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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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76/102

13-4

(それからしばらくして鼠川君が来たんだよね。最初はみんなで男の子だけどどこか可愛いって可愛いって言ってて……。本人はそれがコンプレックスみたいだから私はあまり言わなかったけど。しばらくはツバキちゃんと懸命に修行しててそれでツバキちゃんも陸島君に負けたショックから少しずつ立ち直ってよかった)


 鼠川と流山を相原は交互に見る。

 互いに笑いながら世間話に花を咲かせて笑いあっているところを見て仲良くやれているのを見て相原は自然に笑みがこぼれた。


「二人とも、仲いいね」


 言葉もこぼれた。


「え!?ああ、うん。流山さんが色々丁寧に教えてくれるから助かってるよいつもホント」


「なんでちょっと早口なんです?」


 鼠川の頬が赤くなっていたが誰もそこには気づいていないのか指摘しなかったのか。焦る彼を誰もつつくことはなかった。


(そういえばウォーロックの二人が来て案内がまだだったから市長が自ら島の案内をしてそれに私とツバキちゃんが合流して島めぐりもしたなあ。そこで出会ったのが木下さん。陸島君の関係者で確か橘樹の家の人。竹月組をまとめている家の人の使用人だから立場も高いらしいけど。それで陸島君に詳しくてその時に初めて知ったんだっけ)


 相原は島案内の最後に木下から陸島に関する一つの事件を知った。

 それは家族同然に育った三人の大切な人を目の間で失ったという事件。その事件を機に彼は大きく変貌。今のような誰にも冷たく、そして復讐を誓った存在になったという。


(そこから少したって、二人のウォーロックが新しく来たんだよね。蛇島君と鴉田君。後、燦央院さんも来てくれた。蛇島君は眼鏡を掛けた真面目な子でよく鴉田君と漫才みたいなコントしてる。鴉田君はともも陽気というかやんちゃというか……濃いっていうのかな。自己紹介の時も盛大に笑いを取ろうととしてたのかな?彼女九人は流石に多すぎるよ……)


 ちなみにその時の鴉田、割と真面目である。

 でも浮気はいけません。後、日本は一夫多妻制ではありません。


「そういえば蛇島君は燦央院さんと、どんな修行をやってるの?」


 一人考え込む会話の中で鼠川が蛇島に燦央院と行っている修行について尋ねる。


「え?ああ、そうだな。魔術の講座に始まり、実践、それから模擬戦闘。基本はこれだ。それから休みの日は朝から夕方までこれが続くぞ」


「うへー……よくもまあ、燦央院さんについていけてますねえ」


 げんなりした顔で流山が蛇島を見る。


「そうでもしないと陸島に追いつける気がしないからな……燦央院さんとの戦いの時に思い知ったよ。大地の魔術、彼自身の戦いぶりと執念。それに知恵も回っているようだった」


 燦央院と陸島の決闘。

 決闘を申し込んだのはどうやら陸島らしく、本土にて組織と戦っている魔女のレベルを知りたいという目的があったらしい。燦央院は実力も学校の中では指折りではあったが、ウォーロックであるのか、それとも陸島本来のセンスがあったのか、決闘は陸島が勝利した。


「恐ろしかったよ。吉川さんが止めに入ってなければと思うとね」


「流石に十手で人は死なないとは思うけど……でも大地の魔術ならいけるのかな?」


 鼠川の疑問を皮切りに視線が相原に集まる。


「で、どーなんですシオンちゃん?」


「え?ああえっと……十手を大地の魔術で強化って事?それは無理だと思う。あの十手、鉄製だからもしやるなら鉄の魔術でもないとちょっと厳しいかなと思う」


「まーですよねー。流石に殺す気はなかったと思いますよ。利用価値があると思ってそうですもんねあのインケン」


「陰険……か」


 流山の陸島に対する意見に対し、蛇島は首をひねる。

 それが気になったのか相原は声をかけた。


「どうしたの蛇島君?何か気になったの?」


「いやどっちかと言えば……獣かもしれんぞ。鴉田との戦いを見て思ったが」


「あーそういえばそうですね」


 蛇島の意見に流山は納得した。


「鴉田君も何を思ったのかアイツと決闘し始めて……あの大型の銃でしたっけ?あれ撃ち込んだところ見た時は勝てるんじゃないかって思ったんですけどね。ドローンでばっちり監視してそれで勝機を作ってて……。でも結果は違った」


 流山は話題を陸島と鴉田との決闘に移した。

 ウォーロック対ウォーロック。おそらく決闘の中でも類を見ないほど珍しい戦いである。


「弓って何ですか弓って。原始人じゃあるまいし。私との戦いの時は、十手と刀しか使わなかったのに」


「ツバキちゃんと燦央院さんの時は何もない決闘場だったからね。でもその時は鴉田君が指定した舞台での戦いだったから。あの銃も相当な破壊力はあったよ。でも陸島君のほうが上手だった」


「ああ、違いないね」


 相原の意見に賛同したのは外崎。

 鴉田に魔術を教えているパートナーである。


「陸島の方を持つわけじゃないけど、それでもアイツのほうが強かった。おまけに何か隠し技を使ったみたいだし」


「隠し技……っていうと二川さんが言っていた精霊憑きのことか?」


 蛇島が二川に聞いた精霊憑き。

 四属性の精霊のどれかに憑かれた魔女は魔力の増大だけでなくその属性にあった魔術の性能が上がるとされている。しかし陸島の場合、それは精霊に憑かれているというよりは何か違うものに憑かれていると思えるようなものだった。


「引っかきから攻撃の手段が変わっていた。まるで魔術を振るう獣だったよ。あれは」


 外崎の言葉に相原は沈痛な表情を浮かべる。


「確かにそうだな。陸島のヤツ、あの状態になって問題なかったのか?下手すれば死人が出ていたぞ」


「あれ、なんだったんでしょうね。先生方に聞いてもわからないって言っていましたし。調べているにしても結果が来ないのも気になりますね。シオンちゃん何か聞かされてます?パートナーとして」


「え?うーん……とくには聞かされていないかな」


 しょんぼりとした顔で相原は返す。

 それを見て流山はうーんと声を上げる。


「じゃあアレは一体……固有魔法の一環でしょうか?ウォーロックって謎が多いからもしかしたら本当に解明されていない何かがあるのかもしれませんね」


「だと思うよ」


 流山の意見に相原は同調する。


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