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白い花弁の花

俺は古民家近くに設置していた簡易な装置を起動し、大きな袋を持って、急いで村長宅近くの馬小屋へ馬を走らせる。


その馬小屋には騎士たちの連れてきた軍用馬がいるのだ。


まずは彼らの足を無くさねばならない。




村長宅近くの馬小屋に近づくとやはり人がいた。


「こんばんは」




俺は馬から降りながら、軍用馬の世話をしている騎士に話しかける。




「こんばんは、用は何だい?」




騎士はわざわざ兜を外し、俺に話しかけてくる。


宴会で話しかけてきた騎士の言った通り、この任務に就く騎士は優しい人間が多いらしい。




「いえ、せっかくですから馬にも豪勢なものを食べて欲しくてですね。俺もこの村に二つしかない馬小屋の一つを任されているんですよ」




実際は面倒だからと村の連中に押し付けられた仕事だが、この騎士に親近感を持たせるよう内容を盛って話す。




「あぁ、それでその袋か」




「えぇ、燕麦です」




「いいのかい?これも君たちにとって重要な食糧なのだろう?」




「はい、ですが今日は祝いの日ですので。それに、結構好きなんですよ、馬」




俺は乗ってきた馬の鼻を優しくなでてやる。


馬はぶるると鼻を鳴らす。




装置の発動に時間がかかっているようだ。




「いいね、私もこの子らに命を守られたこともあるしね」




「そのことについて詳しく聞かせていただけませんか!」


俺は興味のある振りをして、騎士の自慢話を引き出す。




クソ、まだ点かないのか。




そう思っていると




「おや、あれは何だろうね」




騎士は自慢話を中断し、村の民家の方を見る。


どうやらうまくいったようだ。




「あれは、火事です!」




俺は驚いたふりをする。




「なんだと。だが、私はこの馬たちの世話をしなければならないからね。それに、私ではなく水魔法の使える騎士が向かうだろう」




水魔法の騎士がいるのか。クソ、誤算だった。




だが諦める訳にはいかない。




「水魔法を使える騎士様は何人ほどいらっしゃるのですか?」




「あぁ、一人だが」




なんだ、たった一人か。




「その方だけで、これから足りるとは思えません」




「それはなぜだい?」




「この村の民家は藁や木材が多く使われています。俺が恐れているのは延焼です。火の粉というのは遠くまで飛びます。その火の粉で複数の民家が燃えたとき、騎士様一人では対処が難しいでしょう」




「それもそうだね。だが、それも私が行く理由にはならない」




どうやら、俺がこの騎士を火事場へ向かわせたがっていることは見抜かれたらしい。 だが、その本当の狙いまでは気づいていないだろう。




「俺はその火の粉が、馬小屋、ひいては村長宅に飛び散る可能性があると考えています」




「ほう」




彼はこちらの目を、覗き込むように見る。




「村長宅には勇者であるエリナ様がいらっしゃいます。村長宅の安全を確保するために、今すぐにでも火を止めなければなりません」




こちらもそれに応じて見返す。




「そのために私に出向けと?」




「消火をし、村長宅や馬小屋の安全を確保するのが最善だと思います」




あくまで俺は彼に指示は出さない。いくら彼が優しいとはいえ、不興を買ってはならないのだ。




「だが、それでも私はこの持ち場を離れるわけにはいかないね。第一、馬の世話をしなければならない」




「馬の世話は俺がします」




「君がうまく世話をする保証がない」




「俺は八年間、馬を飼育しています」




「軍馬の世話はしたことがないだろう?」




「ええ。ですが、馬の扱いには慣れています」




騎士は俺が乗ってきた馬に目を向ける。




「確かに、君の馬はよく懐いているようだね」




「はい。少なくとも、餌やり程度で困ることはありません」




騎士は少し考え込むように黙り、火の手が上がる方角へ目を向けた。




「……分かった。ただし、何か異変があればすぐに人を呼ぶんだよ」




そう言って彼は兜をかぶる。




「ありがとうございます」




「どうだろうか、君さえよければわが父の領地で働いてみないかい?」




「この件が終わりましたら是非」




「あぁ、また話そう。馬は任せたよ」




そう言って彼は鎧を着ているとは思えないスピードで走り出す。


馬を使わなかったのは、火の近くになるべく馬を近づけたくない、彼なりの優しさなのだろうか。




「任せられましたよ」




彼には聞こえないだろうが、俺はそうつぶやく。


彼が民家の近くまで行き『あれ』を見た時、何を思うのだろうか。




俺は、ハルトと話している時に持っていた花の根を燕麦に混ぜ、軍馬の前に順番に出す。




餌やりは慣れている。


なにせ八年やってきたのだ。どうすれば馬が警戒しないか、俺は熟知しているのだ。




「すまないね」




軍馬は俺を信頼したのか、花の根入りの燕麦をむしゃむしゃと食べ始めた。

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