nAmBAr.21-00「心の太陽花」
「じゃあ、今度こそ参りましょう。せーのっイバ・ニパ・ダイアさんッ」
「おうッ」
ローニャの予測不能な歌詞、旋律に乗せてボイスパフォーマンスを試みる。なるほど、偵察での時間の限り作り込んだと有って歌自体は完成度が高い物に思える。ならばそれに乗せるこのパフォーマンスもそれだけに期待を裏切らない物とせねば。私は全神経を集中させ、ここにだけ有る事がどうにか許されているのだろう空気の塊を揺らすべく舌を自在に稼働させようとしている。こんな事が事前に分かっていたなら私だって偵察の最中呑気に自己内省を気取っているべきでは無かったな、と今更ながら可笑しくなる。自分のパフォーマンスの下手さ加減も相まって、私はここで吹き出してしまった。
「んんー何? あちきの歌可笑しかったかなん?」
「いや違うんだ。違うんだよ、俺の間抜けさが可笑しくなってつい、ね」
「そ、そう。人に披露するの正直あーしも初めてだからあんまり自信無いんだよね。どう? 初聴きでもついてけそうな感じ?」
「いやー俺こそ自信が無いが、まあ何となく音階の作りは分かったよ。サビで吹き出さない様に気を付けないとな」
「まあそうだね、一番の盛り上がりの前にこうして話しておけたのは二人にとっていい事だったのかもね。じゃ行くよッ、今度こそ本気の本気、最後まで一気に駆け抜けちゃおうよんッ」
「よしッ」
私は自己内省に掛けて居たのと同じ集中度で声でのベース演出に注力した。ローニャの歌で描かれている今の所の歌詞の内容は宇宙全体から見た太陽の小さな輝きと人の心の温もりについての対比、まずそれが有りそしてその距離の有る二者をどうにか結び付けようと努力している小鳥の話の様だ。太陽の花が人の心の内側から花開けば、もっと世界は明るくなるのに、と言う様な。子供が夢想でもしている様な自由でかつ闊達、とても伸びやかな発想に基づいている印象、まあ私は今自身の慣れないベースライン構築で忙しくあまり細かく分析しているとまたローニャに怒られかねない失態を招きそうなのでそこそこにしておきたいが、単純に心の和む美しい内容だと思われた。
「いいねニパ君ノって来た! 初サビ入りますッ」
「分かったッ」
事前に教えてくれた事は私にとって大いに助けとなった。ここで助演に徹していたベースを少しだけ開放的にしてやれば多分ローニャの豊かな曲想を支えられるだろう。サビ、遂に心の太陽花は開いた、だが光は虹の様なまとまり無く七つに分かれ、悪感情も含めて勝手に飛び出してきてしまい今度は小鳥がその太陽花の暴走を止めようと奮起している…なるほど一筋縄では行かないと言う様なパニック要素も含めた歌の流れなのか。サビの終わりまでで一旦小鳥は太陽花の封じ込めに成功する、私もそれに相応しい落ち着いたベースラインへと音の軸を変更させた。




