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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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13.5-1 断章-萌芽の時を待つ若人たち

 浮かばれぬ魂の社などない。

 それらの行き着く先はいつだって悲しみと怒りの渦中。

 解放される条件はただ一つ。

 その苦しみの根源を絶つ以外にないのだ。


――そうだ。だから俺はあの日散っていった三人を解放するために戦う。痛めつけられ、苦しんで、叫んで死んでいったお前たちを俺は必ず解放するんだ。その時まで俺は全てをただ戦いの為に注ぐ。それが俺に課せられた使命だ


 闇の中、声が広がる。

 広がる声は己の耳に緩やかに入り込む。


――お前に授けるのは鉄の魔術。お前の悲しみを解き、そして全ての悲しみを解く魔術なり







(入院多いな。こっち来てから)


 鴉田との決闘を終わってからの二週間後。朝の通学路には女学生や島の住人がちらほらといた。

 退院してから陸島はこの島に来てからの出来事を振り返っていた。


(にしても熱いな。もう七月か)


 外は朝方にもかかわらず、日射照り付ける世界。

 熱さは流れる多量の汗が証明していた。


(最初にあのクソお嬢様を切り捨てて、その後は確か本土で任務を受けた時。それからあのバカとの戦い。三回も入院ってまるで病弱だな)


 逆奈義未来との戦い。本土での任務。そして鴉田春一との戦いにて陸島はかれこれ三回も入院している。


(もっと力をつけなくては。アイツらを殺した相手。木下の話が正しいなら相当の強者だろう。ウォーロックかもしれない。どうにか本土での任務を受けられるようにできないか?)


 更なる力を持つ。

 その過程と証明は人それぞれによるが陸島の場合はこのように考える。


(力を得たという認識といえばやはり鍛錬と戦うことだな。その二つを繰り返して魔術を極めていく。そうして力を得た果てに犯人を討ち取るだけの力を身に宿せるはずだ。単純な考えだがこれが正しいはずだ)


「あ、陸島君。おはよう」


 近くに笑って寄り添ってきたのは相原紫苑。

 学校から任命された陸島のパートナーである。


「……なんだ、事件か?」


「もう、ただの挨拶よ。ほら、日常会話でもビジネスでも大事でしょ?」


「ああそうだな」


 陸島はそっけなく返す。

 相原は笑みを崩さずに話を続ける。


「鴉田君も退院したって聞いたよ。鴉田君の事だから卑怯な真似はしないと思うけど……もし、闇討ちされたらどうする?」


「ぶっ潰す」


「……即答なのね」


「当たり前だ」


 苦笑いを浮かべる相原の近くで歩く速度を少し上げて、陸島は学校までの道を進む。


「家族が金持ちだか何だか知らんが、やるってんならやってやる。姑息には姑息をぶつけるのも面白い」


「……何する気なの?」


 恐る恐る相原は質問した。

 それに対し陸島はこう答える。


「親族友人狙い、拷問、一族郎党皆殺し――」


「やめて。朝から物騒を極めないで」


「聞いてきたのはお前だろうが」


 ため息交じりに陸島は相原を見る。というよりは睨む。


(こういう話なら乗ってくれるのかな?怖いけど……)


 出会ってから約三か月以上が経過していた。その間に相原は陸島と会話をするためにどうすべきか悩んでいた。その中で陸島は戦いに関する話題であればある程度は話をするようになってくれていた。


「それで……次はどんな魔法を覚えるつもりなの?」


「今あるものを鍛える。それだけだ」


「木下さん、凄い強いって聞いてるけど本当なの?」


「誰から聞いた?」


「本人が言ってたよ」


「……女子高生相手に自慢とかアホかあいつ」


「別に自分からしてた感じじゃないよ?こう……流れというか」


「あーはいはいわかったわかった」


 陸島は歩く速度をさらに上げる。早歩きと言っても差し支えないその速度にいつの間にか距離を置かれる相原。


「待って……待ってってば」


「なんなんだ一体。おしゃべりしたきゃ他のヤツと――」


「まーたそーゆー事してるんですかこのインケンめ」


 ひょっこり姿を現したのは流山椿。

 相原紫苑とは親友同士である。


「あ、シオンちゃん」


「さっきから陰で見てればくどくどくどくど……ほんとイラっとしますコイツ!」


「面と向かって言うのは大いに結構。ただ小さいのが難点だな」


「このやろー……!」


 ケタケタ笑う陸島。

 ピキピキ怒る相原。


「二人とも喧嘩はやめて」


「吹っ掛けてきたのはコイツだ。負け犬はよく吠えるもんだなあ。えぇ?」


「ぐぎぎ……」


 悔しさを見せる流山。

 以前の決闘で彼女は陸島に敗北している。


「おーっと待ちな!!レディをいじめるもんじゃないぞ?」


「……は?」


 嘲り笑う陸島が瞬時に呆れた。


 陸島の視線の先にいた妙な言動の声の主は――やはりというか鴉田春一。


「陸島さんよぉ。女の子いじめるのはやっぱりよくないと思うぜ?負けた俺が言うのもなんだが」


「負けたお前の言い分はどうでもいい」


「いやいやいや。負けた側に言われてる時点で色々と察してくださいよ~旦那ぁ」


「おもちゃ作りしたきゃよそでやってろ」


 鴉田のヘンテコな態度に、陸島は通学路の流れに身を流す。


「あ、待ってよ」


 それを後ろから追いかける相原。


「はあ。シオンちゃんもよくアイツのそばにいようって気になりますね」


「確かに。ニンジャガール、何かご存知で?」


「その呼び名やめてもらえます?」


「じゃあツバキちゃんで」


「誰が気軽に名前呼んでいいって言いました?」


「じゃあ俺の事もハルっちって呼んでいいぞ?」


 ここでウインクが一回。

 プッツンも一回。


「軽いんじゃお前―!!」


「ばべっ!」


 勢いよくぶっ飛ばされる鴉田。

 通学路にしては騒がしい雰囲気がそこにあった。


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