IF第72話 後の戦い
何故、封印が長く保たれたのかと言われてもシシラ達は困惑する。人間よりも上位の存在である天使の問にどう答えるべきか悩んだが、天使はクスッと笑って答えを出した。
『それは貴方がたが過去の戦いを何代にも渡って言い伝えてきてくれたからです。決してただの過去にせずに、大切な過去があって今があるのだと正しく教訓として残してくれたから、大悪霊の脅威から世界を今日まで守れてきたのです』
「「「「「…………!」」」」」
『ただ、人の手で大悪霊が復活した事実。それだけは残念に思いますが、また人の手で大悪霊討伐が実現したのも事実です。今日の戦いもまた語り継がれることになるならば、たとえ第二第三の大悪霊が現れるようなことがあっても十分対処できるでしょう』
「て、天使様、それはどういうことですか!?」
シシラは思わず声を上げた。ガミオ達も動揺を隠せない。天使の言うことが本当なら、また大悪霊のような存在が世界を脅かすかもしれないというのだから無理もない。
『大悪霊アポルターガイスト、その正体は人間の負の思念に悪魔の魂が結びついた存在です。肉体を失った悪魔の魂が人間の悪意を取り込み続けた結果が大悪霊なのです』
「そんな……!」
「大悪霊は、人間の負の結晶……!」
シシラ達は絶句した。あれだけ苦戦を強いられた大悪霊の正体が人間たちの悪意の塊だったという。……つまりそれは、人間の社会がある限り、また大悪霊が生まれる可能性もあるということだ。天使が言うことも分かる気がしてしまう。
「……今日の戦いが終わっても『全てが終わった』とするわけにはいかないのですね。細かいところまで未来に伝えていくまでが戦い」
『その通りです。最も、この後のことはシシラ、貴方達に任せても大丈夫だと思っています……』
天使の姿が透明になっていく。もう時間が来たようだ。
「天使様……」
『さようなら。貴方達の未来が、より良いものになることを願っています……』
天使は光の粒子となり、魔法陣の中に消えていった。
「ありがとうございます。天使様……」
この後、シシラ達は遅れてやってきた騎士団長達と合流した。彼らは魔物と成り果てた王子ユームと聖女アビスと戦っていたが、戦いの最中に二人が魔物から元の人間に戻ったため、シシラ達のもとに駆けつけてきたわけだ。
合流した後、大悪霊は倒したことを伝えるために、シシラ達は一度ジュンメウキ王国へと戻っていった。魔物になった影響で、廃人になってしまったユームとアビスを連れて。
……王子ユームと聖女アビス、この二人が正気を取り戻すことはなかった。




