IF第63話 二人の国王
魔道具からの声に聞き覚えがあったガミオは直ぐに反応した。その声は自分の国の国王であり父のものだからだ。
「父上!」
「バリスタか……」
通信魔道具からの声はバッファロード王国の国王バリスタ・バッファロードのものだった。
『貴様の息子の不祥事は最悪だ。おそらく両国の歴史上最大の罪とも言えるだろう』
「……ああ、本当に最悪だ。先祖に顔向けできん……私はもうどうすれば……」
『だが、それと同じくらい最悪なのは父親であり国王である貴様が絶望して俯き続けることだ』
「な、何……!?」
『子の不始末は親の責任だ。その責任を取るのも親の務め。今の貴様は絶望するばかりで何もしようともしない。親子揃って十分最悪ではないか。笑えるな』
「……ッ!」
バリスタの声には魔道具越しにも嘲りが混じっていた。まるで煽るかのような口調にジョケアは怒りをあらわにする。
「だ、黙れ! 我が子が最大最悪の不祥事を起こし、そのせいで国と世界の危機になってしまった負い目を背負う私の気持ちが分かるものか!」
『ああ、誰も分かりたくないな。愚かな親子になるなんて』
「ああ、そうだな! 私もユームも愚かだ……! あいつを真っ当な王子にできなかった私の愚かさが……!」
『……どうやら今の貴様ではこの件で何もできそうもないようだな。誰か他のものに国の指揮を任せたほうがいい』
「何だと! そんな必要はない!」
ジョケアは立ち上がって叫んだ。その顔は先程まで絶望して人生を諦めたような顔ではなかった。むしろ目をギラギラ輝かせて決意に満ちた真剣な顔だ。魔道具を睨みつけながらジョケアは更に叫ぶ。
「私は親である前に王だ! 王として国を守るために大悪霊と戦う! そして、我が愚息にこれまでの罪のケジメをつけさせてみせる! 私の命を懸けてでも!」
『……ならばどうする?』
「我が国の残った戦力と貴国の戦力を結集させて大悪霊と魔物達に立ち向かう! 皆の者、一緒に戦ってくれ!」
ジョケアは家臣たちを振り返る。そこにはジョケアの叫びに触発されて士気が上がった文官に武官の者達の姿があった。
「「「「「勿論です陛下!」」」」」
「「「「「共に大悪霊と戦いましょう!」」」」」
「よくぞ言ってくれた!」
『ふん、やっと立ち上がったのか間抜けめ』
「お前……貴殿には感謝するバリスタ国王。早速だが、対策会議を再開しよう」
『勿論だ、ジョケア国王』
こうして両国の国王と重鎮達によって、迫りくる大森林の魔物と復活したと思われる大悪霊に対抗するべく会議が行われた。ただ、こうしている間にも魔物たちが両国に迫ってきており、しかもジュンメウキ王国の戦力は半減している。そこで重要になるのは聖女であるシシラだ。
「私が大悪霊と直接立ち向かいます。もう一度封印するためにも聖女である私が封印の術を掛けなければなりませんもの」
「シシラを守るためにも俺は一緒に行く! 俺もここにいる仲間たちもバッファロード王国の強き戦士だ!」
『……どうせ止めても行くだろうから異論はないぞ。存分に戦うがいい我が息子よ』
「シシラ嬢……そなたにはつくづく頭が上がらない。国と世界の未来までもそなたに託すことになろうとは……」
会議は予定していたよりもシンプルな作戦を立てて早く終ることになる。聖女シシラとともに大森林の中心にいる大悪霊のもとへ目指すというものだ。




