nAmBAr.21-02「虹と言う卵」
ある程度私のベースソロの終わりが見えて来た所で、ローニャはふわあ、と言ったリアクションを取って何事も無かったかの様に欠伸をしている。クッ、報われぬ我が努力よ。そして起きたかと思うと小鳥の時のぴょんぴょんとした小躍りとは打って変わった優雅な白鳥の様なダンスへと変容したそれを見せてくれた。なるほどな、と思う、恐らくは小鳥は成長し一端の鳥へと変わったのだ。それがどう歌詞に影響するのか見ものだ、と思った所でローニャにアイコンタクトを取られ私はドギマギする。つまり、ソロはもういいから主役をこっちに明け渡せ、って事か…? まあもういい加減口をあくせく働かせ続けるのも無理が有るのでそれは願ったり叶ったりだ。
ソロ終了。それを契機にローニャはいきなりサビから歌い始めた。多分サビは二回続く。一回目のサビ、大人になった鳥はなんとその体の大きさで開いた心の太陽花の蓋となった、つまり虹を卵だとすると自分の身体でそれを温め出した、と言う様な流れだ。意外過ぎて私は二か所もベースラインをミスしたがローニャは意に介していない、もっと大きな不変の志に基いて歌い上げようとしているな、とそんな印象を受ける真面目な横顔だ。少し負荷が掛かっている様子、だが鳥は諦めない。光は覆い切れない身体の隙間からちょっとずつだけ漏れているがそれも虹色であり、鳥からすれば今の所御の字、これからも上手く行けばいいが。鳥は、なんと羽ばたく、高高度から光の発散具合を見る為だと言う。明らかに今までの二回のトライアルとは違う成功例となった今回の虹発散劇、鳥は満足気に虹の光が地平線の彼方にまで届いて居るのを見届けると今度は思う所が有る様だ。虹の成功に気を取られてしまい、己に睡眠からのとんでもない急成長を促し自分の小鳥時代を楽しめなくなってしまったな、と言う事に。見事な二枚の翼で虚空にて羽ばたきながら寂し気にそれを語る鳥、そう、それがサビだと言うのにも関わらずだ。私のベースラインは、メロディーラインの変化がない中において前回のサビで取った手法であるアップテンポさとはまた別方向の静けさ演出に終始した。
ん? またローニャがこっちを見ている、何か懇願する様な顔付き…そうか三サビバージョン2に行く前の転調に向かう簡単なソロフレーズを求めている様だ。私は静けさをいきなり打ち払う様な無駄に大仰なベースラインを頭のアイディアストックから捻り出した。彼女は一瞬目を丸くしたが、笑顔。どうやら快く受け入れてくれた様だ。




