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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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91/118

14-2

「いや本当にすみませんでした。あの後――」


「言い訳はいい!!」


 三田川の剣幕は凄まじく、ウォーロックの三人は食べる手を止める。


「三田川さん、もうその辺にしてください。剣幕でアイス溶けますから……」


「……そうね」


 蛇島の説得で三田川は厳しい目を向けるのをやめて、大きくため息を吐いた。

 静かになった空間の中で鼠川がアイスを食べつつあることに気づいて口にする。


「陸島君は本土の任務では何もできずに帰って来たのかな?」


「そうでもないわ」


 鼠川の疑問に答えるのは布塚。


「陸島君、恐ろしかったわ。廃墟について所定の位置に皆ついてから任務開始と同時に敵陣に突っ込んでいったの。私と木下さんがやばいと思って止めに入ろうとしたけど彼の魔術と猿叫で敵は恐れをなして混乱状態になった。その隙に私たちで攻撃して制圧。その時の彼といったら凄まじかったわ。怒り任せに見える攻撃も的確に当てて、銃を向けてきた相手にもひるまず魔術を行使して攻撃。おまけに猿叫による全体への威圧だからあっという間だったわ」


「うわあ……じゃあ活躍してたってことですか?」


「大活躍ね。魔女も慌てて術を振るおうとしたけど、震脚による揺れでパニック起こしてその間に陸島君が切り伏せた。それで最後に見えてまだ生き残りがいたもんで私がそれをどうにかしようとして……それで……」


「ああ、分かりました。悪気はなかったんですよね?」


「……そうね」


 鼠川に語っていた布塚は途中まで興奮気味だったが、陸島を助けようとした下りでそこから一気に下がった。

 陸島を助けようとして怪我させてしまった自分にふがいなさを覚えていたのだ。


「こりゃあもう一回しごきがいるかしらね?」


「それだけは勘弁を!」


(……何をされたんだろう)


 トラウマを刺激されたのか怯える布塚に鼠川もつられるように怯えた。


「あれ?布塚さん何でここに?」


 その場にふらりと現れたのは陸島鉄明。

 どうやらたった今戻ってきたようだ。


「あら陸島君。冷蔵庫にアイスあるから好きに食べていってね」


 三田川の表情は柔らかくなって陸島と会話を始める。


「ああ、はい。で、なぜ布塚さんがここに?」


「私が呼んだのよ。今、トパーズ・グラスはどうなっているのかなって」


「そうですか。悪くはなかったですよ」


「本当?」


 反応したのは布塚。まるで恐怖から救われたかのような表情を浮かべる。


「次は強いヤツでいいです。でないと追いつけない気がするので」


「え?ああえっと――」


 布塚は三田川に目を向ける。

 三田川はそれを確認とみてしばらく考え込み、答えを出した。


「そうねえ。一学期が終わって実戦研修が夏休みにあるから、そこで力を付けなさいな」


「実戦研修?」


 聞きなれない単語に陸島は聞き返す。

 三田川は落ち着いた口調で説明を始める。


「ええ。見習いの魔術師たちが実戦でも戦うために学校が用意したプログラムね。世間でいうところのインターンシップみたいなものよ。機関直属、あるいは機関の下で仕事を受けるグループや派閥などに所属して己の腕を磨いたり、将来設計をするための機会を与えるイベントなのよ」


「なるほど。そういうのがあるんですね」


「陸島君なら竹月組かしら?というか何か話来てないの?」


「全くないです。親父が倒れてからドタバタしてるのもあるので。俺もこっち来て木下から話聞くまではあの家は単なるボランティア活動の拠点だって話信じてましたから」


「ボランティア……ああそうね。竹月組は孤児院運営やそれに伴う支援活動をいくつかやってるから。そこの説明は聞いたの?」


「はい。親父が言ってたんです。この家は親を失った子供たちを支える孤児院を運用、支援とかをやってるって」


 陸島は頬の汗を拭きとる。

 そしてその場を離れようとする。


「あら?アイスいらないの?」


「汗酷いんでちょっと風呂入ってきます。昼間ですが」


「ああ悪くないわね。風呂上がりのアイスも」


 準備の為に自室に向かう陸島。

 そして静かになったかと思えば鴉田が口を開く。


「あいつひょっとして良い家の人間だったり?」


「そうかもね。陸島君の家、橘樹家は魔女を長いこと支えてきた竹月組の本家で資産家としてもある程度名を馳せているわ」


「ひゃーすげえ」


「いや君も大概だろ。ベルウィンググループの重役の息子なんだから」


 やれやれと突っ込む蛇島。


「そういえばさっき連絡あったけど陸島君の次の決闘の相手、相原さんですって」


「へーそうなんですか」


 鼠川は三田川のその連絡に淡々と反応する。

 クーラーの音が室内に響く。


「ってエエエェェェェェ!?」


 直後に彼は大声を上げた。

 なんなら蛇島も鴉田も。


「どういう事なんですか一体!?なんで陸島君と相原さんが決闘を!?鴉田君はこないだ戦って蛇島君も特に何も言っていないし……」


「うーん。私にもちょっとわからないわね」


 ウォーロックの三人は顔を見合わせる。

 最初に鼠川が口を開く。


「えっと……確認だけど、二人は何か聞いてないの?相原さんから」


「初耳だな。俺は前回戦ってから相原さんから何か話を持ち掛けられたことはないな」


「僕もだ。相原さんに決闘を申し込むなんて何を考えているんだあいつは……」


「ああそれなんだけど。申し込んだのは相原さんよ」


「えーっ!?」


 再度ラウンジに声が響く。


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