nAmBAr.00-10「生命の糸」
「で、あーしの番だね。えいっ!」
「いっつ、な、なんだよ。あっ…」
私は不意を突かれ浮遊したローニャに頭を軽く小突かれたが、そこを今度は優しく撫でられていた。
「あーしなりのお返しって奴。泣き腫らしてて撫でられるってのもね、迷惑は迷惑だったけど、でも飽くまで主人公はニパ君な訳だしね。不安になる気持ちも当然分かるし、それにきっと何かこの岐路でうっすら見えたんじゃないかなん、他の二番手の決意表明みたいな物が。その逡巡無くニパ君が歩みを決めてたら、種子凍結の道にしろイバを救う道にしろそれこそあーしもこの星を全部地面に置いて自殺していたかも。ニパ君の人間味を見れた事、それはあーしの二番手サポーターとしての立ち位置を奮い立たせるのに十分な栄養だった。だから、今のはニパ君はニパ君でしっかりしろのゲンコツ、あーしに生きる勇気をくれてありがとうのナデナデ、だよん」
今不穏なフレーズが有ったな、と思った。星を置いて自殺、つまり彼女の心臓部はああやって見えていると言う事だ。凸凹コンビとも言っていた、それはその心臓の在り方の違いを指していると言ってもいいだろう。フレイムシュートで発現した心音のハーモニーとは、裏返せば私とローニャの切っても切れない生命の糸の顕れの様な物。彼女が死ねば、私も即時死ぬか、もしくはこの生命の階段を上がる儀式の袋小路に立たされる。どっちにしてもデッド・エンドだ。私はどちらの道が正しいか確かめたくて彼女の温もりを求めた。そしてそれは若干の拒否反応をこうして呼び起したがそれでも彼女は自分の再起に役立ったと言ってくれた。私が何処か限界だった様に、彼女も何かの瀬戸際に立っていた。ローニャは皆までは言ってくれないだろうが、私と彼女がやたらとこの台座に触るかどうかで時間を取っているのはそう言う事の様な気がする。
「しっかりしろ、か。じゃあ分かったよ。俺は台座に触る。ローニャも、それで今は構わないと言う事だよな」
「うん、オッケーだよん。正直ニパ君が泣こうが泣くまいがあちきは台座から手を引っ込める予定だったんだ。まあ泣かなかった場合だとあちきとニパ君は口喧嘩してたかなん? 今となってはよく分からないけど、でもきっとこれで良かったんだよん。イバと、ニパ君と、あちき。この最強トライアングルの証明にはなった筈だからなん」
怒涛の”ん”四連発に飲まれそうになりながら、私はある事を考える。銀河の花方面での二番手の種子の数が満ちて居ない、と言う事についてだが、なかなか二番手とサポーターが両方納得する形で円満に種子化するのは今までの我々のやり取りを思うと相当な茨の道なのではないか。”口喧嘩”、二番手達の悲喜交々に特に何も感じ入る事の無くそこに至ってしまう鉄仮面の私だった場合。この目の前にて指でダイアの四角形を作った時の様に笑いながら三角形を作っている少女は、果たして私が種子方面の想いを告げたとして真っすぐ受け止めてくれる物なのだろうか。そこをクリアしてただひたすら、いつ来るとも知れない数の充足の日を待ち続ける彼らの目線を恨めしさとして捉えた私の感性は、改めて間違っていなかったのだろうと、そう思えたのだった。




