表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔殺しは剣を継ぐ  作者: 芥川りゅうくん
ラビリンス攻略・フューリ島編
5/7

004 穢れた心臓

「ミケはヤツ(ブルース)のお気に入りで二番船船長の座に就いたんだ」

「あのまま生きていたとしても、どこかで利用されていたかもしれない」


「あぁ…」


「しかし」

「お前、まさかあそこまで強かったとはな」

「度肝抜かれたぞ。」


「自分自身、なんでああなったかよくわかってねえんだ」


「まぁ、俺の助けがなかったらお前は死んでいたがな」

(こんなバケモンと決闘なんてしなくて良かった…)



「にしても」

「こんな部屋があったとはな」


イェランが部屋の隅で壁を見つめながら呟いた。


「船長なのに知らないのか」


「俺はこの船では新参よりの方だ」

「でも、ほとんどの船室は把握していると思ってた」


「そういうもんなんだな」


「あぁ…」


「殴りまくって悪かったな」


「ふん」

「お前のせいで俺は下手に喋れないぞ」


「わかった、外に出れたらすぐにあの女に魔法を解かせる」

「…次は制圧できるかわからないけどな」


「あの女もここじゃないけど、牢の中だぜ」


体勢を直し、溜息混じりに言葉を吐いた。


「…まあそうか」


「お前が『俺の女にする』って言うからお情けで投獄されずに済んだんだ」

「お前が投獄されちゃ元も子もないだろ」

「ったく、今から遺跡の牢獄に向かうって言うのに俺たちが先に投獄されてたら世話ないな」


こいつ、最初と随分印象が変わったな。

言ってることも全部真っ当だ。話したら意外と分かり合えそう。


その時、鉄格子の奥に海兵がいた。牢の中は暗いので、外の光に目が慣れるのには随分時間がかかった。

徐々に、海兵の体のラインが露わになっていく。胸と尻のあたりが膨らんでいて、髪がボブヘアの…

待て、ぼぶへあ?なんだ?その単語…


いや、それよりこの女……


「お前か!!!!!!!!!」


飛び上がり、鉄格子に何度も頭を打ちつける。


「残念だったわね」

「お友達のこと」


「お前が矢を放った女だな…!!!!!」


ミケを殺した。コイツがミケを殺した。


「脱走者に相応の罰を与えたまでよ」

「私の手柄。」


挑発するような仕草を見せる。



ブチ殺す



「落ち着け!!」

「メイルー、やめろ!!」


イェラン、止めるな。


「あら、誰かと思えば元四番船船長のイェラン様じゃない」


「二つも席が空いちゃった…さぁ、どの船にしようかしら」


「貴様…」

「アルテナの誇りにおいて貴様を殺ぉす!!!」


今のを聞いて、イェランもやる気みたいだ。


「《ブラックマンバ》!!!!」


「…え?」


何も起きない。


「《ブラックマンバ》!!《ブラックマンバ》!!!」


「ムダよ」

「あんたら魔力はこのタマタマん中に閉じ込めちゃってるから」


「なっ、」


イェランはどういうわけか口元を抑えて俺の方を向いた。

何だ?


「骨の髄まで吸い尽くしてやるわ」


そう言ってエリクサー玉をチラつかせた。


「チッ…!」

(イェランがなす術もない…いつの間に魔力吸収を展開していたのか!)


鉄格子がなければ今すぐにでも撲殺してやる。

そうだ。俺の剣、どこだ?!どこにやった!!

畜生、あの女どっか行きやがった!!クソ!!!クソ!!!!!!クソ!!!!!!!





「釈放だ」


「へ?」


久しぶりの客人。鉄格子の前に、誰かと思えば提督ブルースがやってきた。前に比べて、日焼けしていた肌がだいぶ白くなっている。

自分が放った大技に巻き込まれなかったのか。底が読めない男だ。

と言っても、釈放…??三日間イェランとだべって暇を潰してた俺にとっては、魅力的な響きを含んでいた。

それはコイツも変わらないだろう。


「釈放!?本当か!!」

「俺の地位は…」


「約束しよう」

「お前は四番船船長の座に戻す」


「そしてお前の処遇だが」

「クアトラ、伝えろ」


「は」

「マフィット•メイルーとブライツによる決闘を制したした両者のうち一方を二番船船長とす」

「そして、どちらかが決闘を拒んだ場合、相手に船長の称号を与える。」

「この場合代理人は…」


長い。

要するに、殺してイイか聞いてはいと答えたら殺す、ただそれだけのことだろう?

俺はもう動き出していた。ブルースの隣を横切ると、俺を止める様子もなくただ見つめていた。

船底から駆け上がり、久しぶりの朝日を浴びる。


居た。


すぐそこだ。相手は、デッキの上で俺を視認すると信じられないといった顔で逃げ出そうとした。

逃すわけがない。

俺は懐から毎晩取っておいた串焼きの串を取り出して、女目掛けで強引に振るう。


数秒時間が経った。

串は…ギリギリ当たらなかったようだ。そうだ、怒りに任せていたが、先に決闘を受諾させなければ。

奴が腰を抜かしている間に、俺はすぐデッキの上に飛び移り女の上に跨る。


「やめっ………!!!!!!!!」


「決闘だ」


「今ここで決闘し、勝った者が二番船船長の座を獲得する」


「……!!!」





「両者の決闘をここに開始する」

「立会人はエイジャ•オラ•ブルース、ハイディナ=ドールマン」


嫌に空が綺麗だ。雲一つない晴天。


「お互い死ぬまでやるか、降参したらそこで終了だ」


「では…」


オルデ(始め)!!!」



相手はクロスボウ、エリクサー玉に対してこっちは串と短剣。

クルおじさんの剣じゃないとどこかおかしい。慣れてないというか、神経が繋がっていないような。

剣と一心同体になれない。この短剣は今無機質な鉄の塊でしかない。


クロスボウが放たれた。

狙いが定まっていないようだ。俺は容易く矢を避けた。

そのまま女の背後にまわり込み、懐から串を取り出し相手の足の腱に向かって二本、正確に投げた。


ヒット。女は音を上げてその場に崩れ落ちた。

エリクサーの魔力を使わせる前に、俺はすぐ間合いを詰めて短剣を喉元に添える。


「…しろ」


「!?」


「降参しろ」


駄目だ。何を言ってるんだ?俺は。殺すんだろ。


「早くしろ…!」


焦り一つだった女が、急に弱みを握ったように表情を変える。


「降参?いやよ…今更」

「殺すなら殺してよ!」


「…!!!」


短剣が女の喉に少しずつ埋まっていく。

血が滲み、また音を上げる。


そうだ、俺、殺すんだ!!!当たり前だろう?!

今更なんの情けをかけるつもりだ?!!


「〜〜〜〜!!!!」


太陽の光に照らされて、甲板の木材が嫌になるくらい美しく見える。

あれ、くそ…今になって、涙が…


「…!」



「待って!!」


女だ。…ミリナ?そうか、俺に合わせてあの女も釈放されたのか。

徐々にこちらに駆け寄ってくるが、立会人に阻止される。


「おっと嬢ちゃん、いくら関係アツアツだからって決闘に口出しするのはやめてもらお──」


「ふんっ!!」


「どぐうぇあっ!!!!」


すごい音を上げてドールマンがぶん殴られた。

俺が言うのもなんだが、不憫な奴だ。


「チッ…」


邪魔が入ったな。これじゃ、殺す以外に決着が…

ふと、溜息が聞こえた。視線を戻すと、女が諦めた顔で目を閉じていた。


「降参」

「聞こえてんの?!降参よ!!」


「聞ごえてましゅ…」

アビデ(終了)


地面にへたり込みながらドールマンが終了のコングを鳴らす。

決闘は終わった。俺の勝ちだ。


すると、ヤツ(ブルース)が歩み寄ってくる。


「おめでとう」

「二番船船長ブライツ」


ブルースがほくそ笑み、俺に形見の剣を返してくれた。

剣は貴重品庫で厳重に管理していたらしい。

抑えられない喪失感を感じると共に、不思議と気分が晴れやかだ。俺は今女を殺さなかった。なぜ?

結局甘いのか?俺は。


ブルースが迫る。俺の耳元に口を寄せた。


「期待してるぜ」

「ブライツ…」


鳥肌が立った。気持ち悪いからとかではない。圧倒的な威圧感と、剥き出しの狂気。

しかし、それは作り物のような声だった。まるで無理をして道化師(ピエロ)を演じているようだ。

また俺は、亡き故郷で母と見た劇を思い出す。


その時、ドールマンが軽く吐血を拭い意味深に、俺を睨むように見つめていた。



二番船に案内された。今日からこの船は俺の船だ。


「この船はお前の好きなように使え」


「船員は15人。仲良くしろよ、同僚くん」


ドールマンがそう言い残して、船を去る。

しかし、実感が湧かない。15人…


「俺見たぜ!?なんだあの動きと剣捌き!!」

「お前さんタダもんじゃねえだろ!!」


「ホント、青二才ってみくびってたぜ?!!」


「テイクソンに一太刀入れちまうとはな!」

「アンタ、正直言ってバケモンだ!!」


おお。

…おお。悪い気は…しない。


「俺はその、船長室に行かせてもらう」

「話は後だ」


「なぁ、俺に剣を教えてくれよ!」


「その強さの秘訣を教えてくれ!!」


「イリニの生活はまだ夢に出ますか?」


??!!


「お前…」


俺の出自を知っている?!


「かねてより貴方のことはハイディナさまから聞いております」


ハイディナ…ドールマンからだと…!!


「申し遅れました、私はハイル•ザビアン」

「五番船ドールマン隊から異動してきたものです」


「あの…なんだ、その妙にかしこまったお辞儀」


「ボウ・アンド・スクレープでございます」

「貴方様は高貴なる血筋を引くお方…おい!ものども、礼儀を弁えろ」


なんだ?こいつ。所作も態度もいちいち気色の悪い野郎だ。

いきなりわけわからんことをマシンガントークされても困るぞ…

マシン…ガン……?なんだ?

…畜生もう休もう、最近俺変だ


「…ハイディナさま」


「あぁ」


船を去ったと思われていたドールマンが海中から這い上がる。



「ものども下がれ」


14人の海兵たちはつまらなさそうにその場を後にし、続々船内に戻りブライツを探し始めた。


「この前の太刀筋からわかった」

「ショーマッカー殿は一日も鍛錬を休ませなかったらしいな」

「確実にあの人の手癖が染み付いてやがる」


「後進の育成も抜かりなくやっていたと」


「いや」

「あの人は自分の養子を戦地には送りたくねえはずだ」


「自衛のために教えていたのでしょうか」


「さぁな、俺にはあの人の心はちっともわかんなかった」

「ずっと隣にいても、手の内を全く見せてくれることはなかったよ」

「だが彼のおかげで、今の俺がいる。すげえだろ?ここの筋肉よ」


袖を捲り、腕に力を込める。


「あのショーマッカー隊で急先鋒(切り込み隊)をやっていれば、そうもなるでしょうね」


「へへっ」


「彼の地での先生の活躍は後世に名を残すでしょうね」


「…………………………」


突然目つきが変わる。


「はっ!!」


「申し訳ございません…!!」

「配慮に欠けた言動…自戒致します!!!」


「いや」

「気にしなくていい」

「全部俺の過失だ」


「いいえ、真に追求されるべきは貴方様ではなく…」


「やめてくれ。もう思い出すだけでも辛いんだ」

「やはりブライツ…あの子は戦場に駆り出すために育てられた子ではない」


「お変わりになられたのですね、先生も」


「少なくとも、あの日以来はな」

「ま、何はともあれしっかりあいつのこと監視してくれよ」




あー…

性懲りも無くドアの前で大勢出待ちしやがって

少し頭の中を整理したいんだ。もう構わないでくれ


「ごめんくださーーい!!」


「ブライツさん!!」

「シラカバネウオの串焼きです!ドアを開けてくださーい!!」


まじでなんなんだよ…

俺はしょうがなくドアを開けた。

すると、幼い声によく似合う童顔の海兵が現れた。


「船長着任おめ…」


「バカ、お前ブライツさんはご友人を亡くして心傷なさっているのだ」


「あ、…おほん、僕はハヌルディと申します」


「…」


気まずそうにして顔を見合わせている。…俺を気遣っているようだ。

ゴロツキばかりだと思ってたが、意外と可愛げのある連中なのかもしれない。


「ブランツォ様が死去なされてから積荷も掻っ攫われてしまいまして…」

「し、しかし!シラカバネウオは大変貴重な食材で、是非とも新しい船長様にお召し上がりいただきたいと…」


「いいのか?」


「え、えぇ!いいですとも!!」


今まで拗ねた態度を取っていた。

他の海兵や船長達に舐められず、遅れを取らないよう。

しかし俺は既に目立ちすぎた。しかも不覚として二番船船長の座も得てしまった。

しかし、全ては俺にとって好都合だった。


だが俺と他の船長格とでは圧倒的な実力差がある。当たり前だ。

しかし、あの一瞬だけ、あの瞬間だけは完全にブルース以外の船長を圧倒する力を持っていた。

あの時の、漲る感じ。あの感じを常時キープできれば…


「召し上がって下さらないのかな」


何やら連中は仲間内でボソボソ話し合っている。

しょうがない、食ってやるか。


「うん、美味しい」


ははぁ、これはまた美味で…

白身魚特有のサッパリ感と、プリプリした身。いくらでも食べれる。

んー、思わず舌鼓を打ってしまいそうだ

白樺と屍をかけた悍ましい名。しかし、どうしてこんなにも美味なんだ…

ん?

これ


毒!!!!!



そう気づいた時には遅かった。


「でやぁあっ!!!」


ハヌルディの童顔が豹変し、隠し持つ短剣で襲いかかってきた。

俺も咄嗟に抜いた形見の剣で応戦する。

二つの刃物が鍔迫り合い、激しく火花を散らした。


「ぬおおお!!?」


「死ねええええええええ!!!!!」


押しが強い!!その見た目からは想像できぬ怪力だ!!!

こいつやっぱり俺が後釜になるのが嫌なのか?!

ミケに対してもこいつら…くそッ!!


「ぐうっ!!!」


刃物を弾き返す。


「ハァ、ハァ、」

「すぅーー…」

「突然のご無礼お許してください!!!」


ん?


「手合わせありがとうございます!」


「まさかこの奇襲に対応するとはなー」


「やはりブライツさんはお強いお方だ」

「な、マシェド」


隣にいた糸目のアホ面が頷いた。

こいつら、実力を試してやがったのか!?可愛い顔してやっぱりあの鉄仮面の部下だ…!!

俺がバカだった!!ここから先、甘く済む筈がねぇ!!





太鼓の音が辺りに響く。

俺はその音に呼応して、船の上に出ようとした。

そうだ、その前に…ミリナ。


彼女は俺の隣の部屋にいる。決闘の日から、俺は彼女と話せずにいた。当たり前だ。

俺は人殺し、彼女も人殺し。同じようで、何か決定的な壁があった。


彼女はおじさんと仲が良かったみたいだ。だからこそ、養子同然の俺が虚勢を張っておじさんを殺した連中の船に乗っているのが理解不能で、どうしても嫌だったんだろう。

あの時の彼女の顔は生理的に俺を拒絶するような顔だった。

俺のことを、どれほど知っているんだろう。


俺はおそるおそる扉の前に立つ。


「何の用?」



しまった、もう俺に気づいてるみたいだ。



「…そろそろ着くよ」

「君は…どうする?」



「私は船にいたい」



「…あ、あぁ」

「そうだよな」


よそよそしい態度だ。


「あなた、優しいのね」



「え?」



「私は…あなたのこと殺そうとしたのに気遣ってくれるのがちょっと、その…」

「意外というか」



「俺も君のことを殺そうとしたよ」



「ほんと?…じゃあお互い様ね」



「そうだ」

「俺がお前に付けさせたあのイェランの魔法…解除してやってくれ」



「もうしたわ」

「不都合なことでもあった…?」



「そ、そうか」


「俺はもう行くよ」

「…邪魔して悪かったな」


返事はなかった。



「陸地が見えた!!あそこが俺らの初!!略奪ポイントだ!!」


略奪…

やっぱり、もうこの船は完全に国賊の船らしい。

船員達もゴロツキ。誰も咎める者はいないらしい。いたとしたら海の骸になっているだろう。


第一船に海兵達が集まってきた。

他に紛れて俺に近づく一つの小さな影。イェランだ。


「よう」


「ああ」

「…前から気になってたことを聞いていいか」


「何だ」


「何故お前はこの船に乗ってるんだ?」

「俺が言えねえけど…その歳でよ」


「あぁ、」


少し溜めて、日差しに目を半開きにしてイェランが再び口を開いた。


「俺はダボン地区におふくろがいるのだ」


ダボン地区。見渡す限り砂漠が広がり、ジュエルマンのような蛮族が跋扈する不毛の地か。


「不治の病に侵されて…余命十年、今はもう残り五年になってしまった」

「世界樹の伝説を知ってるか?」


「あぁ」


成程な…検討はついた


「俺はいずれ、そこら中を旅して世界樹の聖水を持って帰るんだ」

「そして母の病を必ずしや治してみせる」


「そうか」


「どうかしたか?今の話を聞いて」


「いや、安心したよ」


俺と大違いだ。

俺は、二番船船長になって喜んでいる。魔物を沢山ぶち殺せるからだ。

ブチ殺して、ブチ殺して、さらにその果てでブチ殺すのが俺の夢であり、生き甲斐であり、理由なんだ。


こいつは…


「変な出会い方しちまったけど」

「お互い、頑張ろうな」


俺は拳を突き出した。


「…あぁ」


二つの拳がぶつかり合う。

互いに目を向け合い、俺たちの影に視線を移す。



おぉ…!


ここがラビリンス。

砂浜を越えたらすぐに竹林が広がっていた。


思えば、俺は船にいる間だけで相当いろんなことが起きた。

ミケを失い、


「大昔、極東から持ち込まれた竹が根付いて自生してる」


ふーん


「ここではサプテナー族が、現地のヴァレシア人と共生してるのだ」


「よく知ってるな」


「まぁこれくらいはな」

「お、見ろ。歓迎してくれてるらしいぞ」


原住民だろうか。

野蛮な服装の連中が手を振って飛び跳ねている。


「ははぁ…」

「誰か、マチェニカ語を話せる者はいるか」

「呼びかけろ、クアトラ」


「は」


クアトラは海兵の隊列へ向かって歩き出し、しばらく経って戻ってくる。


「話者はこのクアトラと二番船船員のマシェドにございます」


「ほう、ならお前が伝えてこい」

「"今から皆殺しにするから楽しみに待て"とな」


!!!?

クアトラは何も言わずに承知の態度を見せて、


「ホアクローツァ、ダ、テ、バライシャ」


原住民とおぼしき連中がざわつき始める。当然だ。

間もなく、クロスボウによる一斉掃射が始まった。


見るに堪えない虐殺。俺は目を背けた。その視線の先に、イェランの顔がある。

そうか…

ゴロツキの長とはいえ、こいつもまだ俺と同じガキだ。

人が死ぬ瞬間を嬉々として見たいはずもない。


「上陸だ!!!」


「へへへへへへ」


海兵どもが次々と竹藪に突入していく。


「僕たちも行きましょうよ、船長!!」


ハヌルディが催促してきた。しょうがない、…気は進まない。

しかし、やるしかないんだ。


「二番船船員、突撃を許可する」


よしきた、と言わんばかりに海兵達が突撃していった。

俺もそれに次いで行く。


竹藪は深かった。そこの見えない暗闇が続く中、一人の男がやってきて握手を求めてきた。

その男はすぐに首を刈られて死んだ。若かった。

やったのはハヌルディ。


「船長、ボケーっとしてないで!」

「僕と殺した数で勝負しましょうよ!!」


「あ、あぁ」


「いいんですか?!じゃあバンバン殺しますね!」


あぁ、俺のやってることって…


竹藪は続く。しかし、徐々に視界が晴れてきた。

村だ!今度は原住民ではない、ヴァレシアの村が見えてきた。


次こそは流石に武装していた。暗闇に無数の槍が飛んでくる。


「おっと!」


何だこいつ…百四十レノスくらいの低身長のくせに、とんでもなく機敏な動きだ

飛んできた槍を容易く弾いて、さらに投げ返しやがる…!!

遠くで悲鳴が聞こえた…まさか当たったのか!!


「俺はこれで五キル目ですよ!!ブライツさん!」


「ぁ、ああ」


やるしかないか…人を、殺す!!


さらに突き進んだ先には、盾を構えた兵士が横に並んで陣形を組んでいた。

槍が盾の間から突き出して、駆けてくる俺を捉える。竹林は超えた。視界はクリアだ。


「うおらぁぁぁっ!!!!」


俺はやつらを飛び越えた。待ち構えていた三人の兵士。

一人目が剣を振りかぶる。大振りだ。俺は回転して避け、すかさず側頭部に剣を叩き込んだ。

鉄兜と頭蓋骨がひしゃげる嫌な音がした。

二人目は振り向き様に剣を突き刺した。刺した時、その男は俺に救いを求めるような顔を向けた。目をかっぴらいて、眼球が今にも飛び出そうだった。

俺は男を蹴り飛ばし剣を引き抜いた。三人目は剣を思いっきりぶん投げてきた。

俺にとってそれは容易く避けれるものだった。しかし、あの男の顔を見て俺は絶句していた。

まともに肩に食らってしまった。畜生、飛んだヘマだ。


後続の仲間が盾兵を薙ぎ倒している。


思ったより傷は浅いようだ。これなら、まだ戦える。


俺はゆっくりと村の中に足を踏み込んだ。遠くには断崖絶壁。のどかな景色だ。しかし、今その景色とは裏腹に大虐殺が始まろうとしている。


俺はゆっくりと侵入した。周りがスローモーションに見える。

至る所から煙が立ち上り、遠くから爆発音が聞こえる。

村人達が逃げ惑い、それを追いかける海兵達。猫と鼠みたいだ。


中には、対抗しようとして鎖や包丁を手に持ち悠々と歩いていく屈強な村人もいた。

俺はまさに混沌(カオス)の中にいる。


俺は教会を見つけた。


「神父様」

「この土地の牢に案内してもらえないか?」


弱った壮年の神父が、ステンドグラス越しに差し込む光の中で十字架に縋っている。


「お、おぉ……!!」


「この気は…魔女!!ま、魔法使い…」

「しかもこれは…聖魔…」


「聞いてんのか爺さん」

「早くしねえと俺のお仲間に殺されちまうぞ?」


「ぁあ…魔術は元来…神の魅技…!!」

「人間が扱っていいものじゃない!!魔術とは…魔法とは!!」

「人智を超えたものでなくてはならない!!」


「それを…手中に取りましてや殺人や自身の快楽のために使うなど言語道断…」

「裁きを受けよ!!!」

「審判の日、貴様らは…」


お喋りが止まった。

ナイフが頭部に深々と突き刺さっている。

熱弁して血走っていた目は虚を見つめていた。



「あぁっ!!今、お取り込み中でしたか?!すみません!!今の分のキルはなしでいいです!」

「今のを除いて僕は十三キルしましたよ!!」


「あ、あぁ」


「ブライツさんは!?」


「二人…」


「えー?!」

「まあいいです、僕非武装の村人でキル稼いでたんで」


「…そうか」


「じゃ、僕他のとこ行きますね!じゃんじゃん殺しましょ!」


コイツ…わざと…わざと言ってるんだな

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ