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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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99/112

15-4

「やった!アイツから刀を奪いました!!」


「ああ、これで彼の攻撃力を落とせた。でも油断は禁物だ」


 喜ぶ流山。蛇島は笑っていたが、目を細めた。


「何分相手はあの陸島だ。これで抑えられるとは思えない」


「そうですわね。あの男、私と戦っていた時よりもさらに圧を増しています」


 蛇島の見る先にいる陸島に対し、燦央院は彼の戦闘に対する意思が失われていないことをその圧で理解した。

 冷や汗を流す燦央院に対して鴉田が口を開く。


「けどよ、相原さんだって負けようとはしてないぜ?見ろよ、あの顔。間違いなく勝ってやるって表情じゃん?」


「だね。あれなら勝てそうだ」


 鴉田の意見に同調する外崎。

 その言葉に鴉田が二やついて外崎を見ていると外崎は静かに彼の足を踏んだ。イラっと来たらしい。


「こんな時に何してますの……」


 視線を悲鳴の上がった方から陸島たちの決闘に戻す最中、彼女は観客席のある一か所に視線を捉えられる。


(ん?あれは……)


 場所にして陸島の出てきたゲート近くにいた集団。

 全員女性であり、スーツを着た者たち。その先頭にいたポニーテールの女性に燦央院はじっと視線を送る。


(あの方……どこかで?)


 燦央院がその女性に関して探ろうと脳裏にある記憶の海に飛び込む最中、試合は次のステップに入ろうとしていた。


(さて、こっからどうするか)


 陸島は正面を見る。

 地面から伸びた蔦によって宙にゆらゆらと浮く、抜き身の太刀。

 さらにその先にはその蔦を操る少女、相原紫苑がいる。彼女の持つ手には黒い杖が握られており、絶えず淡いオレンジ色の光が浮き出ている。蔦の動きに合わせて光は強弱をかすかながらに見せていた。


(なるほど。あの杖をどうにかすればよさそうだ。となれば近づいて殴ればいい。だがそうは問屋が卸さないだろう)


 先ほどの攻撃を思い出す。

 大地を揺らす攻撃によってバランスを崩した自分の姿を。


(ひざを折ったのは不快だったが。認めてやるか。こいつの強さ。だがそれで終わりにしてたまるか。刀を取り戻し、その上で勝つ方法……刀なしが思ったよりきついな。後の手札は……こいつとあれだけか)


 左手で右腕を抑え、考え込む。

 今までの決闘で刀を自分から無くしたことはなかった。


(まずはアイツに攻撃を仕掛ける。それで集中を削いで刀を取り戻す)


 陸島は作戦をある程度脳内で練りだす。

 行動Aを行い、成功時は行動B。ダメなら行動C。イメージとしてはそれが近い。


(よし。十手もまだこっちにある。やるか!)


 そして動きを見せ始めたのは相原だった。

 杖から輝きが増して蔦が勢いよく地面に刀を縛りけるようにぎゅっと結ばれると杖の輝きは失われ、すぐにその輝きは取り戻される。


「ごめんね。痛かったら」


 相原の口から洩れたその言葉。


――痛かったらごめん?コイツ何言ってんだ?


 それが陸島の耳に届いた時、呆れていた。

 だが瞬時に怒りを覚えた。


(この野郎……戦う相手に気を使うとはとんだ阿呆か)


 相原が魔術を振るうその刹那、陸島は右腕をまっすぐに相原に向ける。

 そして十手を左手に握る。


「あれ?あのインケン何する気ですか?」


「わからん。魔術じゃないのか?」


 流山と蛇島の疑問の答えはすぐに出た。

 伸びた右腕、不自然に垂れる彼の学ランの袖の下。


「まさか……!」


 燦央院は気づく。それが何なのかを。

 次に陸島が行ったのはその右腕の肘より前の部分に十手を当てた。

 そこから獲物を駆るチーターのように瞬時に飛び出る二つの矢。


「あ……!」


 正面の相原は気づいた。

 それに対応するために使おうとしていた魔術を中断。二本の矢を止めるために大地の壁を発動する。伸び出た壁で矢は止まり、深々と刺さる。


「あれは魔術エネルギーを矢に込めた飛び道具の暗器ですかね?」


 陸島の出たゲートの方から見ていた布塚と三田川。


「あら、渋いの使うね。止められたけど」


 その間に陸島は相原の方に向かって走る。

 途中の刀に目をくれず、彼は次の手を実行していた。


「いかにその技が優れていようと振るわなきゃ意味なしだ」


 駆ける合間に十手を振るい、蔦の群れを相原の周辺に呼び出す。

 絡みついてまたも動けなくなる相原。


「またこれなの……!?」


「歯ぁくいしばれよ」


 相原の呼び出した大地の壁を飛び越え、彼は十手に魔力を込める。


「まずい!このままじゃぶん殴られる!!」


「よけて!!」


 鴉田の目が見開き、外崎が叫ぶ。

 しかし相原は動かない。


「はあぁっ!!」


 振るわれる一撃が命中するその時、陸島は止まった。


「え?」


 流山は驚く。

 彼の身体に何かが絡まって宙に浮いていたのだ。宙に止まった彼をそうさせた元凶は蔦ではなかった。


「あれって……!?」


 布塚は目を見開いた。

 陸島を捉えたのは蔦よりも太い木の根っこ。それが鞭のようにぐるぐると彼を縛って動けなくしていた。


「根っこ……か。あの子、ひょっとして天才?あそこまで太くしなやかなのを瞬時に出せるなんて」


 乾いた笑いを見せる三田川。

 大地の魔術において出来る魔術の内、代表的な魔術は三つある。

 一つ目に植物を操る魔術。

 二つ目に大地そのものを操る魔術。

 三つ目に生命力に干渉し、治癒や肉体強化を促す魔術。 

 相原が使ったのは一つ目に該当する。しかし木の本体に近い根や木そのものを使うのは実際には多くの魔力と技術がいるのだ。


「三田川さん。あの子何者なんです?あの年でさっきの地震攻撃と言い、あの枝と言いバケモンですか!?」


「女子に向かってバケモンはないわよ。それにしても凄いわね」


 三田川は驚きつつも彼女を称賛した。


「くそ……こんな手が残っていたのか!」


 一方、根に捕らわれた陸島は動けずにいた。募る憎悪と焦りが彼の心を支配する。


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