IF第66話 魔物化した二人
「あれは聖女アビスにユーム殿下!?」
十面オーガにユーム、サメの魔物にアビスが取り込まれていたのだ。
「あいつら、魔物に取り込まれていたのか!?」
「皆さん、きっと二人は大悪霊の手で魔物に変えられてしまったのです!」
誰よりも聖女伝説に精通しているシシラは、アビスとユームが大悪霊によって魔物化されたと見抜いていた。つまり、魔物にしてシシラ達の行く手を塞ぐ尖兵にされたわけだ。
「なんという……借りにも王族と聖女でありながら、大悪霊の復活に加えて魔物にされてしまうなど……!」
「ああ……こんなことならあの二人の軟禁を徹底しておけば……!」
「くそ! あの馬鹿王子がっ!」
「あんな王子の側近だったなんて……!」
シシラ達と一緒に来ていた騎士団長と宰相が嘆く。その息子たちも同じように悔やむが、今はそれどころではなかった。魔物たちが攻撃を始めたのだ。
「ウオオオオオオオオッ!!」
「ガオオオオオオオオッ!!」
十面オーガが周りの岩や木を投げつけ、サメの魔物が口から弾丸を放つ。極めて強力な攻撃だが、シシラの周りにいるのは精鋭の騎士と魔法使いたちだ。
「シシラの守りを固めろ!」
「「「「「【ジャンボウォール】!!」」」」」
「「「「「【バインド】!!」」」」」
「【パラライズシュート】!」
魔法使いたちが結界を張って攻撃を防ぎ、魔物を魔法で拘束したり麻痺させる。精鋭の魔法使いが揃えば強力な魔物でも上手く戦えるのだ。
「シシラ様! ガミオ殿下! ここは我らが引き受けます!」
「バッファロード王国の戦士たちと共に大悪霊を封印してください!」
「この馬鹿王子と馬鹿聖女は俺達が引導を渡す!」
「元側近として最後の仕事をします!」
騎士団長と宰相がシシラに向かって叫ぶ。更にその息子たちも同じ気持ちだったため、似たようなことを叫んだ。
「そ、そんな! 貴方がただけで、」
「シシラ! 彼らはジュンメウキ王国の生き残った実力者たちだ。そう簡単にやられることはない。今は信じて先を行こう!」
「わ、分かりました。皆さん、どうかご武運を!」
シシラも状況を理解しているので、ジュンメウキ王国の実力者達に二体の魔物の相手を任せて先に進むことに同意した。
「さて、相手をしてもらおうユーム殿下」
「あの時、貴女にとどめを刺しておくべきだったかもしれませんな元聖女様?」
「俺達も行くぞフォティン」
「分かっていますよタイーガ」
「ウオオオオオオオオッ!!」
「ガオオオオオオオオッ!!」
異形の魔物に変貌した王子と聖女、大義を背負った騎士団長と宰相とその息子たち。彼らの複雑な気持ちのこもった戦いが始まる。
◇
大森林の中心――封印の祠に近づくにつれて、シシラは邪悪な何かを感じ取っていた。おそらくは大悪霊のものだろうが、それとは別の気配も感じていた。
(……このおぞましい気配、悪魔をも超えている。それとは別に何か大勢の……でも、数が減ってきている?)
大悪霊の側に多くの気配がいることに気付いたシシラは、あることを思い出してゾッとした。
「まさか……これは人? バッファロード王国の……!」
シシラの悪い予感は残念ながら的中することになる。




