nAmBAr.01「もどかしさとユニゾン」
私が何となく違和感で目を覚ますと、いつの間にか偵察任務から帰還していたローニャに勝手に膝枕として機能させられていた事から来る不自由さがその正体だと気付いた。
「こいつ…」
私は寝起きの様相も手伝って一瞬怒りを覚えたがそれも直ぐに偵察を完了させたのだろう彼女への信頼、感謝へと変わった。彼女無しでは渡り歩けない。そんな時にどうして怒りなどと言う感情を発散して居られようか。
暫く枕としての立場を許していると、彼女は目を開き、起き上がった。
「ん…おはようニパ君。早速だけど、もう時間だね。頭の10の暴れ具合が激しい、こんな状況で大人しく寝てなんて居られないね」
「そうか、次から次へと忙しい事だ」
「まあまあそう言わないで。なんとかなるよ次だって、二人で力を合わせれば。前向きに行きましょ前向きに」
そう言いながらも彼女の拳は必要以上に強く握られていた。その拳を和らげてあげたいと、一瞬手を重ねたい欲が出たがそこまでする程変に深い仲では無いなと思い直した。また無駄に揶揄われてはせっかくの緊張感に差し障る。
「それはそうと、偵察は何の事も無かったのか?」
「あ、ごめん順序としておかしかったね。うん何も無さそうだったよん、と言うのも前回ほどは念入りにやらなかったせいも有るけどね。この頭の数字こそが羅針盤であると言うのはあのアームロック化、フレイムシュートの修羅の間で嫌という程実感させられたからね。ちょっとサボって愛しの枕の元に戻って来ちゃった」
「俺は愛用品クラスなのかよ…」
と、先程思い留まった事が正解だったのだろうなと改めて実感した。
「あはは。さ、次のスタート地点が洞窟の様な平和で優しい顔をしているとは限らないんで、今回も手は繋いどこう」
「え、あ、おう」
「あれ、なんか歯切れが悪いね」
「いや、何でも無いんだけどな…」
事務的な感じで目的達成となってしまったのに若干もどかしい気持ちにさせられつつ、私達は転移の時を待つ。そして…。
「来るね…10歳の扉を抜け出て、いざ、ユニバンのセカンドステージへ!」
そう盛り立ててくれる彼女の勇ましい掛け声と共に、私達は空間の裏返りをまたも経験する事になったのだった。彼女の手は温かい。心音がベースサウンドだと言うのであれば、彼女の温もり籠る手はその演奏を生み出す巧みの熱量を持った指先と言う事なのか、それともその生きる鼓動に歓喜するベーシスト兼オーディエンスの興奮の証なのか。少なくとも彼女のそれを感じ取る側の私は、一オーディエンスでしかない。それでありつつ、自分側の演奏も続けている、彼女の刻む生命のリズムに呼応させるかの様に、イメージを掻き立てられるかの様に。ともすれば独りでは終わってしまいそうなその演奏も、彼女とならいつまでも高らかに続けられる、そんな気がした。




