nAmBAr.20「ダイアモンドの独白」
「行くかい、ニパ君。これが多分ユニバン最終公演の幕開けの合図。泣いても笑っても後戻りは出来ない、決定打って奴だろう。ニパ君の在り様もきっと大きく変容する事になる。引き返すなら…」
「どう言う事だ、ここまで来て引き下がる訳は無いだろう、そう言うまやかしみたいなのは要らないよ」
私はローニャの真意が掴めずそう問い質す。
「勿論あーしだって幾らアンテナが研ぎ澄まされていても全ての事を把握している訳じゃ無い。ただ…、分かるんだよ。この道を往く事が必ずしもニパ君のベストな道では無いかも知れないって事。ニパ君は仮にも二番手と言う高みには来た。きっとこのまま沈黙していても巡り巡っていつかこの宇宙の何処かで平和に暮らせる地位を獲得する目途が立つ日が来るだろう。勿論スタート地点から何もせずでそんな生易しい楽園にアプローチ出来ると言う程簡単な話では無いとは思うけどね、でもあーし達は力を合わせてここまで来たんだ、もう十分ハードルは乗り越えたと言える筈。ただこれ以上イバに深く介入すると言う事になると、にっちもさっちも行かなくなってしまっているどん詰まりの地球でその地位が実現してしまう可能性が高い。あーしもこちら側に封印された時点が幼過ぎた事も有るし、今の地球の情勢がどうなっているかと言う事を予測するのにも限界が有るんだ。
で、あちき思ったんだ。イバの生命の危うさってのは、何も個人的な話では無く地球全体の話かも知れない。まずアームロック化が有り、フレイムシュートが有った。あれは空を飛翔する熱源への防御反応かと思う。飛行機やヘリコプターじゃ無く危機的要因を孕む飛翔体、つまりそれはミサイルだ。アームロック化の大元は恐らく防空壕やシェルター。あの二対で攻撃側と防御側の絵が描かれている。平和へのイバの祈りみたいなもんだ。
そして飴廊下、フラワー未遂。銀河に咲けない花、それは大きく定義すると銀河進出を果たせない知的生命体をも含む。何の為に宇宙が存在しているのかは分からないけど、でも見えざるべとべとの飴で地球に足を縛り付けられている人々は、このまま地球外への夢を抱いたまま果てる事しか出来ないのかな。太陽にだって寿命は有るしね」
矢継ぎ早に繰り出すローニャ。流石はアンテナの少女か、今までの諸々の現象について感じられ得る事についても鋭く観察していたと言う事だ。その先回り思考を有難く思いつつも私は聞かずには居られない事が有る。
「分かった分かった、ちょっと待ってくれ。つまり、ローニャは俺とイバの絆について疑問が有るのか? これ以上踏み込まないで欲しい、と言う様な何かが」
そして目の奥底にダイアモンドの様な底知れぬ力強さを宿したローニャが言い放つ。
「予感だけど、ニパ君はなんだかんだでこの段階に辿り着いた数少ない二番手なんだ、普通一番手はそう易々とは運命に逆らえず命を絶たれる。そして、地球外への夢を抱いて一番手を見捨ててこの台座に触らない何かを目指した二番手での成功者数は未だ零。でもこの零と言うのも参加基準の一定数がまだ満ちて居ないと言う事なだけなのかも知れない。単刀直入に言うよ、ニパ君。銀河の花の種になる気はない?」




