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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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92/128

14-3

「ど、どういうつもりなんだろ相原さん?決闘はいつなんです?」


「一週間後。ああそうそう。この情報、内緒にしてね?」


 鼠川に対して口を閉ざすように指示を出す。

 納得がいっていない鼠川は三田川に問う。


「な、何故です?」


「騒ぎになっても困るのよ。というか――」


 三田川は再度自分のスマートフォンの画面を見る。

 そこに表示されている内容を再度読み取りながら。


「これ……本当なのか疑わしいのよね。ひょっとしたらひょっとするかもしれないけど。とにかくしばらく待ってみましょ。もしかしたら決闘は中止か取り消しもありうるし」


「だといいんですけどね」


 鼠川は中止の方向に望みをかけた。


「そりゃあ、無いんじゃないか?」


 その望みに疑問を抱くのは鴉田。

 疑問を抱く彼に蛇島が突っ込む。


「何故だ鴉田。決闘というのは生半可でやるものじゃない。その事はお前が一番よく知っているだろ?」


「だからこそだ。これまでの戦いで陸島は強いことが証明されてる。しかも聞けば一人で修行してその位置にいるんだ。どういうカラクリがあるか知らないが、相原さんもあほじゃない。必ず何か策を引っ提げて戦いに臨むさ」


「むう……だがその策が失敗したらどうなる?彼女もタダじゃすまないぞ?」


「知ってるさ。やばくなったそん時は俺とお前で止めに入る。アイツが文句ブーブー垂れようがしらんぷりでな」


 鴉田の意見に少し間を置いて蛇島は答える。


「いいだろう。そうなったら、そうなったでいこう」


「あの……その相原さんってどんな子なの?」


 会話に入り込むのは布塚。

 相原紫苑についてはあまり知らない。彼女について蛇島が説明する。


「ああえっと……陸島のパートナーで優しい女子ですね。でもアイツは彼女をいつも遠ざけている。特徴は黒髪のツインテールで身長は多分布塚さんくらい。セーラー服を着て……ってまあこれは島の女学生に共通する点で――」


「随分細かく説明するわね。なに?好きなの?」


「え、いや違いますって!ちゃんと説明聞いてくださいよ!」


 からかう布塚に蛇島は頬を赤くして突っ込む。

 直後、三田川がアッパーカットで空中に飛ばし、飛び上がった彼女のあごに自身の右足の先端を乗せて引っかける。高く上がったその右足のせいで布塚の足は地に付いてなかった。


「真面目に聞けや」


「は……はい。ズビマゼン……」


(なにこれ!?バランス感覚どうなってるの!?)


 よくわからない吊るし方に鼠川は視線を奪われていた。

 その状態の中で蛇島が説明を続ける。


「魔術は大地を主に使うと聞いてます。燦央院さん曰く、魔術の腕自体は強いと」


「な、なら好機かもね」


「その状態で会話するんですね……」


「この状態で会話できるのよね……」


 三田川に首を向けて、蛇島は下ろしてほしいと困惑した目で見る。

 ゆっくりと下ろされて近くのソファーに座り込む布塚。


「で、三田川さん。率直に聞きたいのですが、相原さんは陸島に勝てますかね?」


「うーんどうだろうね。勝てないことはないと思うわ。何せ相原さん、燦央院さんの言う通りで魔術の腕、特に大地の魔術に関しては学内トップよ」


「え!?そんなにすごかったんですか!?」


 鼠川は知らなかったのか大声で驚く。


「とはいえ陸島君も魔術と武術の混合だから魔術だけじゃちょっと厳しいかもね。何か手がいるわ」


「よし。それなら俺のレールガン・デルタを進呈しよう!」


「だめよ。それ風の魔術で使うやつでしょ?大地の魔術じゃ動かせないわ」


「ええー?じゃあこの普通のハンドガン――」


「銃刀法違反だばかもーん!」


「ぐはっ!」


 蛇島パンチ。

 鴉田は吹き飛んだ。ちなみに彼が持っているのはモデルガンです。


「まあ大丈夫でしょう。相原さんの腕なら多分あの方法が使えるはず。それなら勝機はあるわね」


「え?何かあるんですか?」


「ええ。使えるのならの話だけど。というか使えなきゃ決闘なんて申し込まないわね」


「……ということはやはり彼女は策を持って臨むのか」


 地面に転がる鴉田をよそに蛇島は納得した。


「しかしその秘策でどうにかなるの?」


「大丈夫よ。同じ大地の魔術ならきっと」


 にっこりと三田川は笑う。

 夕暮れが静かに迫っていた。






 次の日。大地の魔術の授業の最中。


「相原さんは相変わらず魔術の腕が凄いね」


「え?そ、そうかなあ」


 隣にいた萩野の誉め言葉に思わず照れる相原。

 彼女の前には無数の花が咲き誇っている。


「本当だよ。こんなにきれいな花の数々をあっという間に呼び出したのだから。でも一番きれいなのは……笑っている相原さんだよ」


「も、もう。やめてよ……」


 紅潮する顔を笑って見つめる萩野。

 そんな二人を周囲が色んな目で見る。


――いいなあ相原さん。魔術もできて可愛くて


――ああ、私も萩野さんに褒められたい


――っていうか抱いてほしい


「そういえば彼は今日も君の元を離れて修行してるのかい?」


「うん。いつもそう。それでいて上達も早くて……私、いるのかなって思うの」


「大丈夫だよ。彼もいつかは止まる。それも自分の意思とは関係なく。その時になったら君のもとに来るさ」


「そうだといいな」


 視線を陸島の方に向ける。

 彼の周囲には竹より一回り太く、彼の背丈より一回り大きい土くれの柱が立ち並んでおり、それを彼は十手を振るうとともに柱を地面に同時に戻した。教師の谷崎がそれを見て驚く。


「あら凄いわね~。周囲の柱を同時に地面に戻すっての意外と難しいのよ」


「これ本当に役立つんですか?」


 さらに彼は十手を振るう。

 すると今度は土くれの柱がさっきとは違う位置から彼の周囲に立ち上る。


「ええ。魔力の流れを同時に複数の個所に送るっていうのはできると次のステップに役立つわ。魔力制御の練習にはこういうところからやってみるといいわ。校長先生も若い時これをよくやってみたみたいだし」


「わかりました。それでは」


 陸島は修行に集中しだした。

 谷崎先生はそれを見て笑みを浮かべていた。


「ああそうだ相原さん」


 萩野は何かを思い出し、それを話し出す。


「私、明日以降だけど島を離れることになってるんだ」


「え?どうして?」


「家の事情だよ。詳しいことは今度話すけど……家が代々護衛の仕事しててね。それで島を出ることになったんだ」


「あ、そうだったの?」


「うん。実地研修とかも家でやるのさ。興味あったらどう?」


「どうしよう、かなあ……」


 萩野の提案に対し、答えを悩む中で陸島の方を相原は見る。


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