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現代神様  作者: 有富有馬
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12/23

神塚響(スサノオノミコト)

 すでに日は暮れている。



 いつもなら夕食を食べている。その時間帯にその場にいる全員がバラバラに座っている。



 誰も声をかけようとはしなかった。



 夜鳥によって破壊された本殿は一真の結界が発動中だったために無傷。



 社務所の方はバックアップのような機能で元通りにしていた。



 そう簡単に本拠地を破壊などはさせたりはしない。



 しかし



  

 最悪の状況だった。



 響が死んだ。



 それはその場にいた全員に大きなショックを与えた。



 どうすればよいのか



 それすらも明確に浮かばない今の状況が一真にとっては苦痛でしかなかった。



 本来ならばすぐにでも夜鳥を追わなければならないのだろう。



 しかし、あの後から全く夜鳥の気配を感じることはない。



 「ねぇ・・・・これからどうするの?」



 ボソリと香澄が呟く。



 散々泣いたのか目には泣いた跡がくっきりと写っている。

 

 「ああ・・・・」



 そんな適当な返事しかできなかった。



 どうしたらいいかは分かっている。



 分かっているのだが、分からなくなっている。



 正しい判断だと思うことが、どうしても正しいとは思えなくなっていた。



 身近な人間が死んだのだ。



 どうしていいのかわからなくなるのは当たり前といえば当たり前かもしれない。



それでも



と一真は力を拳に込める。



 それっきり会話は起きない。



 刻一刻と時間が過ぎていくも、何もできない状況が続く。



 気配がなければ情報もない。夜鳥の目的すら分からない。



何故だろうか、夜鳥はあのあとすぐに引き返した。



その血を大事そうにビンに摘めて。



(俺は・・・・何か勘違いをしているんじゃないか?)



夜鳥の動きを思い出して、ふとそんなことを思ってしまう。



 「羽島さんの様子は・・・・・」



 栄吉が小さな声で香澄に問う。



 「う、うん・・・・何とか消滅はしていなかったんだけど・・・・・・魂の拡散が始まちゃってる・・・・」



 「そうか・・・・」



 「響君の方もどうにかしないと・・・・・・・」



 そう香澄が言った時だ。



 「いや・・・・・響の事より、まずは夜鳥だ」



 香澄は鋭く自分の心に乞いこんでくる一真の一言に耳を疑った。



 「そんな・・・・・一君!」



 「・・・・そうじゃの・・・・・・先決すべきは夜鳥の行動だ」 



 「おじいちゃんまで!!」



  気持ちはわかる。



 諭すように言ったその一言が妙に香澄の頭を締め付ける。



ならばなぜ、そんなことを言うのかと、



 「誰もがそう感じ取る・・・・・それでも、夜鳥を倒さなければ響のような犠牲者がさらに増える。それだけは避けねばならない」



 「・・・・・・」



 身近な者の死・・・・・それは容易に心の平常心を失わせる。



 いまさらになって自分がいかに子供のようなことを言っているのかを気づかされる。



 いや、決して香澄の考えが間違っているわけではないのだろう。



 それでも一真たちが行わなければならないのは、夜鳥討伐だ。



 (助ける・・・・か・・・)



 香澄は先日言った言葉を思い出す。



 一真を助ける。



 それは看護士としての仕事と同じくらい、大きな位置を心の中で絞めていたのだろう。



 考えたことがなかったために生まれていたそれは、先日の会話で浮き彫りになった気がする。



心のどこかで、気づかないうちに大きな気持ちを作っていたのだ。

 


 もっともつらいのは一真のはずだ。



 本人のためとはいへ実質的に騙し続け、結局守りきれなかったという事実を突き付けられた。



 その気持ちを押し殺してでも、今自分がしなければならないことを貫いている。



 ならば?



 香澄はどうするべきなのか?



 答えなんて決まっていた。



 今ここで一真を助ける。



 それが結局は周りに回って響の事にもつながるのだから。

 


 (よし・・・・)



 香澄は心の中で気持ちを切り替える。



 「・・・・・・ん」


 

 その顔を見て一真も口元がかすかに緩む。



 さっそく助けられているなというのを実感してしまう。



 「しかしどうする・・・・・状況は・・・・・進展どころかハードルが上がったしまったぞ・・・・・」



 まさにその通りだ。



 手がかりなし。血は奪われた。



 簡潔に増えた事といえば一つだがその一つがとても重かった。



 夜鳥が素戔嗚の血を手に入れたことによって夜鳥の行動の謎がより跳ね上がってしまった。



 「この際・・・・・もうどうしようもないですからね・・・・・天津神、国津神に報告するしかないでしょう」



 「・・・・結局そこに行ってしまうのか・・・・・・・」



 「とりあえず、天照には黙っときましょう。いきなりそんなことを聞かされたら、冗談じゃなく日食とかおきそうですし・・・・」



 天照は素戔嗚が高天原で暴れた時、そのことから岩戸に姿を隠したという。



 今回のケースは素戔嗚がらみの上、天照の周りでは伊勢神宮の遷宮がある。タイミングが大事になってくるだろう。



 「とりあえず、武御雷は論外だし天手力男神やアメノウズメがいいかもしれませんが・・・・・・一番いいのは、神産巣日神がいいでしょうね・・・・」



 「そうだな・・・・・高天原にはその路線からわしが聞いておこう・・・・」



 「よろしくお願いします。・・・・・さて国津神は大国主で問題ないでしょう」



 「えっ・・・・・でも大国主・・・ていうか上山さんはいろいろと忙しいじゃない?」



 「バカヤロウ。こんな時に忙しいもくそもあるか。上さんにも働いてもらう。最終手段前回で行く」



 「え・・・・でもさっき・・・・・」



 戸惑う表情を見せる香澄。



 「いいたいことは分かるが、天照と大国主じゃ勝手が違う。方や天の事柄に影響を与え、方や地上の超有力者。どちらも天皇に少なからずつながりを持つが、大国主の代わりが天皇だ。それに比べて天照は替えが効かない。」 



 「出雲出身者としては微妙な心持ちだが、支配権を持っているのはあくまで天照だ。その基盤が狂えば破滅が近くなる。無論大社も遷宮で忙しいだろうが、国津神に影響力が一番あるのは、大国主しかおらんだろう」



 「要は先の副将軍、水戸光圀公みたいに、支配者じゃないにしても影響力が抜群に大国主は国津神にあるんだよ。」



 「そ、それくらいそんな訳の分からない例えを出さなくたって分かるよ!!」



 香澄を無視する形で一真は進める。



 「それに前にも言ったが、ほかの出雲の神がどう動くかよくわからん。一番信用がなるのは大国主だ」



 ガンガン説明する二人に香澄は少し、気合がそがれるかと思った。

  


 「さてと・・・・・こんなことを言うよりさっさと動きましょう。時間がどれだけ在るかわかったもんじゃない」



 その言葉に栄吉も香澄もうなずく。




 「おいおい・・・・・お前ら、ちょっと待て・・・」


 

 三人が動き出そうとした時だった。



 突然襖の奥から声が聞こえる。



 その声に一真が機敏に反応した。



 襖がゆっくりと開き、そこから一人の男が表れる。


 「な!!・・・・」



 その姿を見た瞬間、一真の臨戦態勢が一瞬にして消え去った。



 一真だけではない、栄吉も香澄もまるで信じられないものを見るかのように表れた男を見ている。



 「それをするにはまだ少し早いぞ」





 表れたのは、神塚響だった。






 「おい・・・・・どういう事だ・・・・・」



 今目の前の現象に理解が出来なかった。



 それはそうだろう。死んだはずの人間が目の前に生き返っているのだ。



 ただただ響を見ることしかできなかった。



 さっきまで考えていたことがきれいに飛んでしまう。


 

 「そうとう切羽詰まった状況のようだな・・・・」



 ギロリと睨むその瞳は青くなっている。



 雰囲気が全く違う。



 響の声で、とても力強くしゃべり、立ち振る舞いも豪快さを感じさせる。



 まるで響の体に何か別のものが宿ったようにも、見える。



 「お前は・・・・」



 ボソリと呟く一真を響と思われる者はその鋭い眼光を向ける。



 「貴様が加具土命か・・・・・そして、そこのじじいが栄吉という奴でその娘が香澄という奴か・・・・・・」



 フンと響と思われる者は鼻で笑う。



 「まったく、目覚めたら驚いたぞ・・・・・・・こんな状況になっとるとはな・・・・・・」



 付いてこい。



 三人の言葉になど聞く耳は持たないというように響と思われる者は一人で話を進めていく。



 「ん!??どうした?付いてこい!!」



 その瞬間空いた窓から強烈な突風が吹き込んだ。



 その風に、一真も栄吉も香澄も顔を覆う。それほどまでに強く鋭い風が吹き込んだのだ。



 「お前は一体・・・・・」



 「ん!?俺か?俺は素戔嗚だ」



 端的に言われたその一言が強烈に頭を貫いた。



 「話は行きながらだ・・・・・・・お前らが知らない真実を伝えよう・・・・」 

 



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