IF第64話 二つの指輪
ジュンメウキ王国とバッファロード王国に迫りくるショーツカ大森林の魔物たち。それらを迎え撃つために全戦力で防衛しつつ元凶であるとされる大悪霊を封印する。ただ、ジュンメウキ王国は先の悪魔との戦いで兵力を半減させたうえに回復ポーションが大きく不足していたため、序盤ではシシラの魔法と魔法使い達を頼ることになる。
「来ましたね、大量の魔物たちが……!」
「ああ、シシラ……できるのか?」
「はい。任せてください」
シシラの側にはガミオと仲間たち。そしてジュンメウキ王国側の魔法使い、それも回復に長けた者たちがいた。彼らの視線の先には大森林から出てきたであろう大量の魔物たち。
「聖女様! もう来ます!」
「シシラ様へのバフ、完了しました!」
「今です! 【トルネードフォトン】!」
魔法使いがシシラにバフを掛ける。そして、シシラの周りから光の粒子が溢れ出し、それがシシラの前に集約すると魔物たちに向かって放たれ巨大な竜巻を形成していった。巨大な光の竜巻は多くの魔物を飲み込んで振り回し、そのままの勢いで森の中にまで入っていった。
「す、すごい……あんなにいた魔物たちが全部……って、シシラ!?」
「はぁ、はぁ……」
「回復魔法を急げ! 魔法使いたちは魔力を惜しむな!」
ジュンメウキ王国ではシシラが大規模な魔法で魔物たちを一掃し、大悪霊までの道を作る。疲弊したシシラは魔法使い達に全快まで回復させる。それが序盤の作戦だ。
「私はもう大丈夫です。先へ進みましょう」
「いいのかシシラ? あれだけの魔法を撃ってもう魔力まで戻ったのか?」
「はい。聖女の指輪を二つも身に着けていると不思議と力が湧いてくるのです」
シシラの指には『聖女の指輪』があった。それは聖女に選ばれた者が身につけることになる指輪であり、聖女の証でもあった。初代聖女の持ち物であり、聖遺物とされている。
この聖女の指輪を身につけることは両国で決まっている風習なのだが、何故かシシラは二つも身に着けている。片方はバッファロード王国でシシラが受け継いだものであり、もう片方はジュンメウキ王国でアビスが身につけるはずだったものだ。
「まさか、アビスが聖女の指輪を付けることさえ怠っていたなんて……」
「あの女らしいことだが、今回はそれがシシラの力になったということか?」
「はい、普通はおかしいことですが、指輪のおかげな気がします」
シシラはここでもアビスの不甲斐なさに苦笑する。しかし、本心ではこの指輪が王国に残っていたままで良かったと思っていた。力が湧いてくるというのは本当のことだからだ。
この指輪が後になって大きな意味をなすとはこの時のシシラは気づいていなかった。
「よし、では先へ進もう。馬車の用意を!」
シシラは馬車に乗り込む。この馬車は、極力シシラを疲れさせないための配慮でありシシラを守る防壁になるように即席で改造されたもの。魔物がいなくなった道をガミオ達とシシラの乗る馬車が進んでいった。
彼女たちの進撃に大森林の奥に潜む大悪霊はいち早く気づいていた。




