IF最終話 未来へ
大悪霊が天使とシシラ達によって倒された。その報告は、ジュンメウキ王国とバッファロード王国の両国を騒がせた。また、ジョケア・ジュンメウキ国王の声明により、大悪霊を復活させたのはジュンメウキ王国の王子とその婚約者だったことも公にされ、両国とも混乱に陥ったが、同時に聖女シシラの偉業が両国の民に知れ渡ることになる。
「シシラ嬢、この度は本当にありがとう! そして、我が国で受けた不当な扱いの数々にはいくら謝罪しても足りないが、本当に申し訳なかった!」
「そんな、頭をお上げください国王陛下。貴方は、」
「そなたを不当に扱った男の父親でもある! 先日、実刑判決を受けた王子のな……」
シシラに感謝と謝罪するジョケアは何十歳も老いてしまった顔をしていた。両国と世界を救ったシシラの存在は国王でさえ頭が上がらない。何しろ、実の息子が王族でありながら、王太子失格に飽き足らず大悪霊復活と魔物化という大罪を犯したのだ。遂には廃人のまま死刑判決、歴史上最悪の犯罪者というわけだ。
「ユーム王子のことは本当にもういいのです。もともと価値観が合わないと思っていましたから」
「しかし……」
「それを言うならば、ユーム王子とともに死刑になったアビスは、半分でも私と血のつながった姉妹です。決して中の良い姉妹ではありませんが思うところはあります」
「……」
国王は黙る。というよりも掛ける言葉が見つからない。アビスが聖女という立場をいいことにシシラを虐げていたことを思うと気軽に励ますようなことも言えないのだ。そのアビスもユームと一緒に死刑になり、アビスのことでアリゲイタ夫妻は爵位を剥奪されて平民となった。そのことにシシラの気持ちはどうなっているのかはシシラ以外分からない。
「今は悪魔に害されたこの国のため、大悪霊と戦って戦死した戦士の遺族のために最善を尽くす事が大事です。そのためにも陛下には私に対する謝罪よりもやるべきことが多くあるはずです」
「……そうであるな。だからこそ、これ以上そなた達に頼るわけにもいかない。残った者達も今と未来のために尽くしている。私はその先頭に立たねばならぬ」
ジュンメウキ王国もバッファロード王国も未来に向かって動いていた。ジュンメウキ王国では新たな王太子に第二王子キミル・ジュンメウキが選ばれ、ユームの側近だった二人は王宮で働いている。
バッファロード王国では、ギューキが犠牲となった戦士達の遺体を国に運ぶために戻っていったことで彼らの弔いのための葬式の準備が行われ、教会では新たな聖女伝説の作成に取り掛かっているという。
「私達の戦い、使命はまだまだ残っています。名残惜しいですがもうそろそろバッファロード王国に戻ります」
「聖女シシラ……どうか、バッファロード王国で達者でな……」
シシラはバッファロード王国へと帰る。準備された馬車には友人であり愛する男が待っていた。
「シシラ、もういいのか?」
「はい、ガミオ殿下」
シシラはガミオの手を取って馬車に入っていく。その直後、馬車が動き出した時に後方から声がかかって。それも大勢の。
「「「「「シシラ様ー! 今までありがとう!」」」」」
「「「「「聖女シシラ様! ありがとうございます!」」」」」
「「「「「偉大な聖女様! シシラ様万歳!」」」」」
「「「「「シシラ様ー! 行かないでー!」」」」」
「「「「「また来てくださーい!」」」」」
シシラがガミオ達とバッファロード王国に帰る際に、多くのジュンメウキ王国の国民たちから感謝の叫びを受けた。中には引き止める言葉やまた来てほしいような言葉も含まれたが、シシラはこれからもバッファロード王国の聖女として生きるつもりだ。
「不思議なものですね。かつて家と学園で虐げられた私が今、こんなふうに感謝されるなんて……」
「そうだな。だが、この国の残ってもらうわけにはいかない。俺が、シシラを幸せにするんだからな……」
「ふふふふ」
シシラとガミオはすでに互いの気持ちを伝え合っていた。聖女とか王子とかは関係ない。互いを大事な人だと思い合っていたのだ。
そして、十年後のこと。バッファロード王国で王子と聖女が結婚して国を支えていくこととなった。
終わり




