IF第65話 敵の尖兵
シシラの放った光の竜巻は森の奥へ進みながら魔物達を振り回す。だが、森の奥から放たれたであろう大きな黒い弾丸が光の竜巻を打ち消してしまった。
「フンッ、どうやら聖女のようナノダ。光属性の魔法の聖女、だが、その力は極めて強大……お前たちの記憶通り危険な存在ナノダ」
「「……、……」」
森の奥で、人形をなす黒いモヤ――大悪霊が二人の人物に話しかける。その二人の人物はアビスとユームだった。二人は虚ろな目で大悪霊を見据えながら何も答えない。ただ、そんな姿を大悪霊は愉快に思っているようだった。
「クククッ、かつてワタシを封印した聖女を輩出した王族がこれとは……しかも、聖女の片割れがこんなざま……愉快で笑い転げそうだがそんな場合でもないノダ……」
大悪霊は黒い弾丸を放った先を見る。その先には光属性の魔法の聖女――シシラがいる。大悪霊は二人の記憶を読み取ってシシラという脅威をあらかじめ知っていた。間違いなく一番の脅威になる存在だと。
「悪魔と戦った跡だと言うのに、こんなに早くワタシをもう一度封印しに来るとは面倒な……だが、今のワタシにはお前たちがいるノダ」
大悪霊はアビスとユームの頭に触れる。その直後、大悪霊の真っ黒な魔力が二人の体を包んでいった。
「あ、あ、あ…………!」
「う、うあ、ああ……」
「さあ、存分に暴れてくるノダ。ワタシの配下として聖女とその配下を苦しめるノダ!」
二人は歩き出す。歩きながら異形へと姿を変えていく。大悪霊の思惑通りシシラに害をなすために。
「周りに迷惑をかけ続けた愚者は最後まで迷惑な存在になるノダ、クククッ。……さて、ワタシも後ろの方で遊んでやるノダ」
大悪霊は後ろを振り返る。シシラ達以外にもここに来るであろう勢力がある。自ら相手にするつもりだった。
◇
光の竜巻によって森への道のりはだいぶ省略されていた。シシラを乗せた馬車が進みやすいくらいに。だが、その途中で光の竜巻が消されたとシシラは感じた。
(何か大きな力が私の魔法を打ち消した……これが大悪霊の力……!)
光の竜巻には相当な魔力を込められていたはずだった。それを打ち消したであろう大悪霊の力にシシラをかつてない戦慄を感じたが、それでも先を進む足を止めるつもりはない。自分と仲間たちにはその恐怖の根源を封印する使命があるのだから。
そう思った直後の出来事だった。馬車が急に止まった。遂に大悪霊が現れたのかとシシラは思ったが、大森林の中心にまだ着いていなかった。
「っ!? 何事です!?」
「シシラ様、魔物です! 二体の巨大な魔物が現れました! 未確認のの魔物です!」
「なんですって!」
シシラ達の行く手を塞ぐかのように大きな魔物が二体も現れて立ちふさがったのだ。シシラが馬車から出て見ると確かに今まで確認されていない魔物だった。
「ウオオオオオオオオッ!!」
「ガオオオオオオオオッ!!」
体中に頭をいれて十面の顔があるオーガとワニの四肢と肌を持つ大きなサメの魔物。しかもその魔物たちの額にはシシラ達のよく知る二人がいた。




