13-7
「陸島君は来週には退院できるの?」
「……ああ」
時同じくして、陸島の入院している病室に相原は入室。
近くの椅子に腰かけた相原はベッドで上半身を起こして不機嫌な陸島と渋々とだが会話をしている。
「ああ、そうだな」
「鴉田君は強かった?」
「……変なおもちゃ振り回して笑ってただけだ。だがあのレールガンは使えるやもしれん」
少し考えてから陸島は答える。そして不敵に笑っていた。
「レール……ガン?」
「あいつが作った大型電気銃だ。あれなら遠くから狙撃できる。うまくいけば敵を暗殺もできる」
「確かにあれは凄いと思う……というかあの後、先生方があの銃を回収して調べてたよ」
「ふむ……馬鹿と天才は紙一重という事か」
「かもね。普段はなんというか年相応というか……ちょっとはしゃぎすぎな所もあるけど、ああいう道具作りが出来るのって凄いなって思う。びっくりしちゃったよ」
相原ははにかみながら鴉田の技術を評価する。
その時彼女の脳裏に浮かんでいたのは一撃のもとに焼かれた木々の姿。
「ウォーロックって皆あんな風に凄いこと出来るのかな?」
「知らん」
ここで会話がバッサリと途切れる。
病室に静寂が訪れる。
(うう……どうして会話切っちゃうの)
せっかく続いた会話の流れが切れてしまったことに相原は深い悲しみを覚えた。
パートナーである陸島とは四月に出会ってからあまり会話していない。
「陸島君は……」
相原は何かを言おうとした。
だがそれは帰って自分の首を絞める未来が見えた。だから口をつぐんだ。
「なんだ?言いたいことがあるなら言え」
「……一人になって嫌にならないの?」
孤独へのつらさがないかを質問した。
なお、これはさっき言おうとしてた事とは違う。
「慣れてる。というか誰も近くにはいてほしくない」
「そうなの?」
「ああ。もううんざりだ」
うんざり。
言葉の意味としては我慢できないと思うほど嫌になること。つまりは誰かといることが陸島にとっては嫌な気持ちになるということである。
「どうして?寂しくないの?」
「嫌だつってんだろ」
ぎろりと睨みながら陸島は相原を見る。
相原はたじろぐことなく会話を続ける。
「それは……三人が関係してるの?」
「だったらなんだ?」
「その三人は……きっと陸島君に生きてほしかったんだと――」
「それは違う!」
陸島は声を荒げて否定する。
「あの日、アイツらは悲鳴を上げて死んでいった。死にたくないって気持ちでいっぱいだった。だからそれは絶対にありえねえ!それに俺は生き残ったんじゃない!本来死んでたんだよ!!」
「ど……どういう意味なの?」
本来死んでた。
陸島から出たその言葉に思わず相原は驚く。
「襲撃のあった夜、車に何かがぶつかった感覚があった。それから俺と三人が外に出た。そこは覚えている。ただそれからが曖昧だった。気が付けば俺は家の布団で眠っていた。身体を起こして夢かと思ってみんなのいる居間に向かった。紫色の布で包まれた三つの壺がテーブルの上に置かれているのを見てわかったんだよ。それが現実だったと。アイツらは死んだ。殺されたって」
それまで口をろくに開かなかった陸島がベラベラと語りだした。
それ自体が意外だったがそれ以上に相原を引き付けたのはほかならぬ陸島の過去の事件。相原はただその内容と顛末に愕然とする以外なかった。
「それからだった。悪夢を見るようになった。死んでいくアイツら。血の海の中で笑う敵。死にたくないと叫ぶアイツら。俺は何もできずにそれを延々と見続けるだけ。目の前で起こった惨劇を止めることも見ないようにすることもできずに唯々その時間を繰り返す悪夢を」
「……そんなことって」
「だからアイツらを解放するためにも。俺があの悪夢から解放されるためにも犯人捜しは絶対にやめねえ。たとえ犯人が死んでいたとしても、仲間や家族がどこかにいるはずだ。そいつでも沿いtの関係者でも殺さないと気が済まねえんだよ!」
拳を握って震える陸島。相原はその時に理解した。
(そうか……陸島君は……だからその為に魔術を極めようとして――)
「帰れ」
「え?」
突然の指示に相原は目を丸くした。
「もういいだろ。退院も近い。ここには来るな」
「え、でも――」
「いいから」
剣幕こそなかったが、その目は相原を睨んでいた。
しばらくの沈黙の後に相原は席を立ってその場を無言で後にした。
(アイツしつこいな本当に)
――だが強いぞ
(……はい?)
陸島に言葉を音なく伝えたのは彼の内的宇宙に住まう鉄の精霊。
――魔術の腕というより魔力が高いというべきだろう。用心せよ
(……ああそうかい)
鉄の精霊の言葉を半信半疑で聞く陸島。
病室の内は静寂。しかし陸島の内は静寂ではなかった。
――しかし先ほどは話さなかったが、前回の決闘は中々大変だったな。相手がまさかあのような武器を構えてくるとはな
(精霊でも予測できなかったと?)
――うむ。あれは電気エネルギーを魔術によって生み出したのち、そのベクトルを一定の方向に集中させてから発射することで武器として成り立たせておる。悪くない代物だ
(……聞いてる分じゃ風の魔術が使える連中なら誰でも出来そうだな)
――難しいな。風の魔術によるエネルギーの魔力の制御、そしてそれを可能にする技術。これらがないとそうそう出来るものではない。あのウォーロック、見どころがあるな
(俺がつぶしたがな)
――やれやれ。貴様は相変わらずだな
鉄の精霊は陸島に呆れた調子で返答する。
(そういや……あの日の事をちゃんと口にしたのは久しぶりだな)
相原との会話でそんなことを思い出していた。
こうして二週間近くが経過する。
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