nAmBAr.00-22「確かな煌めき」
「なるほどな。では、やってみせてくれるか。そのユニバン初の野外コンサート。野外って言うか、地球外か」
「何言ってんの、ニパ君。ニパ君だってバンドメンバーなんだから当然強制参加なんだよん」
「え、マジ?」
「マジ寄りのマジ、大マジだよん。でも今から歌詞覚えて歌唱の流れをマスターしてなんて悠長な事してたら多分そうこうして居るだけでこの宇宙での活動期限が到来しちゃうし、やって欲しいのはボイパ方面だなん」
「え何? 歌うんじゃ無く、ボイ…?」
「ボイパボイパ、ボイスパフォーマンス。そりゃあーし達ユニバンはそもそものテーマとして心音ベースラインを掲げているんだからその担当者は必須なのですよん。ささ、ニパ君にそう言うスキルが特別ある訳じゃ無いのは知ってるけど背に腹は代えられない、やるだけやって惨めだったなあって後悔は後ですればいい、やらずに後悔するよりやって後悔しようよん!」
「えぇ…惨めになるのは確約済みなのかよ…畜生、俺も男だ、ユニバンの歌姫に頼まれてすごすごと引き下がる訳にも行かないか…」
「さっすがニパ君、女々しく泣き腫らした後はすっかり切り替わって男前じゃ無いかなん」
「うっさい豚姫」
「うわひっど、こっちじゃ飴の一つだって舐められやしないんだからプロポーションばっちりだと言うのに」
そんなこんなでベースを口でやらされる事になった訳だが…。しかしローニャもローニャで歌の練習もしてる隙も無かった様な気がするが…。
「あーし時々偵察に出てたじゃん? その時にちょこっとずつ歌を作りつつ練習もしてたんだよね、まあ暇だったってのも有るけど、何より今日この時が来ると言う予期が何処かに有ったからさ」
「あ…」
なるほど、私の思慮不足か。彼女には彼女だけの時間が確かに有り、そこでの出来事は私にとっては死角になって居た、ブラックボックスだったと言う事だ。
「で、曲も全体像さっぱりなんだが、俺はどんな感じで付き合えばいいんだ?」
「いーよいーよ、その場のノリで自分のバイブス刻んじゃってよん。あちきもあちきでそれ聴きながらノらせて頂きます故。じゃこの無駄話の時間もきっと短い宇宙滞在期間に対しいい働きをしていないと思うんで、イバ・ニパ・ダイアさんッの掛け声と共に歌唱に早速雪崩込みたいと思います。ちなみにローニャじゃ無くダイアをセレクトしたのはそれが丁度”三”文字だからね。行っくよー、せーのっ」
「ええー! まだ心の準備が」
「黙らっしゃい、いいから楽しもうよん、二人の命が煌めきを放っているこの確かな時間をさ」
「あ…」
ローニャは不意に自殺に言及した。それは我々の背後には比較的簡単にタッチ出来る死の予感が常に付いて回っていると言う事。つまり私達の命が危ういバランスの上に成り立っていると言う事でもあり、そんな中で宇宙ピクニックの一環としてのコンサートを成功させる事は彼女の悲願なのだろう。私は抵抗を諦め、やった事も無いボイスパフォーマンスの為に舌の予備運動を始めた。




