nAmBAr.11「登山の後の景色」
「だ、大丈夫大丈夫。いざとなりゃニパ君を放り投げちゃえば万事解決だし」
「それ解決じゃなくてただの集団自決な…」
そう軽口を叩きつつもローニャは私を運ぶ所まで運んでくれた。私の重さ故やや落下軌道を取りつつの物であった為、シャボン泡の壁に対しては遠ざかる事になってしまったが命あっての物種だ、贅沢は言うまい。粘性もしっかりしている新たな”廊下”に私はしっかと付着すると、再度の上昇を開始した。ローニャは一仕事終えたとばかりに肩をブンブンと振り体を休めている。
「助かったよローニャ。次の運搬業務が有るまで休んでてくれ」
「ふへー、そんな縁起でもない事が立て続けに起きないでくれると助かるけどなん」
「俺の意志でどうにかなるもんならそうしたいがこればっかりは予測出来ないからな。とりあえず一番最初に実感した粘度には戻っていると感じるから暫くは少なくとも心配は要らないだろう。登ってッみるよ今はただひたすらにッ」
喋っていて無駄に粘性を浪費する訳にも行かないので後半は喋りながら廊下の柱を登って行く。地球には登山と言う登頂時の晴れ渡る景色に心洗われるのを目指すミッション達成型の趣味が有る様だが、今の私はそれを強制させられている或る意味で逃げ場の無い非積極的な登山参加者だ、しかもその後に晴れ渡る景色どころか恐らく腸煮えくり返る所業のエリアが待っているに違いなく、本当は喜ばしい筈のシャボンの壁への接近につれ私の心音の鼓動はその演奏の激しさを増して行くのだった。
「むっ?」
明らかに今までと違う反応が飴廊下の柱から繰り出された。上方に行く手を阻む突起が生まれている、子供の言葉を借りるなら懸垂用のちょっと高めの鉄棒だろうか。避けようにもちょっと試してみた所私の進行方向に対応する形で追って来る仕様の様だ。いやしかしもしこの鉄棒攻略を失敗すれば地面は遥か下で、私の努力も水泡に帰する事になるのは目に見えている。細心の注意を払って私がこれに取り組まねばならないのは前提として、ここはローニャの助けが要る。
「ローニャ、悪い。この突起を超えて上に行く為にお前の力が必要だ。体を持ち運ぶ必要とまでは行かない筈だが、ちょっと体を持ち上げて貰えないだろうか」
「ふー、同じ円柱を登っててもまだこんな仕掛けが眠ってたんだねえ。分かったよ、力を籠めるタイミングを教えて?」
「そうだな、せーので行こうか。いいか? …せーのッ」
「ほいさッ」
二人三脚の協力プレイで私達はこの難局をクリアした。私は突起に足を置き、もう手の届きそうなシャボン壁の方を見る。これでひとまず飴廊下はクリアと言ってしまってもいいだろう。
「ひぃー、アームロック化と比べてあーし何も温存出来てないよー次が不安だなん」




