④ 恋愛相関図 その2
いつのまにか揉めていたルカとアリスが席に座っている。
ルカは一番後ろの真ん中の席。その前にアリスが座っている。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、午前九時になる。
机に朝食のプレートが出現する。
「それじゃあ、いまから出てきた順に自己紹介とその人が好きな人を発表するわよ」
なんだ。このイベント?
カムイが愛する者を知ろうとしたらえらいことになった。
「クリス、質問がある」
質問してきたのはアリスだった。
「はい、アリスさん」
いつのまにか、眼鏡をかけているアリス。
机にはノートと鉛筆がある。
なんだ、その真剣なスタイルは。
「個人的に一個人の好感度ランキングを知りたいが後で聞くことは可能なのか、それと好感度の上げ方などあれば教えてほしい」
「いいわよ、後で個別に教えてあげるわ」
なんだ。その真剣な姿勢は。
「アリスっ、それはハジメのこと、うぶっ」
「今は邪魔しないでくれ、これ以上邪魔したら絶交と言ったよな」
アリスに口を押さえられて黙るルカ。
ヤバイ。アリスの本気を感じる。
記憶のない前の自分は違う自分ということを教えなければならない。
「ちなみにハジメちゃんからアリスちゃんへの好感度は結構高いわよ。頑張ってね」
「そ、そうか」
嬉しそうな顔になるアリスを見て、また頭の中で映像が浮かぶ。
必死にそれを振り払う。
まずい。小さな事で鼓動が跳ね上がる。
アリスにも同じ事が起きているのか。
「ゔー」 「ヴー」
アリスの後ろでルカとハイドがハモって唸っていた。
最初にロッカーを開けて教室に入ってきたのはモヒカンの男だった。
サングラスにヘッドホン、紫のモヒカン。背中にはギターを背負っている。
ハードロックだろうか、黒のレザースーツを着ていて、肌の露出が多い。だが、身体は貧相だ。ガリガリで胸元の骨が浮き出ている。
「お、なんだ新メンバーいるじゃん。シクヨロ〜〜」
軽いノリで挨拶する男に会釈する。それと同時に。
「やってまいりました。出席番号9番のリキマルちゃんです。パンクな髪型に似合わず実はかなりのシャイボーイ。隣の席のカナちゃんが好きなのに、照れて悪態をついちゃうチェリーボーイです」
「ばっ、てめえっ、クリス! ふざけっ、ん、なぁっ」
慌ててクリスを止めようとして転倒するリキマル。
「リキマルちゃんからカナちゃんへの好感度は♡四つ。早く告白したら良いのにねぇ」
「嘘言ってんじゃねえっ、あばっ」
更に追い討ちをかけるようにロッカーのドアが開いて、転んだリキマルの頭にぶち当たる。
「あん、何倒れてんだ? リキマル」
次に現れたのは赤いワンピースを着た女だった。
黒い髪が異常に長い。
右目が少し見えるだけで前髪も後髪も腰まで伸びている。
身長は高そうだがかなり猫背で前屈みになっている。
貞子だ。リアル貞子が現れた。
「おーと、お次に現れたのは今、話題の出席番号8番のカナちゃんです。まったく恋愛に興味のない振りをしているが実はかなりの乙女脳。なんとカナちゃんからリキマルへの好感度はっ、はっ、ぐふぅ」
クリスがいきなり喉を押さえて倒れこむ。
カナの腕にいつのまにかワラ人形が握られていた。
ぎゅっと喉を締められている。
「クリス、死にたい感じ?」
ブンブンと首を振るクリス。
「ちょ、今の良いところだろっ、話せよ、クリっ、うぼぉ」
カナに踏まれて撃沈するリキマル。
何事も無かったように一番後ろの右端に座るカナ。
どうやら二人は好き合っているが交際には発展していないようだ。
背後からカリカリとノートに書き込む音が聞こえてくる。
アリスが必死にメモしている。
いまのやり取りに大事な要素があっただろうか?
恋愛したことない者がいきなり恋愛モードに入ったらこうなるのか。恐ろしい。見えないプレッシャーを感じて背筋が冷たくなる。
そして、次にロッカーから出てきたのは。
「ん、んんっ。さあ、次のメンバーはっ、おっとこれは珍しい。いつも部屋から中々でてこない出席番号5番アキラちゃん。携帯機械のマリアちゃんと共に登場だっ」
シャツとジーパン。
恐らく初期装備のままのボサボサの髪の男が現れる。
長いこと風呂に入ってなさそうな不潔感。
目の下にはクマ。疲れていそうで顔色も悪い。
その背後、クリスが携帯機械と言っていた鉄の人形が付いて来ている。
カムイの機械装備とはまた違う。
シンプルな鉄になったマネキンのようだ。
片腕が銃になった宇宙海賊のパートナーに似ている。
「マリア、面白そうな事をしているよ。僕らの愛を見てもらおう」
どうやらアキラはわかっていてここに来たようだ。
「おお、すごいわっ。アキラちゃんのマリアちゃんへの好感度、最高の♡六つ。しかもすごいところは他の人に対する好感度がすべて0なところよっ」
なんだそれっ、それは人として大丈夫なのか?
「当たり前だ。僕はマリアだけを愛して、そのために生きている」
嬉しそうに、そして誇らしげにアキラはマリアを抱きしめる。
「さあ、つぎはマリアの僕に対する好感度を言ってくれ」
「ごめんね。機械の感情は読めないの。はい、次いくわね〜〜」
当たり前の事だがショックを受けたアキラが固まっている。
そして、その背後。アキラの説明中にロッカーを開けて入ってきた女性もまたショックを受けていた。
「続いては出席番号4番のシズクちゃん。クラス唯一の常識人。委員長タイプの彼女は、て、あれ、シズクちゃん、大丈夫?」
メイド服を着た女性が座り込んでいる。
黒髪のショートミドルに黒い眼鏡。
真面目そうなシズクは体育座りで何かぶつぶつ言っている。
「他の人に対する好感度すべて0......。私も0。私は0の女」
「えっと、シズクちゃんの好感度は、や、やめておくわね。頑張ってね。可能性は0じゃないわよ」
そして、自己紹介恋愛相関図が地獄絵図となる中、ついにあの男が登場する。
扉が開く。
教室に緊張感が走る中、クリスの解説が始まった。




