nAmBAr.12「銀河と言う花」
「ここまでが6.2。恐らくだけど次で終わりだとしてあちき達の次なる到達点は2歳世界だね。さあ登山の果ての絶景ならぬ絶望を見るべく、ニパ君、シャボン壁と言う雲海を取っ払っちゃって?」
ローニャもローニャで登山の例えを出して来た事に私は親近感とも驚きとも言える心境になりつつツッコミを入れる。
「絶望てお前、絶景との落差が激しいな。まあそれ位の心構えで居た方が丁度いいのかも知れないな。分かった、行こうか。また太陽のギミックが待って居たりしてな、登山の果てだけに」
「笑えないジョークだねニパ君。モテないよ女の子を泣かせる様な事言って」
「そんなタマだったか? まあ次だな、行くぞ」
私は少し登って行かないと届かないシャボン壁を目指し廊下の柱を登り出す。それを見守るローニャ。次に待っている世界を警戒している様でもある。そして…触った。途端、私の重力に縛られ粘性の柱を頼みとしてしか現状維持や進行が出来なかったステータスが変容する。
「おお?」
驚きの声を上げたのはローニャだ。普段浮いているローニャですら重力の感覚が遮断されいつもとは違うなと言うのが身を以って感じられたのだろう。そしてそれは私も一緒だった。私も私でローニャ同様、飴の柱から切り離されシャボンの向こうの宇宙にも見紛う空間へと誘われて居た。
「あれ、これ大丈夫なの、息出来るの!? …うーん、その心配は無いみたいだなん、飽くまで幻想の宇宙か。今で5.9、そしてこの空間名は『フラワー未遂』、か。何がフラワーで何が未遂、なんだろうね」
「俺さ、ちょっと考えた事が有るんだよ、宇宙には地球にしか知的生命体が居ないって仮説が有るのは知ってる?」
「ん、まああーしも初恋の君がイバに見初められてこのニパ君サポーターとしての立ち位置を貰ってからはイバの知識に手が届く圏内で仮眠してた様なもんだからね、知っては居るよ」
「多分未遂の花って言うのはその事なんだと思う。知的生命体と言う実りを齎せなかった銀河と言う虚しい巨大な永遠の枯れた花。勿論これは仮説なんで実際の宇宙がどうこうって話にはならないのかも知れないが、しかしイバは多分それを強く心象風景として抱え込んでいるんだろう。俺達人類が孤独な宇宙の旅人だと言うその説に基づく世界予想図をね。まあこんな地球に地に足を付けた側ではない俺が人類を名乗るのは烏滸がましいのかも知れないが」
肉体を伴う人が廣く不在と言うその宇宙の姿はまた天国にも似ている。いやむしろ地球と言う監獄、と言う表現を借りるなら地獄の方だろうか。
「そんな事ないよん、イバの命の天秤に触れる事が出来るだけでもニパ君は地球の在り方を支える参加者の一人だよん。ニパ君だけじゃない、あちき達が居る異空間に類する場所で命の底支えを図っている無数の二番手達とそのサポーターは全員そうだと思っているよん」




