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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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74/123

13-2

「で、そのままこっちに来たんですね?」


「うん……」


 昼休み。教室の机で弁当を広げながら流山椿と相原紫苑が今朝の病室の出来事で会話をしていた。流山は相原の説明に顔をしかめて陸島の態度にイラっとしつつ弁当のミートボールを黙々と食べる。


「酷いやつですよ本当に。モグモグ……」


「うん。何が足りないんだろう……」


「足りないと言いますと?」


「何ていうのかな。距離を感じるの」


 相原は弁当の総菜を一つ口に運んでから自分の心情を語る。


「過去の事で誰かと一緒にいるのが嫌みたいで……昔からいる木下さんとかは違うみたいで。でも大人の人達とか干木さんとかだと陸島君は普通に会話するみたいなの。でも私とかだと態度が変わって……ずっと一緒にいようとするのがいけないのかな」


「うーん……ビジネスパートナーのような仕事を共有する輩なら大丈夫ってことなんでしょうかね」


 陸島とのやりとりについて二人が考えていると、そこに姿を現す一人の学生がいた。


「ここいい?」


「え?ああどうぞ、外崎さん」


 外崎は近くの椅子と席に座って購買で買ってきたパンを開けて食べ始める。

 飲み物にはミルクティーを選んでいた。しばらく時間が流れてから彼女は相原に質問する。


「陸島の容体は?なんか急に倒れたみたいだけど。あれは何だったの?」


「ええと……お医者さん達の話では今現在は疲労と怪我によるものじゃないかって。鴉田君の電撃攻撃が意外と効いたのかもしれないって」


「なるほどね。こっちは一週間ほどかかるってさ」


「え?あれだけ酷いけがなのに?」


「そうでもないよ。この島には優秀な治療のできる魔女がいるからね。とはいえ結構大きな怪我してるさ。引っかきとは恐れ入ったよ」


「……うう」


 なんだか自分の事を言われたような気になって相原は箸の動きを止める。


「ああ気にしなくていい。あんたのせいじゃないさ。陸島のヤツはもう起きたんでしょ?」


「うん。今朝お見舞いに行ったの。もう普通にしゃべってるから多分そんなに退院には時間かからないと思う」


「……アイツ、凄いね。こっちのとは大違いだ」


「でも鴉田君も凄かったと思う。あの大きな銃とか。それにマギアブレードも作ったんでしょ?」


「ブレードはやめとけって言ったんだけどね。銃に組み込むって言って聞かなかったのさ。何考えてんだか」


「近接戦も考えてたってことだよね?あとは普通に電気の魔法がさらっと使えてたし、鴉田君本当に努力したんだね」


「まあ、アタシも驚いたよ。なんであそこまであっさり上達するんだってさ。ウォーロックってすごいね」


 相原と外崎の互いのパートナーであるウォーロックについて、ほのかな温かさを広げていきながら談話は続く。その過程でふと何かを思い出したかのように外崎は相原に質問を投げる。


「ねえ、そういえばあの戦いの時に陸島が暴走した時あったけど……あれなんだったの?パートナーのアンタは何か知らない?」


「それは……私にもわからなくって、先生方もまだ調べてるって。もしかしたら精霊に憑かれた際に何か良くないものに触れておかしくなったとかで、珍しいことじゃないらしいんだけど……以前本土で機関の人達が調べた時はどうって事はなかったみたいだから、ウォーロックだから何かあるんじゃないかっていう線でも調べてるみたい」


「気になるねえ」


 暴走した陸島の件については相原曰く、まだわかっていないとの事。

 会話を遠くで聞いているようにしながらも、最後のミートボールを食べた流山は外崎の方を向いて質問する。


「そー言えば鴉田君はどうなんです?流石にまだ会ってないですかね?」


「……ほれ」


 外崎が見せたのはスマートフォンの画面。

 そこにはメッセージが表示されていた。


――すまん負けた。忙しいところ、色々教えてもらったのに申し訳ない


「ああ、やっぱり気にしますよね」


「鴉田君、元気でやんちゃしてるイメージだけどやっぱり傷つく人だよね……」


「問題はその次だよ」


「え?」


 流山が疑問に思っていると、外崎は衰弱しきった目で画面を操作してそれを二人に見せた。


――あれ?そんなに気にしてない?


――ところで明日見舞いに来るか?見舞いの品とかあると嬉しいぞ


――既読無視はないと思う


――ごめんよ。俺が悪かった


――謝ってるじゃんよ


――もう、一曲歌っちゃうぞコンチクショー。お前の好きなアルヴァレの曲だゾ☆


「う、わぁ……」


 ドン引きエンジン全開の表情を晒す流山。

 流石に星はないって。


「既読無視っていうけど、これ送られてきたの深夜三時なんだよ。だからメッセージ見て寝たらこれ。あ、動画送られてるけど見る?っていうか聞く?」


「全力で遠慮します」


 流山は即座に返す。

 思春期真っ盛りの坊やが歌う流行りの歌の威力は知られることはなかった。


「でもこんな風に陸島君も会話してくれたら嬉しいのに……」


「あのインケンが鴉田君みたいに?」


 流山は想像した。

 やかましく振舞う陸島の姿を。


――やあ相原。今日もツインテール似合ってるぜ。ところで今日この後魔術の修行なんだが付き合わないか?終わったら夕食を例のホテルでどうだい?ああ心配すんな。襲ったりしないさ。今日はね(ここでウインク)


「あばばばばばば」


「ツバキちゃん!?どうしたの?」


「まあ、気持ちはわからんでもない。相原さん、それはやめた方が良い」


「え?え?」


 相原は原因が自分であることに気づいていなかった。

 ただ楽しくおしゃべりしたいだけ。その気持ちがまさか親友を青ざめ、震えあがらせるとは夢に思ってなかっただろう。


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