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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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70/134

12-3

「じゃあ終わりにするか!」


 叫んだ陸島は和弓をその場に捨て、刀を抜刀。

 その場に構えて向けられる刃の鋭さの中にある敵意が鴉田の脳を貫かんとしていた。


(やべえな。こいつに接近戦されたら終わる。流山によれば猿叫からの斬撃がやばいって話だ。近づかれた場合の対策もなくはないが俺の魔力次第ってところか。仮に当てたとしても燦央院さんの時のように粘られる可能性がある。執念を超える一撃がいる。となると俺がすべきことは――)


 銃を構えてしゃがんで両肩に通していた肩紐に付けられていた金具を外す。

 デバイスは外れて音を立てて落ち、地面に凹みを作る。


「どういうつもりだ?降参か?」


「ばかいえ。俺だってまだまだしたいことはある。お前こそ何でこっちに近づかない?ビビってんのか?」


「さあな。斬るのならば、じっくり待っているべき瞬間もある」


 構えから動じず、汗一つ流さない陸島に鴉田は好機を逃す感触を静かに感じ取っていた。


(うわ、これ読まれてるな。俺に近づけば何かが起きると察してる。それは当たりだぜ陸島さんよ)


 構えた銃が冷却完了の指示を出した。

 しめたと鴉田は笑う。


「コイツでどうだ!!」


 銃弾を再度放つ。

 チャージ時間も短く先ほどよりも威力は弱いが、それでも陸島を倒すには十分な威力で。陸島の足元に打ち込まれたそれは勢いよく爆発して周囲に爆風と煙を引き起こす。


(またこれか)


 呆れ気味に陸島はその場を離れる。銃弾による被害はなかった。


「突然だが!お前に聞きたいことがある!!」


「はい?」


「三つだ。三つ聞きたい!一つ目、相原さんに冷たいのは何か理由があるのか?」


「うっとおしい。それだけだ」


「じゃあ二つ目だ!!何故そんなに力にこだわる?」


「ぶっ殺したいやつがいる」


「じゃあ最後だ!」


 それまでの高いテンションとは打って変わって、静かに落ち着いたトーンで鴉田は最後の質問を投げる。


「お前、自分が哀れな存在になってるって気づいてないのか?」


「……なんだと?」


 哀れな存在。

 その言葉の意味に陸島は思わず声色を暗くし、怒りを込めていた。


「お前に何があったかは詳しくは知らん。復讐のために全てをささげている。きっと大事なもんだったんだろうよ。だがな、それで周囲が悲しんでたり嫌な思いしてんだ。きっとその人たちも、お前を守って死んでいった人たちも今頃向こうで泣いてるだろうな。こんなのを守って死んだんだ。ああ、つらいだろうなって」


 鴉田は淡々と今の陸島についての所見を述べ終える。


「貴様……!」


 お前の全てをわかっている。

 全てを見透かしている言葉だけではなく、哀れで哀れで仕方ないと鴉田の目が語る。

 その態度に陸島は傲慢に似た感情を心に覚え、そして注がれた油に呼応して怒りが爆発する。表情は怒り満ちている。


「こいよ。決着付けようじゃねえか!」


「上等だ」


――コイツ何を考えている


 吹き出した憎悪の本流に飲まれかけながらも陸島は次の一手に備えようとしていた。


(だが今はコイツをぶった斬る。絶対にだ!!)


 魔術を振るう。

 鴉田の周囲に蔦が表れ、彼を抑える。


「うお!?」


 手に持っていた銃を落とし、がんじがらめになって動けなくなったのを確認するとそのまま突撃する。


「待ってろ、今楽にしてやる」


 握る刀。睨む瞳。絡まった蔦によって動けない鴉田。

 迫る陸島に決着は着いたかのように見えた。


「甘いぜ」


 その言葉を口にしたのは鴉田。


「うおぉぉぉぉぉっ!!」


「しまっ――」


 鴉田の叫びに呼応して、電撃が周囲を襲う。

 白色の攻撃網は陸島を捉えてそのまま彼に高電圧を浴びせる。


「ぐああああっ!」


 これが狙いだった。

 レール・カノン二式による砲撃ではなく自身の魔力による攻撃。しかしこれを今の陸島相手に決めるには相手にある程度近づいてもらい、なおかつ攻撃してくる状態、すなわちカウンターの状況までもっていくことが必要不可欠だった。


(念には念を入れて挑発を入れて正解だったぜ。流山さんの話だと運動神経もバッチリだから単調な攻撃を誘う必要があった。後はこの範囲攻撃を叩きこむだけだ)


 電気を浴びせつつ、焦げた蔦を払って鴉田は銃から何かを引き抜いて、陸島を見る。

 焦げるほどに浴びる電撃の中で陸島はこっちを見ている。


「げ――」


 それは反撃してくるという合図の睨み。

 焦りか恐怖か、鴉田はその場を風の魔術による跳躍で後ろに下がる。

 電撃はその時に消えた。


「なんてやつだよ……」


 鴉田の目の前には焦げて首を落としながらも立っている陸島。呼吸もだいぶ荒れていたが、相手がこちらを見た時、そこにまだ戦う意思があったのを鴉田はその目で射られることで理解する。


「上等だよ。だったらお前と同じ土俵で戦ってやるさ」


 

 銃から取り出したそれを陸島に向ける。

 細く長い刃を持つ武器。マギアブレードだ。


「え!?何時の間に?!」


 観客席より声を上げて驚いたのは鼠川。

 銃しかもっていなかったはずの鴉田がどこから取り出しのかよく見ていなかった。


「ああ、銃に付けてたんだよ。二の太刀だって言ってたけど。そこに付けるかね普通」


 鴉田のパートナーである外崎が呆れた声で答える。


「それはいいけど鴉田君、あれ扱えるの?」


「多分ね。稽古というか練習はした。基本的なところだけど」


「大丈夫かなあ」


 不安視する鼠川に外崎は画面の鴉田を見る。


(アンタ……それでどうする気だい?銃が使えなくなったのならそれを使うっていうのは聞いてるけど。相手も刀を使う。一筋縄じゃ行かないよ)


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