IF第71話 戦いの後
大悪霊アポルターガイストは消滅した。封印どころか倒すことができたのだ。その事実にシシラとガミオ、仲間たちは歓喜する。
「だ、大悪霊は消えた! 本当に倒したんだ!」
「国も世界も救われたんだ!」
「おお……聖女シシラ様! 守護天使ビトール様!」
大げさにはしゃいだり涙を流したりシシラと天使を崇めたりと、シシラの仲間たちは様々な形で喜びを表現している。ただ、この男は喜ぶよりも前に確認することがあった。
「シシラ! 大丈夫か!?」
「ガミオ殿下、きゃっ!?」
「あ……すまない、また君が戦いの後で倒れるんじゃないかと思って……」
「わ、私なら大丈夫なので……」
ガミオは前の戦いの時のように、シシラが終わった後で意識を失って倒れると思い、心配して両肩を掴んでしまっていた。自分の行動にハッとなって頬を赤く染めて離れるガミオ。シシラも同じ顔で固まってしまう。そんな二人の様子をギューキは肩をすくめながら笑った。
『シシラ、いい仲間たちに恵まれて何よりです』
「て、天使様……!」
『わたくしを召喚した聖女達もそうでした。大した力はなくとも信頼できる仲間達と力を合わせて世界のために戦ったのです』
天使は懐かしむようにシシラ達を眺める。だが、その顔が少しずつ曇っていく。
『わたくしが不甲斐ないばかりに、大悪霊を封印するだけしかできなかったことは申し訳なく思っていました。封印ではいずれ復活すると分かっていたのに……。だからこそ、今回は完全に倒すことができて安心しました。シシラ、本当にありがとうございます』
「と、とんでもありません! 私達の方こそ、感謝しています!」
天使からお礼を言われてシシラは酷く恐縮する。まさか、天使に礼を言われるなどとは思ってもいなかった。感謝を尽くすべきなのはこちら側だとシシラは思っていたが、天使はこんなことまで始める。
『わたくしの感謝を込めて、戻る前に貴方達のためにできる限りのことを尽くしましょう。【エンジェルマジックビルド】』
天使の手が輝く。その直後、大地の割れ目から光に包まれた人達が浮かんでくる。なんと地割れの時に落ちてしまったガミオの仲間たちだった。浮かんできた彼らはガミオ達の側まで運ばれる。
「ああ、あれは落ちていった仲間たちではないか!」
「こ、これも天使様が!?」
『これで後で助けに行く手間が省けましたね。後はこの場所を直すだけ』
天使が指をパチンッと鳴らすと、荒れ果てた封印の祠はみるみる修復されていき、あっという間に元通りになった。アビスが倒して大悪霊が破壊した天使像まで元通り。
「も、元通りになりました……あっという間に……」
『天使像には封印以外の仕組みは元通りになっています。これで大森林の魔物による抑止は可能です。ただ……』
天使は死んでいった者達に目を向ける。彼らは綺麗に並べられた状態になっていた。決して生き返ったりはしていない。
『わたくしは決して死者蘇生はできません。残念ながら彼らのことは……』
「天使様、彼らは立派に戦った我が国の誇る戦士達。全ては覚悟の上で戦いの望んだのです。彼らの死を悼むその気持、……それだけで十分です」
悼む気持ちだけで十分というが、王族として彼らのことを深く知るガミオの悲しみは深い。握りしめた拳から血が流れるほどに。
『どうか、勇敢な彼らを手厚く弔ってください』
「勿論です。我が王家の誇りにかけて……!」
天使の死んでいった者達への気遣いにガミオは感謝を込めて礼を尽くす。その直後、天使の姿がぼやけ始めた。
『……名残惜しいですが、わたくしも戻らなければならないようですね。その前に、ここにいる皆様に伝えておきます』
天使が最後に伝えることがある。その事実だけでシシラもガミオ達も酷く緊張する。きっと相当重要なものに違いないと誰もが思ったが、天使は笑顔で語った。
『封印ではいずれ復活すると分かっていた……と言いましたが、わたくしの予想よりもずっと長く封印は続いていました。それは何故だと思いますか?』




