のように操り熱波を叩きつける。強制的に血液を爆発させ、自己免疫力を限界まで引き上げる「命の点火」。
(ようし……これで全員の体温が安定した。指先の震えも止まったね)
【第三テント:極乾燥室】
最後は「再起」の為の仕上げだ。
(せっかくサウナで温まったんだ。濡れた服のまま外に出したら台無しだ。この第三テントで乾かすんだよ)
ここでは湿気を一切排除して、熾火の熱風のみを循環させた乾燥空間。
兵士たちがサウナで汗を流している間、別の兵たちが泥を落とした軍服やブーツをここでパリッと乾かしていた。
「……うん、お日様の匂いだ。清潔な服は何年ぶりだろう……」
湯気を上げながら、乾いたばかりの清潔な軍服に袖を通す兵士たち。そのひとみには、泥にまみれた惨敗兵の面影はなく、精悍な「兵士」としての輝きが戻っていた。
こうして、「洗浄」「加湿」「乾燥」という三つの工程を終えた150人の軍団が広場に勢ぞろいした。
「さて……と。次は調理だね」
湊(inダグラス)は、獲れたての氷蓮を素早く調理していく。
1あく抜きと保水:氷連は切り口からさんかして黒ずんでいく。すぐに水にさらして厚めに切る。
2泥蟹の出汁取り:大鍋では、先ほどまで真っ赤に焼かれていた泥蟹の殻がグツグツと黄金のスープを煮だしている。甲羅は匂いが出るから香ばしさがピークになったらすぐに引き上げなければならない。
湊のするどいタイミングで、ダグラスは巨大な網を使い、役目を終えた蟹殻を鮮やかに取り除いていった。




