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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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85/123

13.5-6

「それにしても陸島のヤツはさらにその先に行こうとしてるよな」


 鴉田の表情が一気に変わり、真剣な目で語りだす。


「確かにそうだね。やっぱり過去の事と言い、彼は本当に進むべき道を進んでいるっていう感じだよ。僕ら置いていかれそうだもん」


「蛇島のヤツが頑張ればいいが……果たして届くかどうか。燦央院さんと一緒でいちゃいちゃしてるだけってことはないよな?」


「鴉田君じゃないからそんなことはないと思うよ?」


「ひどい!辛辣だわ!」


「急にオネエ口調になるのやめて」


「事実だからな。それよかお前はさすがにやらんよな?」


「え?ああうん。流山さんみたいに忍術使えればとは思うけど決闘なんて……というか闘い自体無理だよ。僕は僕のやれる魔法を学ぶからさ」


「そういって、鼠川は女子割合の多い授業に参加していくと、あっという間にハーレムを築き上げ――」


「嘘のナレーションもやめようよ……」


 まったくである。

 ふと教室に設置されているカレンダーに鼠川が視線を移した時、あることを思い出した。


「そういえば一学期終わったらどうなるんだろ僕ら?」


「明日に話あるって言ってたな。俺は実家でじいちゃんと毎年恒例のバカンスかねえ」


「いいなー」


「へへーん」


 などとのんきにおしゃべりしていたまさにその時。


「はっ!?殺気!?」


「え?何を言って――」


 鴉田に強烈な殺意が向けられる。

 突拍子もない言葉に鼠川が呆れて教室のドアの方に目を向けるとそこには確かに殺意の元がいた。


「そ、外崎さん……!?」


 鼠川は思わずぎょっとした。

 目つきは鋭く、眉を潜め、睨んで生まれる視線には強い殺意が練りこまれているようで。もしそれが自分に向けられていればやばかったとのちに彼は語る。

 一歩、一歩と静かに鴉田に近づく。


「な、なんでござんしょうか外崎さん……?」


 変な口調になりつつも鴉田は怒りの外崎に問う。

 そして怒りの原因を彼女は口にした。


「今日一緒に帰るって言ったよね?」


「……あ」


 ドベシャア!!

 鼠川が盛大にこけた音です。


「なにやってんの鴉田君!早く謝って!!」


「……ごめんちゃい」


「よし折る」


「何を!?やめてやめてギャアアアア!」


 自分から誘っておいてこの態度。

 そりゃあ怒りたくなるものです。







「ふん!はぁっ!!」


「その調子ですわよ!!」


 一方、こちらは蛇島と燦央院。

 燦央院家が所有する屋敷内の一室にて互いに相も変わらずぶつかり合っていた。


「そこ!」


 燦央院はハルベルトを逆さにし、蛇島の足を狙う。

 鉄製のそれは蛇島の足に命中し、彼はバランスを崩す。


「しまっ――」


 転んだ彼の顔に燦央院はハルベルトを向ける。


「残念。武具はまだまだ調整が必要のようですわね」


「ああ。トンファーは思ったより、リーチが短い。足を狙われたらちょっとまずいな」


「距離を意識しなさい。それだけでも大きく違ってきますわよ」


「わかった。ところで魔術の方は今日何かやるのかい?」


「ええ。ガントレットは装備してますわね?」


「ああ。勿論だとも!」


 学ラン下に装備していたそれを見せる。

 金で出来ているわけではないとはいえ、金色の輝きを見せる。


「それじゃあ魔術の練習をしましょう。とにかくまずは芽無を集めることを意識しなさい。それから小さな火を起こすように。大きな炎はその後で――」


 しばらく彼女の炎の魔術に関するコーチングは続いた。

 炎の魔術を講義で学び、訓練にて実行。そうして時間は過ぎていく。


「では今回はここまでで。そろそろ時間ですから寮に戻りなさいな」


「ああ、ありがとう」


「あら?今日も来てましたか」


 メイド服を身にまとった吉川が訓練室の部屋に入り込む。


「ああ、吉川さん。お邪魔してます」


 その間に電話が鳴り、燦央院が応対する。


「はいもしもし。え?昨日の件ですが――」


 電話の向こうの相手とはしばらく話し込んでいた。


「どうぞどうぞ。お嬢様の大事なパートナーですし。ところで蛇島さん。結構汗かきました?」


「え?ああそうですね。講義も一旦お開きにして、そろそろ帰りますよ」


「であればうちのシャワールームを使ってください。一階右手にありますので」


「え?ああいいんですか?」


「構いません」


 にっこりと笑って善意を柔らかく見せる吉川。

 蛇島はその提案に乗ることにした。


「じゃあお借りします」


「備え付けのタオル、シャンプー類はご自由にお使いください」


 案内されてシャワールームへ。更衣室に入り込む。


「おお……旅館みたいだな」


 案内された場所はホコリ一つなくきれいで、棚の中にはいくつかの脱衣かごが入っておりそのうちの一つに着ていた服を脱いでシャワールームに入る。訓練で流した汗を熱いシャワーで流す。


(ああ……やっぱりサッパリするのっていいもんだな。特に夏は)


 汗で湿った体を水で流し、さらに備え付けのボディソープで体を、シャンプーで髪も念入りに洗う。


(それにしても凄い家だな。こういう家をいくつも持っているっていうのか?)


 ふとそんなことを考えた。


(おまけに修行が終わったら電話応対……大変だなあ燦央院さんも)


 電話応対している彼女の姿が思い浮かぶ。

 十五の少女がやるにはどこか思い仕事。しかしそれも将来に必要な事である。


(早く一人前になることがせめてもの助けか。頑張ろう)


 シャワーを止めて、部屋から出ようとしてドアを更衣室への開けたその時だった。


「え?」


「え?」


 なんということでしょうか。

 目の前には燦央院百合香がいます。

 彼女もまた訓練で流した汗を拭こうとしていたのです。

 なお、服装はトレーニングウェアのままです。


「……キャアアアアアッ!」


 ばちこーーん。

 彼女の前には全裸の男子。

 そりゃあひっぱたかれるモノですね。


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