12-1 ウォーロックVSウォーロック(後編)
「へへ。いつまでも隠れてたら勝機はないぜ?」
カノン砲に設置したスコープの向こう側に映る木々の世界。
そして、近くに置いたノートパソコンが届けるドローン達の光景を交互に見ながら陸島の動向を見張っていた。
(この俺のレール・カノン二式、伊達に作っちゃいないさ!一個目は電力の仕組みだの結晶のエネルギーがうまく流れなかったり流れたりと不安で壊れちまったが、こいつは安定性に特化し、なおかつ威力も高い。充電に時間がかかるのが玉に瑕だが、間違いなく今できる俺の最高傑作だ!)
黒光りするそれはライバルを倒すために鴉田春一が懸命に作った魔術結晶搭載の銃。
彼の機械いじりによって得られた経験と魔術修行によって得られた経験が交差し誕生した彼の武器は今日、陸島鉄明という同じウォーロックを倒すために生まれたのだ。
全長は約二メートル。特徴としては三つ。
一つ目に魔術結晶搭載による高度な電気による砲撃が可能という事。射程範囲は約五百メートルで今回戦う舞台の森林エリアであればほぼ攻撃が可能。現在鴉田のいる高台という位置ならば敵がいる場所さえわかれば、後は狙いを定めて引き金を引くだけだ。
二つ目にその仕組み。
魔術結晶搭載により、術者が魔力を送り込んでロック解放からセーフティ解除などを経由して最終的にエネルギー弾を発射する。
三つ目にパソコンとの連動。
これはまだ試作段階で、敵の位置をドローン経由で受け取りその方角をスコープ経由で教えてくれるという機能。
短所しては冷却及び充電時間が必要であるが、それでも今鴉田が使える手札の中では最高威力の武器である。
「このままタイムアウトなら俺の勝ち。意外とアイツ降参するかもしれないしな。飽きただの疲れただので。そうなりゃ俺は……フフフ――」
鴉田の脳を男子たちの理想たる妄想が覆う。
――へえ。見直したよ。あんたやるじゃん。今度お祝いさせてくんない?あ、あんたの好きなところでいいから
パートナーの外崎菖蒲が頬を染めて詰まる言葉で鴉田にお誘いを掛ける。
この時、鴉田の学ランの袖をクイっと引っ張っているものとします。
(えへへ……じゃあホテルでも……なんてね)
蕩ける表情で想像は続く。
――おおーっ。意外とやるじゃないですか!見直しましたよ!!時代はやっぱり『ずのーめいせき』ですね!!私も早く身長と頭脳が欲しいです!
きらきらした瞳で見つめてくるのは流山椿。
それは尊敬によって輝いていた。
(大丈夫だ流山さん。第三次成長期ってのがある。あれ?第二次だっけ?それでぐぐんと背を伸ばすんだ!!)
――参りましたわね。家柄だけでなく実力でも上回っているとは……素晴らしいですわ!!
褒め称えるのは燦央院百合香。
(はっはっは。いつでも頼ってくれていいんだぜ?)
――ありがとう鴉田君。これで陸島君ともっとお話しできるようになったよ。本当にありがとう!!
(いやいやいいってことよ。陸島と仲良くな)
その他、島の女学生たちからの熱烈なラブコール。
――キャーッ!!鴉田さんよ!!
――技術と魔術の申し子!!今日も素敵!!
――こっち向いたわ!抱いて―!!
「やべえ、妄想が止まんねえ。陸島ー早く倒れてくれー!」
それは本人に言ってください。
「でも、あれ……本当にどこに行ったの?」
鴉田が辺りを見渡すも未だに見えぬ彼の姿。
ドローン達は規則正しく、プログラムされた道を通っているが彼の姿を捉えられずにいた。
しかして、戦局の変化は確かに近づいていたのである。
「シオンちゃん、今なんか冷たい風が吹きませんでした?なんかこう……ヤな感じの」
「え?うーんと……特に何も感じなかったけど」
設置された観客席にて流山と相原が試合の行方をじっと見ていた。
「いや……悪寒がした。多分何かあったんでしょ」
そう言って震えたのは外崎。
原因が原因なのでわからんでもない。
「それで陸島はどこに行きましたの?というかあのドローン……ちょっと反則ではなくて?」
「そうか?陸島のヤツが承諾したのなら、いいんじゃないのか?」
「承諾って……多分彼は何も知らされてなかったと思いますわよ」
燦央院が鴉田が用意したドローンについてぼやく。
これに対し、蛇島は気にしていないようだった。ドローンについて今度は鼠川が気になっていたことを口にする。
「あのドローン、陸島君はどうするんだろう?」
「成金坊やの用意したアレかい?確かに気になるねえ」
反応したのは老婆、二川。
鴉田に魔術道具として風の魔力のこもった結晶体をいくつか提供したものである。
「坊やのあのドローンとやらを打ち落とすにしてもアレは地上からだいぶ離れちまってるよ。陸島ってのは大地の魔術師だろ?ツタで止めようにも岩ぶつけようにもちょっと位置が高い。高位の魔女なら魔法を使ってちょちょいの内に終わるんだろうけど厳しいねえこりゃ」
「となるとドローンの監視を抜けつつ、鴉田君のいる高台まで向かわないといけないって事ですか……」
陸島が鴉田に勝つにはまずドローンの監視網を突破し、その後高台まで駆け上がってそこにいある鴉田に直接攻撃を仕掛ける必要がある。
(ドローンの電池切れを狙おうにも、決闘時間以内に決着がつかないと陸島君が負けるというルールがある。多分ハンデでもらったんだろうか?鴉田君、ちょっとそれはせこいと思うけど陸島君相手ならそういうことはないのかな?)
鼠川はドローンの内、一機を見る。
素早く空中を機敏に迷いなく飛び回るその機影はまさしく鳥のようで、三機はそれぞれ鴉田によって指定したコースをぐるぐると回っている。
(それにしてもドローンをああいう風に動かせるなんて、鴉田君さらっと凄いな)
鼠川は鴉田のドローン制御について静かに心を打たれた。
飛び回るドローン達の内の一機が静かに高度を下げていく。
「……あれ?」
鼠川は一瞬目を細めた。
ドローンはこれまで何度も高度を上げ下げしている。高い位置、低い位置で陸島を捉えるために。しかしそのドローンの下がり方に違和感を覚えたのだ。
「煙吹いてる!」
「な!?」
鼠川の指摘に蛇島が驚き、周囲はざわつく。
「なんですの?故障かしら?」
「あ、また一機落ちてますよ!しかも今何か見えました!」
燦央院の疑問に答えるよりも前に流山が指さした一機のドローンが高度を下げる……というより森の中へ役割を失って落ちていった。
「へえ。やるじゃないかあのオールバックの坊や。そういう芸当を持っていたとはねえ」
魔女として長年の経験、知恵、記憶を持つ二川は不敵に笑った。
陸島が何をしたのかこの場の誰よりも早く気付いていたのである。




