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鉄(くろがね)ウォーロック  作者: 峰川康人
第一部

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66/123

11-7

「え……うそ、ええーっ!?」


 信じられないものを見た時の声を上げた流山椿。

 決闘場に設置された大型モニターの向こう側の光景に流山どころか、そこで座って見ていた一同は度肝を抜かれた。

 戦いの舞台では土煙が巻き起こり、周囲には抉れた大地と折れた木々が衝撃の傷跡を教えてくれた。


「な、何なのだあれは……?!一体、鴉田は何をしたというんだ!?」


 蛇島はずり落ちた眼鏡を必死に戻し、爆発の風景をじっと見る。


「まさか本当に撃つとは……。とはいえ精度がまだ甘いというのか仕留めてないね」


 驚嘆の表情を見せず、クールな表情を崩さなかったのは外崎。


「り、陸島君、大丈夫かな……」


 膝の上で両手をぎゅっと握ってパートナーの安否を心配する相原。

 それぞれが今の攻撃に感情を大きく揺さぶられた。


「へえ、ちゃんと作ったもんだねえ。流石はあのベルウィンググループの跡取り候補だけはある」


 その声は若くなく、老いた声。

 鼠川が声のした方を見ると、そこには老婆が一人座って戦いを見ていた。


「あれ……確か貴方は不動産の」


「お、あの時鴉田って子と一緒にいた坊主か」


「え?鼠川君いつの間にこの人と知り合いになったんです?」


 流山もその老婆を見る。

 服装はマゼンタのTシャツにベージュのチノパン。白髪の老婆は画面の向こうの風景に興味を示す。


「ああ、あたしや二川ってんだ。四番街で商売してる老いぼれさ」


「このおばあさん、鴉田君と以前言ったお店で魔術道具を取り扱ってるんだ。表向きは不動産で裏の顔は魔術道具を売ってるって」


「っていうか今、ベルウィンググループって言いました?」


「そっち?……でもベルウィンググループって確か結構でかい企業の名前だよね?」


「ああ、毛も生えてない子供らにはわからん話か。あの坊やはね、祖父がベルウィンググループっていう大企業の社長をやってたのさ。息子夫婦は役員でとんでもなく偉い地位にいる。あの子も多分将来的にはバカであっても大企業の役員だろうね」


 老婆の話に外崎と燦央院以外の一同は驚愕の声をそれぞれ上げる。


「ちょ、ちょっと待ってください。そんな話、本人からは一度も聞いてないですよ!?」


「あら、そういえばお話しておりませんでしたわね」


 蛇島の慌てる横で燦央院が思い出したかのように語る。


「あの鴉田春一という者は二川さんの言う通りで祖父が鴉田時久という方なのですが、かつてはベルウィンググループを率いていた社長さんなんです。しかも結構手腕もよかったと聞いてますわ。私の父によれば確か当時の役員の不祥事が原因で社長を退職したとかで」


「そうさね。お嬢さんの言うとおりだ。で、社長がまた別の人になったけど四年目くらいで社長さんがやめて今は別の人がやってるって話だ。まあお前さんたちが生まれて少しくらいの話だから知らないのも当然かね。アタシもまだ還暦迎えたあたりのころだったような時期だったからね」


「か、鴉田君は違う世界の人だったってこと?でも凄いフレンドリーだったような気がするけど」


 鼠川はそれまでの鴉田の言動や接し方を思い返す。

 最初の馴れ初め、転入初日の出来事。それからの彼の言動など。


――いやフレンドリーって言うか軽いだけか?それでしょっちゅう誰かに怒られてるイメージしかない


「そりゃあ多分、鴉田社長の影響じゃないかい?」


「と言いますと?」


 二川は鼠川に当時の鴉田時久社長の評判やふるまいについて語る。


「テレビや新聞とかじゃ社員思いっていうのが目立ったねえ。ブラック企業とかそういうのが表れ始めて、グループ内でも労働時間に関してとやかく言われてた。んである工場が慢性的に残業状態だったからそこをどうにかしようと忙しい時間を縫って現場入りして改善に着手したって話さ。……おっと何か動きがあるみたいだよ」


 一同は二川から画面に視線を向ける。

 画面の向こうでは陸島が森の中でより木々の枝が生えている個所へと潜り込んでいた。


「さて、あの坊やは勝てるのかね。あれだけのお金をポンと出したんだ。勝ってくれなきゃ元は取れんぞ?」


 ニカリと笑う二川の近くで椅子に座りながらも落ち着かない様子を見せる相原は握る手がぎゅっと強くなっていた。


(確かに凄いけど……でもあれじゃあ陸島君が吹き飛んじゃうよ)







 


「よし!準備完了!!」


 爆発が起きる前、戦闘開始時刻よりも前の事。

 鴉田はというと試験開始の際に車によって事前に運ばれていた機材を組み上げ終えていた。


「こいつが俺の切り札だ……!」


 黒く光る銃身が太陽によってさらに輝きを増す。

 全長は二メートル程でケーブルによってもう一つのパーツである四角い直方体上のケースと繋がっているそれは鴉田春一お手製の兵器、彼はこれを電磁砲『レール・カノン二式』と命名。

 天に銃口を向けたそれは雄々しく自らを輝かせた。


「へへへ。外崎さんや二川のばあさんのおかげで完成したコイツなら陸島なんぞあっという間に消し飛ぶぜ!……あれ、それでよかったんだっけか?」


 よくありません。


「まあいいか。どうせあいつの事だ。これしきじゃあびくともしないだろうな。流山さんや燦央院さんの話を聞くに多分これだけじゃあ仕留めきれんだろうし――」


 くみ上げた電磁砲を一旦地面にゆっくり置き、パソコンからコマンドを入力する。すると近くに置いた三基のドローンに組み込まれたそれぞれの羽が回転し始める。


「よし、ちゃんと動くな。練習通りだ」


 いつでも飛べる姿勢にドローンを準備させて鴉田は再度、電磁砲を構える。


(いきなりこっちに突っ込んでくることはないだろうが……そうなったら二の太刀を構えるっきゃねえな。そうなる前にコイツで仕留められればいいんだが)


 電磁砲は彼の腰に構えられ、搭載されたスコープで銃口の着弾地点を見ることができる。

 ここまでで鴉田のできる準備は行えた。スマートフォンは戦闘開始の合図を告げる。


「それじゃあ頼むぜ……!こいつも二個目だ。威力も性能も準備もばっちり。勝つぞ……この戦い!」


 ぎゅっと銃を握りしめる。

 レール・カノン二式。鴉田春一によって作成された魔術結晶搭載の銃型兵器。

 魔力を込めて引き金を引く事で近くのボックスに搭載された魔術結晶が反応を始め、エネルギーをケーブルを伝って経由。そのエネルギーが一定量を超えるともう一度引き金を引くことで魔力エネルギーが発射される。


(へへ。陸島のヤツこれみたら度肝を抜くだろうな)


 絶対的な自身が胸にあったのか、鴉田は自然に笑っていた。

 一方、ドローン達は宙に舞って森の方へと飛んでいく。方角としては陸島の最初の位置を目指していた。


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