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(外崎さんならこう思ってるはずだ。『付け焼き刃で戦えるほど、相手は甘くない』ってさ。んなことは先刻も承知だ。だがレールカノンがもう使えないというのは手痛い。コイツと俺の魔術、それと『もう一枚の手札』でどうにかするっきゃねえな)
鴉田はスマートフォンを取り出して何か操作をする。
陸島はその様子を見て止めに入らんと斬りかかる。
「させるか!」
「おおっと!」
スマートフォンを勢いよくぶん投げる。
陸島はそれを切り捨てる。真っ二つにされたスマートフォンが地面に落ち、中の部品が辺りに飛び散る。
「おいおい弁償しろよな?」
「死ねえ!」
振りまわす憎悪は留まることを知らず、さらに斬りかかる陸島。
鴉田は風の魔術によって右に左に、そして上空に飛んでよける。
(やべえ。このままじゃ魔力切れで負けちまう。燦央院が言ってたな。こいつのヤバイ点として、タフさがあるって。長期戦は覚悟した方が良いって。それが嫌なら思い切った一撃を叩きこめってさ。今のがだめならもう真っ二つ以外の手段がねえぞ?)
息切れしそうなところを悟られぬようにしてブレードを手に握り、陸島を見据える。
殺気もさることながら、先ほどの攻撃で倒れなかった体力の高さ。そして執念によって全身にみなぎるオーラが鴉田の目から不思議と捉えることができた。
(さてどうする?ちょこまか逃げても勝ち目はなし。銃もこの距離じゃ使えない。かといって距離を取ろうにもこいつからあの銃を持って逃げるのは不可能。しかも弾も一発ときたもんだ。ならば――)
両手でブレードを握りしめ、深呼吸を一つ。
「っしゃあ行くぜ陸島ぁ!!」
なんと鴉田は勢いよく突っ込んでいったのだ。
――何?策を弄さずに突っ込んできただと?
これまでの鴉田の動き、戦闘前の下準備、作成した武器のスペックそれらを鑑みてあり得ないと陸島は目を見開く。
――いいや。奴はまだ戦おうとしている。策はあるだろう
(だろうな。あのブレード、何かある)
内なる声が陸島に警告する。陸島もそれに同調する。
鴉田の手にあるマギアブレードは鴉田自身による自作の物。
となれば何かしらの仕掛けがあると陸島は推察する。
(まともにぶつけるのは危険か?だが――)
陸島は手に持った刀を見る。
(いいさ。その提案乗ってやるよ!!)
斬りかかる鴉田の斬撃を彼は含みのある笑みで刀で受け止めた。
刀鍛冶の砥成紘一から話を聞いただけだが、牙谷から引き継いだその刀の特徴を伝えたところ、それは対魔女対策として魔力をある程度ははじくことができるという。
「まだまだあ!!」
鴉田は全力を込めて魔術を発動する。マギアブレードに彼の魔力が流れ込み、ブレードより光が走る。
ぽっきーん。
「え?」
「あ?」
その時でした。
ブレードがぽっきりいったのは。
「お、折れたァ!?」
咄嗟に後ろに下がる。
折れたブレードの刃をじっと見る。
「……へへ。やるじゃねえか陸島。まさかこいつを折るなんてな」
「いや勝手に折れたんだが?」
どんがらがっしゃーん。
こちら、観客席より聞こえた音になります。
「なにやってんだこの場面でー!」
蛇島のツッコミはもっともである。
「ど、どうしてです?あれは仕入れたんじゃないんですか?」
「違う。あれは鴉田お手製。だからブレードは自作するのはやめとけと言ったのに」
「そーなんですか!?」
流山の疑問に答えたのは外崎。続けて彼女は説明する。
「ああ、ブレードに関しては鉄を使っていろいろやったみたいだけど魔力を込めて振るうのならもっと鉄を製錬する必要があるって言ったのさ。そもそもブレードの刃ってのは特殊な鍛冶師が施しをして作るの。アイツは関連する書籍漁ってそこから得た知識でやったんだろうけどブレードは多分あれ一回目のヤツをそのまま銃に組み込んだね」
「ああ、銃とは違って一回限りのブツですか。試し切りしなかったんですかね」
「試し切り自体は藁でやったさ。その時はうまくいったけど……何がだめだったんだろうね」
「鉄は普通のヤツかい?」
二川が口を開く。
外崎は首を縦に振った。
「じゃあダメだな。魔力を込めて振るうのなら少し工夫がいるのさ。血の入ってない鉄じゃあだめだね」
「刀身に自分の血を塗り込んでいたみたいですけど?」
「いや、それだけじゃあだめだ。そこから色々さらに工夫がいる。血を塗り込むのは第一段階。さらにそこから色々やって第三とか第四段階とかあるんだけど……まあ第一段階だけでもいいのさ。でもあの坊やウォーロックだろ?多分刀の強度が注がれた魔力に追いついてなかったのかもね」
「なるほど。軽い力ならともかく、強い力で折れたわけですか。それにしてもそう簡単に折れるものですか?」
外崎の結論に二川は『折れるさ』と言って首を縦に振った。
画面向こうの鴉田は折れたブレードを捨てる。
「で、どうする?斬られて死ぬか?」
「おいおい、決闘で殺しはご法度だぜ?」
「じゃあ四肢を切り落として仕舞いにしようや」
冷たい表情を浮かべる陸島は鴉田を裂かんと突っ込もうとしたその時だった。
「あ?なんだ?」
回転する機械の音が陸島の耳に届く。
ふとその方角を見ると、一機のドローンが陸島めがけて突っ込んできていた。
「悪いが勝つのは俺だ!」
鴉田がにやりと笑う。
ドローンをよけようと真横に飛んだ瞬間、ドローンは勢いよく爆発した。
(なに!?)
「自爆機能さ。何かあったとき用のな」
爆風にバランスを崩し、陸島は膝をつく。
――燦央院さん、真似させてもらうぜ!
風の魔術にて彼は正面に、陸島のいる方に突っ込む。
「な――」
「いくぜ。これがラストだ!!」
振り下ろされる斬撃よりも早く、ありったけの電撃を右手に込めて鴉田は彼の腹を殴る。
同時に電撃が彼を襲う。
「がはっ――」
「ああっ!!」
大声をあげて口を隠したのは相原。
再度電撃を浴びて後ろに飛ぶ陸島は刀を落として転がり崩れる。
「これが狙いさ。お前は俺を警戒していた。電撃による反撃をな。だから一発目は普通にしてやった。そのあとは俺がブレードを使って攻撃を仕掛ける……と思わせて俺のブレードが折れた。勝機と感じたお前はまっすぐに俺に斬りかかった。そこで俺は最後の手札を使わせてもらった。お前が切り落とそうがどうしようが近づけば爆発する。蔦の魔術でとらえようものならその瞬間に俺が今みたいに突っ込んで電撃で倒す。それだけさ」
観客席より『おおっ』と衝撃を受けた声が聞こえる。
「よくわからんが、計算づくだったのいうのか……!?信じられん」
画面の向こうで鴉田の計略が開かされた時、蛇島は唖然としていた。
「凄い……色々聞きまわっていただけの事はありますね」
「ええ。大したものですわ」
陸島と戦ったことのある流山と燦央院は鴉田の戦いぶりを称賛する。
(陸島君が負けた……?)
相原は画面の向こうで倒れている陸島に不安な目を向ける。
「これはもう流石に――」
流山が陸島の負けを確信している最中で陸島は両腕を動かし、上体を起こし、ふらふらになりながらも両足に力を込めて立ち上がった。流山の表情が一気に青ざめる。
「嘘でしょ!?あれで生きてるんですか!?」
「待って。何かおかしい」
外崎の指摘に一同が、そして鴉田が陸島をじっと見る。
陸島ははそれらの視線に対し、ただ憎悪のこもった黒い瞳を返すだけだった。
「な、なんだお前……何をした!?」
陸島の近くにいる鴉田が焦りを覚える。
「本当にお前、何をした!?」
「どうしたんでしょう?鴉田のヤツ?」
流山が鴉田の尋常ではない焦りを不思議に見ていると、二川は何かを思い出したかのようにハッとして周囲を見る。そして焦りつつも声を上げた。
「おい、審判は近くにいないか?この決闘、中止にしな!でないとやばいよ!!」




